岸田首相会見 オミクロン株対策強化 看護収入引き上げ恒久化へ

岸田総理大臣は21日夜、臨時国会の閉会を受けて記者会見し、新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」への対策を強化するため濃厚接触者に対し、自宅での待機ではなく、宿泊施設で14日間とどまるよう要請する考えを明らかにしました。
また、看護や介護の現場で働く人を対象とした3%の収入引き上げを恒久的な措置とする方針も表明しました。

この中で岸田総理大臣は「今国会ではできるかぎり私の考えを丁寧に説明した。国民感覚に沿うよう方針変更すべきと感じたことは思い切ってかじを切った」と述べました。

そして新たな変異ウイルス「オミクロン株」への対応について、外国人の新規入国を原則、停止している現在の水際措置を、年末・年始の状況を見極めつつ当面の間、延長すると説明しました。

その上で、すべての国内感染者を対象に「オミクロン株」の検査を行い、早期探知を徹底することに加え、濃厚接触者に対しては、自宅での待機ではなく、宿泊施設で14日間とどまるよう要請する考えを明らかにしました。

さらに、160万回分を確保したメルクの飲み薬を薬事承認が得られしだい、年内から医療現場に届けるほか、ファイザーの飲み薬200万回分も、来年の早い時期から届けられるよう準備を進める意向を示しました。

一方、新型コロナウイルス対策として政府が調達した布マスクの在庫について、マスク不足に対する心配は払しょくされたとして希望者に配布し有効活用を図った上で年度内をメドに廃棄するよう指示したと明らかにしました。

さらに新型コロナの影響を受けた人への対策として、20日成立した補正予算を早期に執行し年内から幅広く支援を行うほか、ガソリン価格の高騰や、軽石や赤潮による被害、コメの価格の下落などに対してもきめ細かく対応すると説明しました。

また生乳の需要減少が大きな問題になっているとして、大量廃棄を防ぐため、特に需要が減る年末・年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んだり、料理に乳製品を活用したりするよう国民に協力を呼びかけました。

一方「新しい資本主義」をめぐり、人への投資を強化するため、政策の企画・立案段階から、民間の発想を取り入れる考えを示し、非正規労働者も含めおよそ100万人の能力開発や再就職などの支援を行うための意見募集を近日中に開始する意向を示しました。

また、賃上げをめぐり、看護や介護、保育などの現場で働く人の収入について、これまでに表明している3%の引き上げを恒久的な措置とする方針を示しました。

このほか、デジタル政策に関して
▽行政手続きをデジタル処理で完結させるなどとした「デジタル原則」に合うよう、4万件の法律や政省令などを一括で見直すほか、
▽日本全国どこでも自動走行ができるよう、これに必要な10数か所のデータセンターの拠点を5年程度で整備すると説明しました。

また、高速・大容量の通信規格「5G」について、
▽現在は3割程度の人口カバー率を2023年度に9割に引き上げるとともに、
▽光ファイバーについては、2030年までに99.9%の世帯をカバーできるよう取り組む考えを示しました。

一方、外交・安全保障をめぐって、岸田総理大臣は「来年は積極的に首脳外交を推し進める1年にしたい」と強調した上で、アメリカのバイデン大統領と早期に首脳会談を行い、日米同盟の抑止力と対処力をいっそう強化する考えを示しました。

憲法改正に関しては、先の衆議院選挙後、初めての憲法論議が、衆議院憲法審査会で行われたことについて「国会で憲法改正の議論が始まったことを歓迎する。通常国会ではさらに議論が深まることを期待する」と述べました。

また、党改革を進めるため、年明けから地方の意見も聞きながら議論を加速させる考えを示しました。

最後に岸田総理大臣は「年が明ければ、すぐに通常国会だ。来年度・令和4年度予算案や税制関連法案の早期成立、新型コロナ対応や『新しい資本主義』の実現などに向けた重要法案の成立に向け力の限りを尽くす。未来に対する希望を持てる日本を創るため来年も挑戦をし続ける」と述べました。

10万円相当の給付「国民の利益になるよう制度見直し」

岸田総理大臣は、記者会見で、記者団から「18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、混乱を招いたのではないか」と指摘されたのに対し「大切なことは国民の利益になるようにするにはどうすべきか、常に制度の見直しを行っていく姿勢だ。新型コロナという危機を管理し、克服していくことを最優先にしていかなければならず、スピード感を最優先にした機動的な対応を図っていきたい。これからも、こういった姿勢は大事にしながら政治を進めていく。これが結果として国民のためになると信じて努力を続けていきたい」と述べました。

北京五輪 政府関係者派遣「総合的に勘案して判断」

来年の北京オリンピックに政府関係者を派遣しないことを表明する国が相次いでいることについて「適切な時期に、オリンピック・パラリンピックの趣旨や精神、わが国の外交の観点、様々な点を勘案して、わが国の国益に照らして判断をしていく方針で臨んでいきたい。いましばらく、しっかりと諸般の事情を総合的に勘案して判断していきたい」と述べました。

アメリカ訪問「できるだけ早く首脳会談実現したい」

アメリカ訪問について「日米同盟は、わが国の外交安全保障の基軸で、バイデン大統領と早期に対面で会い、さまざまな課題について思いを共有し、信頼関係を醸成していくことは極めて重要な課題だと認識している」と述べました。

その上で「アメリカ国内の政治の動きや、アメリカは今、新規感染者の7割がオミクロン株だと報じられていて、変異株の状況は大変だ。引き続き調整を続けて、できるだけ早く日米首脳会談は実現したい」と述べました。

習近平国家主席との首脳会談「予定はない」

岸田総理大臣は、記者会見で「日中関係は大変重要な二国間関係だということは言うまでもないが、中国に対して、自由や民主主義、法の支配、人権といった普遍的な価値に基づいて言うべきことはしっかり言う。東シナ海をはじめ、日本の国益にかかわる課題にはしっかりものを言っていくことは重要だ。言うべきことは言いながら、安定的な関係を実現するべく努力を続けていく姿勢は大切で来年の日中国交正常化50年に向けてどうあるべきなのかしっかり考えていきたい」と述べました。

一方、習近平国家主席との首脳会談について「首脳会談などは、いまは何も決まっておらず、予定はない」と述べました。

参院選の勝敗ライン「申し上げるのは気が早すぎる」

岸田総理大臣は、記者団から来年夏の参議院選挙の勝敗ラインを問われたのに対し「半年以上、先の選挙について勝敗ラインや身の処し方を申し上げるのは気が早すぎる。まずは、今の政権に課せられたコロナ対策や日本の経済の再起動、そして外交安全保障など重大な課題についてどう向き合って、結果を出していくかだ。まずは国民から信頼や共感をいただけるような政治を進めていくことが大事だ」と述べました。

巨大地震「必要なら法改正してでも用意」

岸田総理大臣は、北海道から岩手県にかけての沖合にある「千島海溝」と「日本海溝」で巨大地震と津波が発生した場合の国の新たな被害の想定がまとまったことについて「人の命や暮らしを守ることは政治にとって最も大切な課題であり、使命だ。そのために必要なものがあるとしたならば、当然、法改正をしてでも用意する。実際、何が必要なのか、何が求められるのかは、今一度しっかり確認したい」と述べました。

小選挙区「10増10減」は法律で対応

岸田総理大臣は、衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」について「定数についてはさまざまな議論があるが、政府としては、審議会の勧告に基づく区割り改定法案を粛々と国会に提出するということが現行法に基づく対応だと認識している。政府の立場から申し上げるならば、法律に基づいて取り組んでいくことを想定している」と述べました。

総理大臣補佐官の起用「人権補佐官は国内も担当」

岸田総理大臣は、記者団から国際人権問題を担当する中谷・総理大臣補佐官以外に、国内の人権問題を担当する総理大臣補佐官を起用する考えがないか問われたのに対し「人権問題は国の内外に関わり、各省庁の所管にまたがる大変、幅広い課題だ。人権担当の総理大臣補佐官は、外国に対してものを言うだけでなく、国内についても省庁の縦割りを排して問題に取り組むために置いた。一つ一つ課題に取り組んでいきたい」と述べました。

核兵器禁止条約のオブザーバー参加は「慎重」

岸田総理大臣は、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加をめぐり「アメリカとの信頼関係を築いた上でさまざまな活動を考えていくべきであり、その前にオブザーバー参加することは、慎重でなければならない。対面での日米首脳会談の実現を模索しているところであり、まずバイデン大統領と信頼関係をつくり、それから考えたい」と述べました。

成長戦略「官民協働で成長力底上げ」

岸田総理大臣は「デジタルやグリーン、人的投資やスタートアップなどの重要性が飛躍的に高まっている。こうした世界全体の大きな流れに沿って、わが国の成長力を底上げしていきたい。そのためには、市場機能だけに任せるのではなく、官民が協働し『外部不経済』の克服や、無形資産への投資をしっかり加速化することがカギになる。新しい資本主義実現会議でこうした大きな絵をしっかり示したい」と述べました。

また、記者団が政府が掲げる名目GDPを600兆円まで引き上げる目標についての考えを質問したのに対し「まずは新型コロナ前の水準に経済をしっかり戻し、立て直していくことに専念しなければならない。中身は新型コロナ前とは違うが少なくとも数字的に新型コロナ前に戻し、さらなる高みを目指していくということではないか」と述べました。