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スキー30年 盛衰の歴史

都内の駅を歩いていると、JR東日本の「JR SKISKI」のポスターが目に飛び込んできた。ZOO、竹野内豊、本田翼、北村匠海…スキーのCMが思い出される。10数年前、大学1年生の時のスキー旅行。なんであんなに楽しかったんだろう。上司に相談すると「俺の思い出もスキーだけ」だと返ってきた。僕の青春だったスキーは今、どうなっているのか。すぐに取材に取りかかった。

(おはよう日本部記者・小林紀博、ネットワーク報道部記者・芋野達郎)

“ちょっと昔の思い出” 街の人は…

街の人にスキーについて聞いてみた。
50代女性
「20歳前後の時、冬は毎週スキーに出かけていました。男の人がゴーグルを外すとがっかりみたいなことも…青春でした」
20代男性
「父親からスキーを教えてもらいました。去年1回スキーに行きましたが、大学生はスノボーをやるイメージですね」
60代男性
「昔は幼い娘を抱えてよくスキーに出かけていました。娘は彼氏の影響でスキーからスノーボードに切り替えてしまいました」
20人にインタビューしたものの、現役でスキーを楽しんでいる人は1人だけだった。

多くの人にとってスキーはちょっと昔の思い出になっているようだ。

スキー人口は激減

では、今、スキーをやっている人はどれぐらいいるのだろうか?
日本生産性本部の「レジャー白書」を調べてみると、バブル景気の最中の1990年に1380万人だったスキー人口は、1993年にピークを迎え、1860万人となったことがわかる。

日本人の7人に1人がスキーを楽しむまでになっていたのだ。

しかしその後減少が続き、2020年は270万人と、ピーク時の15%程度にまで激減した。

スキー場の閉鎖も相次いでいる。
スキー場の運営者などで作る日本鋼索交通協会によると、1990年に全国661か所あったスキー場は2021年は442か所まで減っている。
観光政策に詳しい 立教大学 東徹教授
「ゲームや格安で行ける海外旅行など、この30年間でレジャーが多様化する中、スキーにかかるコストが高いと感じられるようになったのではないでしょうか。スキーはうまく滑れるようになるまで時間がかかり、魅力が感じられなくなったのでは」

スキーから転換の企業も

こうした中、スキー用品や冬のあのCMで有名な「アルペン」は困っていないだろうか…加藤晴彦や、広瀬香美の「ロマンスの神様」のCMソングが頭に浮かぶ。

スキーをはじめとするウインター用品の売り上げは、スキーブームの1990年代には全体の50%ほどを占めていたが、近年は全体の5%まで縮小してしまったという。

そこで、一部の店舗をアウトドア専門店に業態転換したのだ。
右はアウトドア専門店の「アルペンアウトドアーズ」
昨シーズンにはこれまでウインター用品を取り扱っていた150店舗のうち60店舗で販売を終了し、キャンプなどのアウトドア用品に重点を移した。

こうした経営戦略が奏功し、2021年6月期の決算では純利益が過去最高となったのだ。
アルペン広報担当
「ウインター市場の長引く縮小傾向に加え、極端な暖冬や雪不足で需要が減少してきていて、雪が降らない地域を中心にウインター用品の取り扱い中止を決めました。今後も市場の動向を見ながらどのような商品を取り扱うか判断していきたい」

スキーに活路はあるか?

スキーを取り巻く環境が厳しい状況にあることがわかってきた。

活路はあるのだろうか?

「青春は純白だ。」
「ぜんぶ雪のせいだ。」
「私を新幹線でスキーに連れてって」
記憶に残るキャッチコピーでスキー需要を盛り上げてきた、JR東日本のキャンペーン「JR SKISKI」。

新幹線駅直結の「ガーラ湯沢スキー場」の開業の翌年で、バブル景気が終わる1991年にスキー場の集客を目的に始まり、2021年で30周年を迎えた。

30年間のキャンペーンのキャッチコピーとテーマ曲はこうだ。
このキャンペーンについて、観光に関する調査研究機関のじゃらんリサーチセンターの担当者は、当時のスキーレジャーに与えた影響は大きいと話す。
じゃらんリサーチセンター 安井瑞季さん
「映画やドラマの影響もありスキーがブームになり車やバスでスキー場に行っていた人に、新たに新幹線という交通手段を提示しました。日帰りもできる手軽さを与え、スキー人口の増加に一役買いました」
一方で、個人の価値観が多様化する中で、特定のレジャーでブームを作るのは年々難しくなっていると指摘している。
じゃらんリサーチセンター 安井瑞季さん
「価値観や遊び方が多様化する中、最近はブームを作るのが難しくなっている。行ってみたら楽しそうだといった雰囲気を感じさせるような魅力を発信しないと、新規の顧客獲得は難しい」

答えは雪に聞け。

こうした中、JRはこれまでは本田翼や広瀬すずといった若いタレントをイメージキャラクターにして若者をターゲットにしてきた。

しかし、今回のキャッチコピーは「あの冬が、呼んでいる。」

そう。

あの冬が懐かしい、もう少し上の世代をターゲットにする戦略に出て起死回生をねらっている。

アラフィフ世代を代表とする経験層をターゲットに据えたのだ。
JR東日本 和田佳史さん
「社会状況から考えて、いちからウインタースポーツの魅力を伝えて新規の客層を取り込むよりも、すでに経験している人たちを取り込んだほうが効果的に人を呼び戻せるのではないかと考えました。昔のことを思い出して戻ってきていただきたい」

“リベンジ消費”で復活も

さらに、スキー専門店の多さから「聖地」とも呼ばれる東京 神田を訪れて、スキーの行く末を探ってみた。

老舗店「オオイワスポーツ」の大岩紘会長は1969年に店をオープンさせ、長年歴史を見続けてきた。

ブームが終わるとともに周辺のスキー専門店は次々と閉店した。

ここでも最盛期の売り上げから一時は半減した。

ところが、今シーズンは明るい光が見えてきたという。

スキー逆風の時代になぜ?
しばらくスキーから離れていた30代から50代の来店が増えているのだ。

売り上げはここ10年で最高となった。

この店は、新型コロナのワクチン接種が進む中、“リベンジ消費”の動きがあるのではないかと見ている。

密になりづらい野外でのレジャーとしてスキーに再び注目が集まっていることに加え、海外に行けないことでスキー回帰が進んでいると言う。

“板の進化”で呼び戻せ

スキー用品の進化も、スキー復活の動きを後押ししている。

30年ほど前のスキー板の主流は男性用が190センチ超の長さで、「長ければ長いほど格好いい」と思っていた人も多いのではないだろうか。

しかし今はちょっと違う。

165センチほどになって軽量化も進んでいる。

短くすることで、年齢を重ねて体力が低下しても扱いやすくなっているのだ。
左は今のスキー板、右は30年前のスキー板
オオイワスポーツ 大岩紘さん
「久しぶりにスキーをしたいと思う人が増えている今がチャンスだと考えています。スキー用品の進化とともに魅力や楽しさを知ってもらい、スキー人口を回復させたい」
コロナ禍で海外への旅行も難しくなり、レジャーの選択肢が狭まっている。

こうした状況の中、スキーブームが再び訪れることはあるのだろうか?

関係者の期待が高まっている。

(文中敬称略)

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