【詳しく】アプリでコロナワクチン接種証明 20日から始まる

新型コロナウイルスのワクチンを接種したことをスマートフォンで証明する専用アプリの運用が20日から始まり、自治体では操作方法などの相談に応じています。

アプリ運用開始 相談窓口も

政府は、再び緊急事態宣言が出た場合もワクチンの接種証明書などの提示があれば、飲食店やイベントでの人数制限を設けない方針で、20日からスマートフォンで接種証明書を表示するアプリの運用を始めました。

デジタル庁の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」をスマートフォンにダウンロードしてマイナンバーカードを読み込むと接種したワクチンの種類や接種日などが画面に表示されます。
東京 品川区では20日から、操作方法がわからないといった住民の相談に応じていて、職員がスマートフォンを一緒に操作しながら説明していました。

マイナンバーカードやスマートフォンを持っていない場合は、これまでどおり自治体の窓口で紙の証明書も発行されるということです。

90代の住民の男性は「操作が非常に難しく窓口に来ました。紙だと使っているうちに破れたりしてしまうかもしれないので、電子化されたものを飲食店などで使いたいです」と話していました。

また、70代の男性は「障害などが起きずにちゃんとアプリを使えるか様子を見たいので、きょうのところは紙の証明書にしておこうと思います」と話していました。

職域接種を受けた人も、接種記録は自治体のワクチン接種記録システムに記録されているため、アプリを利用できるということです。

どんなアプリ? 発行方法は?

このアプリを使って証明書を発行するには、
国内用の証明書の場合は
▽スマートフォンと
▽本人確認のためのマイナンバーカード、
それに
▽カードの暗証番号が必要になります。

手続きではまず、スマートフォンに「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」をダウンロードします。

アプリを開いて、国内用と海外用どちらの証明書が必要なのかなど、質問に応じて回答を進めていきます。

続いて、マイナンバーカードの4桁の暗証番号を入力してからマイナンバーカードをスマートフォンにかざすと、アプリがカードの情報を読み取ります。

その後、ワクチンの接種券が発行された自治体名を選択して入力すると手続きが完了し、ワクチンの接種証明書を発行することができる仕組みです。

証明書 活用方法は?

群馬県では、来年1月から始める隣県の県民も対象にした宿泊施設の料金を割り引くサービスでアプリを活用することにしています。

群馬県は新型コロナで落ち込んだ観光需要を取り戻そうと、宿泊施設の料金を1人1泊あたり5000円を割り引くキャンペーンを来年1月4日から31日まで県民と埼玉、栃木、長野、新潟の隣接する4つの県の県民を対象に行い、運用が始まったアプリを活用することにしています。

伊香保温泉で旅館を経営する大森隆博さんは「接種証明の提示は、スムーズなチェックインやお客様の安心にもつながり、新しいアプリの運用によりお客様がさらに増えればうれしいです」と話していました。

記録システム 約10万件にデータ誤り 自治体は対応追われ

一方、ワクチン接種記録システムでは、今月17日の時点で全国のおよそ10万件のデータに接種日やワクチンの製造番号などの誤りが見つかっていて、自治体は確認や修正に追われています。

長野県内で最も多いおよそ29万人が2回の接種を終えた長野市では、職員14人態勢で紙の予診票と突き合わせて確認と修正を進めていますが、20日午前の時点でおよそ17万人分の確認が終わっていないということです。

長野市や松本市によりますと、これまでに確認されたミスの内容としては、接種会場や医療機関で接種した人を識別する番号を登録する際に、タブレット端末が数字を誤って読み取り、別の人が接種したことになっているケースがあるということです。

また、人為的なミスで接種日が間違っていたり、ワクチンのロット番号が異なっているケースもあるということです。

長野市は確認と修正を急いでいますが、終わる時期の見通しはたっておらず、スマートフォンの接種証明書で誤った情報が表示されるおそれがあるということです。

データが誤っていた場合、医療従事者や高齢者施設の入所者などへの3回目の接種に向けた接種券の発行にも影響が出るおそれがあるということで、長野市保健所健康課の山腰章夫課長補佐は「スマホの接種証明書の内容が接種済み証と違っている場合、保健所に連絡をしてほしい。3回目の接種がスムーズに受けられるよう確認を進めていきたい」と話しています。

一方、別の自治体で接種した場合、システム上確認ができないため、各地の自治体は3回目の接種を希望する転入者に対して、接種済み証や接種券の発行申請書を提出するよう呼びかけています。

マイナンバーカード普及の遅れも課題

スマートフォンのアプリを使った証明書の発行には、マイナンバーカードの読み取りが必要ですが、このマイナンバーカードの普及率が低くとどまっています。

総務省によりますと、マイナンバーカードの交付数は今月16日時点でおよそ5130万枚、普及率は40.5%となっています。

デジタル庁はマイナンバーカードを必要とする理由について、「本人確認を確実に行うにはマイナンバーカードが適切で、自治体のワクチン接種記録システムともひもづいているためだ」と説明しています。

旧姓を併記のカードでは証明書を発行できず

20日から運用が始まった新型コロナウイルスのワクチンを接種したことをスマートフォンで証明する専用アプリで、登録に必要なマイナンバーカードに旧姓が併記されている人は、システム上、証明書が発行されず、利用できない状態になっていて、戸惑いの声が上がっています。

20日から政府が運用を始めたアプリは、マイナンバーカードを使ってスマートフォンに必要な事項を登録すれば画面に接種証明書を表示することができます。

しかし、マイナンバーカードに現在の名字のほか、旧姓を併記している人は、システム上、証明書が発行されず利用できない状態になっていて、戸惑いの声が上がっています。
このうちの1人で選択的夫婦別姓の実現を目指す団体で事務局長を務める井田奈穂さんは「今後、イベントに参加したりする際、証明書が必要になると思い、登録しようとしたら、作動しませんでした。SNSでも同じようにエラーが出たという多くの投稿がありました。旧姓の併記による不都合はほかにもあり、自分の望む名字を使いたいというだけで排除されているのは、本当におかしいと思います」と話していました。

デジタル庁によりますと、証明書を発行できない原因は、氏名の記入欄が、名字と名前の2つに限られているためで、旧姓も併記されている人には、システム上、対応できていないということです。

また、同じアプリで海外用の接種証明書も発行できますが、その際に必要となるパスポートに旧姓やミドルネームなどが併記されている場合も発行できないということです。

一方、紙の証明書は、マイナンバーカードやパスポートに旧姓が併記されていても市区町村の窓口などで発行できるということです。

デジタル庁は「できるだけ早く修正したい」としています。

接種証明 各国は?

JETRO=日本貿易振興機構が、今月7日時点で海外の主要国のワクチンの接種証明についてまとめたところ、少なくとも29の国で、スマートフォンのアプリで電子証明書を発行したり、紙の媒体で接種証明を発行したりするなどの対応をとっているということです。

このうち、フランスでは、飲食店などの施設を利用する際にワクチンの接種証明を提示しないと、原則として利用できないようにする方針を政府が示しました。

検査に基づく陰性証明は認めない方針で、必要な法案が来月の議会に提出される見通しですが、一部の市民からは「事実上の接種の義務化だ」などと反発する声も上がっています。

先週、一日の新規感染者数が過去最多を記録した韓国では、今月から飲食店でワクチンの接種証明の提示を義務づけるなど、規制を強化しています。