来年度成長率の見通し 3.2%程度に引き上げ GDP過去最高見込み

来年度、令和4年度の日本経済の成長率について、政府は、物価の変動を除いた実質でプラス2.2%程度としていたこれまでの見通しをプラス3.2%程度に引き上げました。

新たな経済対策の効果もあって、来年度のGDP=国内総生産は、これまでで最高になることが見込まれるとしています。

政府は23日、臨時閣議で、来年度の経済成長率の見通しについて了解しました。

それによりますと、物価の変動を除いた実質で、ことし7月時点のプラス2.2%程度からプラス3.2%程度に引き上げるとしています。

財政支出が55兆円を超える新たな経済対策によって、成長率が1%程度押し上げられると見ていて、来年度のGDPは556兆円余りと、これまでで最高になることが見込まれるとしています。

内訳をみますと▽GDPの半分以上を占める「個人消費」がプラス4.0%程度、▽「設備投資」がプラス5.1%程度▽「輸出」がプラス5.5%程度になるとしています。

一方、今年度の成長率については、9月までの緊急事態宣言などの影響で経済活動が落ち込んだため、プラス3.7%程度としていた7月時点の見通しからプラス2.6%程度に引き下げました。

これに伴って、政府は、GDPがコロナ前の水準に戻ると見込まれる時期を、これまでの「ことし中」から「今年度中」に見直しました。

松野官房長官「厳しい状況は徐々に緩和 持ち直しの動き」

松野官房長官は記者会見で「わが国の経済は長引く感染症の影響下にあるが、緊急事態宣言などの解除以降、厳しい状況は徐々に緩和され、持ち直しの動きが見られており、本日、閣議了解となった政府経済見通しでは、GDP=国内総生産は今年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれる」と述べました。

そのうえで「政府としては、こうした経済の姿を実現すべく、経済対策をスピード感を持って実施していくとともに、令和4年度予算案を、令和3年度補正予算と一体でいわゆる『16か月予算』として編成し、新型コロナ対応に万全を期しつつ、しっかりと経済財政運営に取り組んでいきたい」と述べました。

GDP 伸び率と規模の推移

物価の変動を除いた実質のGDP=国内総生産について、過去10年余りの伸び率と、金額に換算した規模の推移を見てみます。

リーマンショック前の2007年度のGDPの規模は、527兆2700億円でした。

それが2008年度はリーマンショックの影響で、GDPの伸び率がマイナス3.6%に。

続く2009年度もマイナス2.4%と、2年連続のマイナスとなりました。

これに伴いGDPの規模も495兆8775億円と、6年ぶりに500兆円を割り込みました。

その後、デフレ脱却を目指した経済政策「アベノミクス」が本格的にスタートした2013年度は、GDPの伸び率がプラス2.7%、規模が532兆804億円と、初めて530兆円を突破。

2018年度には554兆2593億円と、過去最高になりました。

しかし、新型コロナの感染拡大が日本経済を直撃した昨年度、2020年度、GDPの伸び率はマイナス4.5%と、過去最大の落ち込みを記録。規模も525兆6583億円に減少しました。

一方、政府が23日の臨時閣議で了解した成長率の見通しは、今年度、2021年度がプラス2.6%程度、来年度、2022年度が、プラス3.2%程度となっています。2年連続のプラス成長を背景に、GDPの規模は556兆8000億円と、これまでで最高になると見込んでいます。

専門家「来年も感染状況が大きなポイント」

来年の日本経済の見通しについて、大和総研の橋本政彦シニアエコノミストは「特に外食や旅行など、これまで落ち込みが大きかった対面型のサービスを中心とした個人消費が、けん引役として期待される。しかし、感染者数が増えて、再び緊急事態宣言が出される事態になると、個人消費が相当程度、下押しされるおそれがある。引き続き感染状況が大きなポイントになる」と指摘しました。

また、半導体などの部品の供給制約が長期化しないかどうかもポイントになると指摘し「半導体などの不足は最悪期を脱しつつあるが、オミクロン株の感染が広がり、海外の工場の稼働に影響が出れば、供給制約が長引くリスクもある。供給制約が長期化すれば、消費者は買いたいのにモノがないといった状況になり、個人消費に悪影響が出るおそれがある」と話しています。

さらに、原材料費の高騰と、物価や賃金の動向がポイントになると指摘し「日本では海外に比べて、原材料価格の高騰を商品に転嫁できていない。企業がコストを負担して収益が悪化し、さらに賃金が上げづらいという状況も出始めているので、今後の物価の動向を注意してみていく必要がある」と話しています。