オミクロン株“市中感染”京都でも… 年末年始どう過ごす?

新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に市中感染したとみられる感染者が22日の大阪府に続いて23日も隣の京都府で確認されました。京都府内に住む20代の女性で、海外への渡航歴はなく感染経路もわからないということです。

こうした状況について政府分科会の尾身会長は、市中感染が始まると急速に感染が拡大する可能性があると指摘し“感染拡大を防ぐためのポイント”を発表しました。まもなく迎える年末年始、1年のうちで最も感染が拡大しやすいというこの期間をどう過ごせばよいのか、詳しくみていきます。

■京都 20代女性“市中感染” ワクチンは接種済み

オミクロン株への感染が確認されたのは京都府内に住む20代の女性で、発熱やせきの症状を訴え詳しく調べたところオミクロン株への感染がわかったということです。海外への渡航歴がなく感染経路もわからないということで、京都府はいわゆる市中感染が確認されたとしています。

女性はワクチンを2回接種していたということで現在は医療機関に入院していて、せきの症状がありますが軽症だということです。

また女性の濃厚接触者とされた7人のうち2人はPCR検査で陰性が確認され、5人は検査中だとしていて、府はこの7人に対して専用の宿泊療養施設に入所するよう要請しているということです。
西脇知事は「府内で市中感染が確認されたことを重く受け止めている。オミクロン株が存在することを前提としてマスクの着用や換気の徹底など感染対策に協力をお願いしたい」と述べました。

■大阪 きょうも“市中感染” 10歳未満の小学生男児

さらに23日夕方、大阪府でもオミクロン株に市中感染したとみられる感染者1人が新たに明らかにされました。

大阪府によりますと、市中感染したとみられるのは10歳未満の小学生の男子児童で、今月17日に発熱などの症状が出て詳しく検査したところ、オミクロン株に感染していることが確認されました。

児童に海外への渡航歴やほかの感染者とのつながりはなく、感染経路はわかっていないということです。これとは別に大阪府内では22日、家族3人がオミクロン株に市中感染したとみられることが初めて確認されていて、児童はこの家族との接点もないということです。

大阪府はオミクロン株の感染が広がる可能性が高いとして、症状がなくても感染への不安を感じる府民を対象に、無料で検査を受けられる検査場を24日から100か所以上設けるとしています。

吉村知事は「市中においての感染はすでに広がりつつあると思っており、広く検査を受けられるようにしたい。感染は拡大する、リスクがあるという前提で対応していく」と述べました。

3回目接種迅速化へ会場を追加設置

一方、吉村知事は3回目のワクチン接種を迅速に進める必要があるとして独自の接種会場を大阪 中央区の心斎橋など3か所に追加で設け、合わせて6会場とする方針を明らかにしました。

追加される会場は
▽大阪 中央区の商業ビル「心斎橋SC」と
▽堺市堺区の「法務省矯正研修所 大阪支所体育館」
▽高槻市の「関西大学高槻ミューズキャンパス」で
来年2月中旬から接種を始める方針です。

すでに接種会場となることが決まっている大阪府庁新別館南館など3か所の庁舎と合わせて府独自の接種会場は6か所となり、高齢者の3回目接種がおおむねピークとなる2月中旬から3月にかけて最大で一日に5800人ほどの接種を行えるとしています。

■尾身会長「感染者増加を止めるのは難しい」

新型コロナウイルス対策に当たる政府分科会の尾身茂会長は23日、オミクロン株の市中感染が確認されたことなどを受けて記者会見を開きました。
この中で尾身会長は「過去に変異ウイルスが広がった経過などから考えるとオミクロン株は複数の場所で感染が起きていることはほぼ間違いない。これから1年のうち最も感染が広がりやすい年末年始の時期になることを考えれば、感染者数が増えてくるのを止めるのは難しいと思っている」と述べました。

そのうえで「オミクロン株は海外では過去に例がないくらいのスピードで拡大していて、日本でもいったん広がり始めると急速に拡大する懸念がある。状況によってはこれまでよりもさらに早く強い対策を打つことが必要になると思う。これからクリスマスや忘年会などで人と人との接触機会が急激に増えたあと、多くの人が帰省すると地域に感染が広がる事態が懸念される。現在の感染状況を踏まえると今すぐ一般の人たちにステイホームや帰省の取りやめを求めるわけではないが、この年末年始の過ごし方が今後の感染状況を左右することになるので、ぜひ協力をお願いしたい」と話していました。

■“1年のうちで最も感染拡大しやすい” 年末年始どう過ごす?

さらに尾身会長は年末年始の感染拡大を防ぐためのポイントをまとめた談話を出しました。今のところ日本国内でオミクロン株の面的な広がりは考えにくいとしながらも年末年始の帰省や旅行、忘年会などは慎重に検討し、飲み会などを行う際は第三者の認証を受けた店でできるだけ少人数で行うよう呼びかけました。

1. 国内でのオミクロン株の状況

今のところ面的な広がりは考えにくいものの、複数の「スポット」ですでに感染が始まっていると考えられるとしたうえで「スポット」の感染がさらなる感染拡大につながると短期間で多数の患者が出ることが予想され、中には重症者も出ることから「強化されてきた医療提供体制すらひっ迫してしまう可能性がある」としています。

2. オミクロン株の特徴

▽イギリスや南アフリカなどでは感染者数が2倍になるまでの時間が2日から3日と極めて短いという報告があり、市中感染が始まると急速に感染が拡大する可能性がある
▽ワクチンの発症予防効果がデルタ株ではおよそ70%なのに対し、オミクロン株ではおよそ20%と低い可能性がある
▽特に高齢者はワクチンによる重症化予防効果が下がり、接種した人でも感染すれば重症化する可能性がある

3. 年末年始について

年末年始は1年のうちで最も感染が拡大しやすい時期だとして、次のように呼びかけました。
▽帰省や旅行については慎重に検討する
▽帰省や旅行を行う場合
・事前の生活に気をつけ密を避けるなど基本的な感染対策を徹底する
・ワクチンを接種していない人は帰省や旅行の前に検査を受ける
・接種した人でも感染する場合があるため、接種していない人や高齢者など重症化リスクの高い人に会う場合には検査を受ける
▽渡航中止勧告が出ている国には渡航せず、それ以外の国へも観光などの不要不急の渡航は控える

4. 具合が悪くなった場合

少しでも具合が悪い場合は外出を控えて医療機関を受診して検査を受けるよう強く勧めています。

5. 忘年会や新年会

忘年会や新年会については次のように注意を呼びかけました。
▽慎重にするよう求める
▽換気などが行われている第三者の認証を受けた店を選ぶ
▽できるだけ少人数で大声を出すことや長時間に渡るのを避ける
▽食事中に会話をするときはマスクを着用する

6. イベント

初詣や成人式などのイベントでは可能なかぎり混雑を避けるべきだとしています。

7. ワクチン 3回目の追加接種

高齢者は発症や重症化を予防するため、接種の順番がくればファイザー製やモデルナ製かにかかわらず、なるべく早い時期に追加接種を受けるよう呼びかけました。

■東京 オミクロン株への警戒強める

東京都もオミクロン株への警戒を強めています。都のモニタリング会議で専門家は、感染拡大に備えて入院や宿泊療養などのさらなる体制強化が求められると指摘しました。

夜間の人出 “コロナ流行以降 最高水準に到達”

またモニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は都内の繁華街の夜間の人出について「ここ2週間ほどで新型コロナウイルスの流行が始まって以降、最高水準にほぼ到達し、かなり高いところで推移し続けている。今後オミクロン株への置き換えが急速に進んでいった場合には感染状況に再び大きく影響する可能性は十分にある」と述べ、警戒感を示しました。

そのうえで「長時間の飲酒によってマスクの着用など基本的な感染対策がおろそかになる可能性がある。オミクロン株に備えて長時間、大人数、マスクなしの会食をできるかぎり回避することが重要だ」と呼びかけました。

「いつ市中感染が発生してもおかしくない」

東京都の小池知事は記者団に対し「東京でもいつオミクロン株の市中感染が発生してもおかしくないという危機管理の体制で取り組んでいく。都民の皆様には原点に立ち戻ってあらゆる場面での基本的な感染防止対策の徹底をお願いする」と述べました。

またオミクロン株に感染した人の濃厚接触者で、勧められている宿泊療養施設に入らず自宅で待機している人がいることについて「法律の限界でこういったことこそ国会は議論すべきではないか。『文書通信交通滞在費』100万円を議論するのも結構だがそれは永田町の話だ。国民にとって必要なことで国会は動いていただかないと『何のために選んでいるのか』と疑問を抱く方がいるのではないか」と述べました。

そのうえで「個人の事情もあるだろうが、ぜひ宿泊療養などにしばらく身を置くことでみずからを守り、家族を守り、社会を守ることにつながるとご理解をいただきたい」と述べ、宿泊療養施設に入るよう重ねて呼びかけました。

■濃厚接触者 全国計7819人に

「オミクロン株」の感染が海外からの入国者を中心に相次ぐ中、厚生労働省によりますと、同じ飛行機に乗っていて濃厚接触者とされた人は23日午前0時時点で全国で合わせて7819人となっています。22日の午前0時から3510人増えています。

濃厚接触者とされた人は、検疫で指定されている待機施設や都道府県が用意する宿泊施設、それに自宅で待機して健康観察を受けているということです。

また厚生労働省は23日までに市中感染したとみられる大阪府と京都府の合わせて4人についても、濃厚接触に該当する人の特定を進めています。

■岸田首相 “無症状でも無料で検査”

岸田総理大臣は大阪、京都、沖縄の3府県を念頭に、希望者は無症状でも無料で検査を受けられるようにする方針を示しました。

岸田総理大臣は都内で講演し「市中感染が確認された大阪と京都、アメリカ軍基地で集団感染が発生した沖縄では不安が広がっている。こうした封じ込め対策が必要な地域では不安のあるすべての方を対象に無料検査を実施できるようにする」と述べ、大阪、京都、沖縄の3府県を念頭に感染対策が特に必要な地域では、希望者は無症状でも無料で検査を受けられるようにする方針を示しました。

また山際新型コロナ対策担当大臣は記者会見で、感染対策が特に必要な地域では希望者は無症状でも無料で検査を受けられるようにすることを全国の都道府県に通知したと明らかにしました。そして「知事の要請でものごとがスタートする仕組みになっており大阪はあすから、沖縄も同様の意向を示していて京都の知事と今、調整をしている。オミクロン株への感染が確認された都道府県では同じような形になると思う。タイミングが遅れることなく対応していきたい」と述べました。

■官房長官「行動制限緩和の変更 考えていない」

松野官房長官は記者会見で「現時点で直ちに行動制限の緩和を変更することは考えていないが、感染状況などを踏まえ自治体や専門家とも連携し機動的かつスピード感をもって対応していく」と述べました。

さらに「仮に感染が急拡大した場合、次の感染拡大に備えて整備した体制が即座に実際に稼働できるよう、厚生労働省より各都道府県に対して保健・医療提供体制の点検や強化を求める事務連絡を発出しており、引き続き万全を期していきたい」と述べました。

■オミクロン株 世界で感染拡大

オミクロン株の感染は世界でも拡大していて、WHO=世界保健機関は21日、オミクロン株の感染者が106の国と地域で確認されたと発表し「デルタ株よりも速く感染が拡大している」と警戒を呼びかけました。

<アメリカ>一日の感染者数 約15万人

アメリカではオミクロン株の感染が拡大していて、一日に報告される感染者の数は20日時点での1週間平均でおよそ15万人と急速な増加が続いています。

<英 ロンドン>感染者の約9割がオミクロン株か

イギリスでは22日、一日の新たな感染者が10万人を超えこれまでで最も多くなりました。またオミクロン株の感染が確認された人は累計でおよそ7万4000人となり、ロンドンでは感染者全体のおよそ9割を占めているとみられます。

死者や重症者は大きくは増えていませんが政府は危機感を強めていて、軍なども投入して追加接種を急いでいます。

■“重症化リスク デルタ株より低いようだが警戒緩めず対策を”

アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士はオミクロン株について「感染力が極めて強い」と述べたうえで、南アフリカやイギリスのスコットランドからの報告を分析した結果「デルタ株と比べて重症化するリスクが低くなっているようだ」と述べました。

しかし感染者が大きく増加すれば重症化する人も増え医療機関の負担が増すとして、重症化のリスクが低いとしても警戒を緩めずに対策を続ける必要があると強調しました。