いじめ対応「難航時 第三者支援必要」学校など9割 NPO代表調査

子どもの命に関わる深刻ないじめが後を絶たない中、学校や教育委員会の担当者へのアンケート調査で「対応が難航した場合に中立的な第三者機関の支援が必要」という回答が、全体の9割近くに上ったことがわかりました。

学校や教育委員会の486人が回答

調査は、いじめの解決に取り組む埼玉県のNPO法人代表の森田志歩さんが、被害者が学校側の対応に不信感を抱く例が相次いでいる現状を受け、小中学校と高校150校、教育委員会100か所を抽出して実施し、担当者486人から回答を得ました。

いじめの対応で難しいと感じる点を複数回答で尋ねたところ、
▽「保護者との連携」という回答が54%と最も多く、
▽「いじめか否かの判断」が48%、
▽「ほかの業務があるため時間をかけられない」という回答が16%となりました。

保護者との関係がこじれ対応が難航した場合については、
▽「中立的な立場で介入して解決に協力してくれる第三者機関が必要」と回答した人が、9割近い425人に上りました。

自由記述の中には、
▽「互いの主張が異なる中で事実確認や調査に限界がある」という声や、
▽「教員が多忙で助けを求めにくく、抱え込んで対応が遅れる」といった声もあったということです。

また、いじめによる自殺や不登校などの「重大事態」が起きた際は、教育委員会や学校に調査委員会を設けて調査するよう法律で定められていますが「委員の日当などの費用」や「委員を引き受けてもらえない」といった課題をあげる回答もありました。

結果を受けて森田さんは「一部に悪質な学校や教育委員会もありますが、理解していても実際の対応ができない状況で、困っているところも数多くあります。ただ、本当に適切に対応していかないと、いじめを受けたとき以上に、子どもが傷ついてしまう。まずは法律にのっとり責務を果たせる環境を整備しないと、いじめの解決につながらないと思っています」と指摘しています。

NPO法人代表「子どもの視点で環境整備を」

今回調査を行ったNPO法人「プロテクトチルドレン」代表の森田志歩さんは、全国の子どもや保護者、学校関係者からのいじめなどの相談に対応し、解決につなげてきました。

相談はひと月に200件ほど寄せられるということで、各地の現場に直接訪れる中で、保護者と学校側が対立して対応が遅れた結果、守るべき子どもが置き去りになってしまうケースが多い現状を見てきました。

このため森田さんは、学校や教育委員会の対応を批判するだけでなく、現場の実情を踏まえた改善策が必要だと考え、今回の調査を行いました。

森田さんがいじめの解決に向けて活動を続けてきた背景には、自身も6年前に中学生だった息子がいじめにあった際、学校や教育委員会にかけあっても十分に向き合ってもらえない経験をしたことがあるといいます。

いじめは解決されず、息子は1年半にわたって不登校になり、自傷行為に及ぶほど追い詰められたということで、まずは子どもを救うことに重点を置いた対応が必要だと感じてきました。

森田さんは「傷ついて苦しんでいる子どもを一刻も早く救うために、どこに問題があり何を早く解決すべきか、冷静に判断する必要があり、中立的な立場で対応してきました。大きな問題が起きるたびに学校や教育委員会が批判され、しばらくたつと風化して繰り返されますが、みずから命を絶ってしまう子どもや、心に大きな傷を負う子どもは増え続けています。対応にあたる学校現場の先生の業務の多忙さにも問題があり、限られた時間と人員では限界があります。議論の方向性を批判から子どもの視点に変えて、土台となる環境を整えていく必要があります」と話しています。

市長がいじめ対応に乗り出す異例の動きも

第三者によるいじめの対応をめぐっては、教育委員会に代わって自治体の長が対応に乗り出す、異例の動きも出ています。

教育行政は、政治的中立性や継続性を確保するため、自治体の長から独立した教育委員会が担っていますが、大阪府寝屋川市は、教育的なアプローチだけでは解決に限界があるとして、2019年、いじめを人権侵害と捉えて、市長部局が直接対応にあたる「監察課」を設置しました。

ケースワーカーの経験がある職員など9人の態勢で、いじめの情報があれば初期段階から子どもや保護者、教員に聞き取り調査を行って家庭訪問をしたり、謝罪の場を設けて立ち会ったりしているほか、教室にも状況の確認に訪れます。

毎月、市内の小中学生およそ1万6000人にいじめに関する情報を匿名でも書き込めるはがきを配布して通報を呼びかけているほか、学校が把握したいじめにも対応していて、昨年度は、確認したいじめ行為169件を1か月以内に停止させたとしています。

市の条例では、市長に加害側の子どもの別室指導や出席停止、それにクラス替えなどを学校や教育委員会に勧告できる権限を与えていて、すでにクラス替えなど5件の勧告を口頭で行ったということです。

また、監察課で直ちに解決できなかった場合には、被害者側が訴訟を起こす際の費用も一部補助するとしています。

寝屋川市の広瀬慶輔市長は「教育的なアプローチで99%は解決できているが、1%は解決に時間がかかる以上、学校や教育委員会だけでは限界があると考え、短期間で子どもたちを平穏な状態に戻すことに最も注力している」としたうえで、教育の政治的中立性については「教育の『内容』自体は学校や教育委員会が主体的に担うが、安心して学ぶための教育の『環境』については、われわれも一定の責任を負うもので、分けて考えている」としています。

一方、こうした動きをめぐっては、岐阜市でも去年、市長が加害側の子どもの別室指導や出席停止を教育委員会に勧告できるよう条例を改正しようとしましたが、識者や市民から「教育の政治的中立性を損なうおそれがある」などと意見が相次ぎ、改正案から削除しています。

専門家「中立的な第三者の介入 社会も期待」

いじめの対応について、実態調査などを行っている名古屋大学大学院の内田良准教授は「学校の問題は学校で解決しようという教員文化が非常に強いが、実際にいじめが起きた際に子どもや教員に話を聞くと、事実認定が進まない実態もある。多忙な働き方をみても、外部のサポートが必要なことは間違いなく、利害関係のない中立的な第三者の介入は社会からも期待されている」と話しています。

そのうえで「市長部局が直接学校に入っていくというのは、かなり異例な取り組みだ。政治的中立性の確保はその時代の政治の動きにより、学校現場や教育行政が左右されないよう、日本の教育制度が守ってきた仕組みで、本来は市長が入っていくことは大きな問題をはらむ。教育委員会の動きが鈍いために第三者が入っていくのか、教育委員会が子どもの安全を守っていくのか、岐路に来ている。学校が頼れる外部はどこなのか、第三者の介入の在り方はどうあるべきか、議論が必要だ」と指摘しています。