オミクロン株の水際対策 帰国者専用バスなど利用低調 周知必要

新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」の水際対策が強化されるなか、海外からの帰国者や入国者は空港の検査で陰性であっても公共交通機関を利用しないよう求められています。

しかし、成田空港と都内を結ぶ帰国者や入国者専用の鉄道やバスの利用は低調で、中には利用率がおよそ1割のバスもあり、専門家はさらなる周知が必要だと指摘しています。

政府は、新型コロナの水際対策の一環として海外からの帰国者や入国者に対し空港の検査で陰性であっても、一般の鉄道やバスなどの公共交通機関は利用しないよう求めています。

このため成田空港と都内を結ぶ京成電鉄や東京空港交通などが、去年12月から帰国者や入国者専用の鉄道やバスを運行し、空港内には周知のポスターも掲示されています。

このうち京成電鉄は、東京・上野に向かう特急「スカイライナー」の8両のうちの1両に専用車両を設け、感染対策として、定員を通常の半数のおよそ20人にしています。

この専用車両を毎日29便運行していますが、1日の利用者は平均で20人程度にとどまっているということです。

京成電鉄鉄道本部の延命誠執行役員は「厳しい状況だが、地道に案内しながら、利便性を確保していきたい」と話しています。
また、東京空港交通は都内のホテルなどに向かう高速バス「リムジンバス」のうち1日3便を専用車両にして、感染対策として定員を通常の半分の20人にして運行しています。

しかし、1日の利用者は平均で5人程度で、利用率はおよそ1割にとどまっているということです。

東京空港交通の山口亮一執行役員は「厳しい状況だが、一人でも多くのお客様が安心安全に都心に帰れるようにしていきたい」と話しています。

水際対策に詳しい国際医療福祉大学の和田耕治教授は「オミクロン株への警戒が続く今、感染対策を施した専用車両があることを、事業者や国は利用者にさらに周知していくこと必要だ」と指摘しています。

帰国者「運行していることを知らない」

帰国者や入国者専用の車両やバスについて、成田空港の帰国者からは「運行していることを知らない」という声が多く聞かれました。

成田空港検疫所は鉄道会社やバス会社とともに空港内にポスターを掲示して、帰国者や入国者専用の車両やバスがあることを周知し、公共交通機関の利用を控えるよう呼びかけています。

しかし、仕事で滞在していたジャカルタから帰国した東京都の20代の男性は、「ハイヤーで都内に戻ります。専用のバスや鉄道は会社からの案内もなく知りませんでした」と話していました。

また出張先のアメリカから帰国した静岡県の50代の男性は「レンタカーで静岡に戻ります。専用バスや鉄道については知りませんでした」と話していました。

さらにアメリカから帰国した東京の60代の女性は「まだ自宅で待機する必要があるのでハイヤーで帰宅しますが、都内まで行ける専用バスがあることは知りませんでした。負担する金額も違うので知っていたらよかったです」と話していました。

これについて鉄道やバス事業を所管する国土交通省は「入国制限が続くなかで利用者を増やすことは厳しいところもあるが、引き続き周知をしていきたい」と話しています。

一般バスを利用する人の姿も

NHKが成田空港の国際線の到着ロビーで取材したところ、海外から到着した帰国者や入国者の多くは、みずから手配したハイヤーや自家用車、それに会社の送迎車で帰宅していました。

帰国者や入国者専用の鉄道やバスを利用する人は数えるほどしかいませんでした。

一方で、帰国者や入国者の中には、利用しないように求められている一般の高速バスに乗り込む人の姿もみられました。