アルツハイマー病治療薬 厚労省部会で“承認か否か結論出ず”

アメリカと日本の製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の治療薬について、厚生労働省の専門家部会は、現時点のデータから有効性を明確に判断することは困難だとして追加の治験のデータの提出を求めたうえで改めて審議することを決めました。

改めて審議行う時期の見通し“現時点で示せず”

この薬はアメリカの製薬会社「バイオジェン」と、日本の「エーザイ」が開発した「アデュカヌマブ」です。

アルツハイマー病の進行を抑える薬として去年12月に承認の申請が行われ、22日に厚生労働省の専門家部会は有効性や安全性を審議しました。

その結果、現時点のデータから有効性を明確に判断することは困難だとして、22日の時点では承認するかどうか判断せず、改めて審議することを決めました。

審議では、課題として最終段階の治験の結果に一貫性がないことや、投与された人に脳のむくみや出血が見られたことなどが挙げられたということです。

厚生労働省は、今後会社側に追加の治験のデータを求めたうえで改めて専門家部会で審議することにしています。

審議を行う時期の見通しは現時点で示せないということです。

「アデュカヌマブ」は、脳にたまった「アミロイドβ(ベータ)」という異常なたんぱく質を取り除いて神経細胞が壊れるのを防ぐ効果があるとされ、製薬会社は、アルツハイマー病の初期の患者などを対象にした国際的な治験で認知機能の低下が22%抑えられたとしていました。

会社によりますと、これまで症状の進行を数年程度遅らせる薬はありましたが、病気の進行自体を抑える薬は世界でも初めてだとしています。

海外ではアメリカのFDA=食品医薬品局がことし6月に条件付きで承認した一方、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は17日、承認をしないよう勧告し、厚生労働省の部会が有効性をどう判断するかが焦点でした。

治験に参加した院長「症状進行遅く感じるが劇的ではない」

治験に参加した医療機関の1つで、東京 文京区にある認知症専門のクリニックの朝田隆院長は「アデュカヌマブ」について「これまで使ってきた対症療法の薬と違って、全体としては認知症の症状の進行の度合いが遅いように感じている。ただ、劇的ではないため、分かりやすいものではない。従来の薬と組み合わせることで症状の進行が遅くなって、生活が少しでも充実して楽しく過ごせる、その一助になる薬になるのではないかと期待している」と話していました。

そのうえで副作用については慎重な対応が必要だとして「3人に1人くらいの確率で、脳の血管の周囲がむくんだり、出血を起こしたりする。慎重の上に慎重を期した対応が求められ、頻繁にMRIで観察する必要があり、当面はどこでも誰でも使える薬になることは難しいと思う。ただ、この薬が効果の面でも費用の面でも新たなものが生まれてくるきっかけになればと思う」と話していました。

治験に参加した男性とその妻は

「アデュカヌマブ」の治験に参加した60代の男性は「元気に好きなことをしながら生活できるような薬ができてほしい」と話しています。

この男性は、60歳ごろから常に頭に霧がかかったような感覚となり、道に迷ったり、何度も同じ話を繰り返したりするようになったということで、認知症になる前の段階とされる「MCI=軽度認知障害」と診断され、その後、軽度のアルツハイマー型の認知症と診断されたということです。
男性は「認知症のせいでやりたいことが制限されることなく、元気に好きなことをしながら生活できるような薬が出てくることは素晴らしいと思うし、そういう薬ができてほしい。薬ができることで次の世代の人が認知症から脱却できればうれしい」と話していました。
また男性の妻は「認知症で不安を感じているときに、頼りになるものが1つでも多い方が、これからどうするかを考える力になるので、治験に参加したことは総合的にみて、いい影響があると思います」と話していました。

日本認知症学会の理事長「問題点が慎重に審議されたのでは」

厚生労働省の専門家部会で「アデュカヌマブ」を承認するかどうかの結論が出ず、改めて審議する必要があるとされたことについて、日本認知症学会の理事長で、東京大学の岩坪威教授は「アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβに直接働きかけて、病気の進行を遅らせる薬は初めてで、実現すれば画期的なことだが、治験の有効性データが完全ではなかったことなど承認にあたっての問題点が慎重に審議されたのだと思う。この薬は対象となるのが症状の軽い人に限られるなど課題もあるが、仮に承認されれば今後、さらに良い薬や診断法が出てくるきっかけになることは間違いないと考えている。さまざまな課題を解決して、アルツハイマー病の新しい治療の先駆けとなる薬ができるだけ早い時期に日本の臨床現場でも使えるようになるよう前向きな議論が続くことを期待したい」と話していました。

当事者や家族などの団体「今後も審議を」

アルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」の承認の判断が見送られ、改めて審議することが決まったことについて、認知症の当事者やその家族などでつくる「認知症の人と家族の会」の鈴木森夫代表理事は、「もう少し時間をかけてしっかり審議したいということだと受け止めている。薬が承認され、認知症が治らない病気ではなくなることは患者にとって大きな希望だし、次の新たな治療の突破口にもなるので、新薬を待ち望む認知症の人や家族の思いに応えて、しっかり今後も審議を重ねてほしい」と話していました。