“14歳”になって見えたこと… SNS性犯罪 驚がくの実態

“14歳”になって見えたこと… SNS性犯罪 驚がくの実態
今、SNSをきっかけに、児童ポルノの被害や児童買春、淫行など、性犯罪に巻き込まれる子どもが増加しています。
警察庁によると、去年被害に遭った子どもは、発覚しているだけでも2000人近く。
近年その数は増加傾向にあります。

子どもたちに今何が起きているのか。
被害を食い止めるためには何が必要なのか。

NHKは被害者支援団体と共同で架空の「14歳の女子中学生」のツイッターアカウントを作成。
すると、子どもたちをことば巧みに性犯罪に陥れようとする大人たちの悪質で身勝手な姿が見えてきました。
(首都圏局ディレクター 二階堂はるか)

※この記事では性暴力被害の実態を広く伝えるため、被害の詳細や加害者の手口について触れています。フラッシュバック等症状のある方はご留意ください。

あと絶たぬ “デジタル性暴力“

「性的な写真や動画を送るように言われた」
「勝手にSNSやアダルトサイトに転載され、拡散している」
スマホやネットなどを悪用した“デジタル性暴力”の被害に遭った人から相談が寄せられる都内のNPO法人「ぱっぷす」。
被害者に代わってネット上に拡散した写真や動画などの削除要請を行い、警察や弁護士事務所などとも連携しながら、被害者を支援する活動をしています。
相談件数は、去年だけで300近くにのぼるといいます。

ここ数年で特に増加しているのが、10代の子どもたちからの相談。
SNS上で知り合った人にだまされるなどして、写真や動画を要求され実際に送ってしまった、さらに「写真をばらまくぞ」などと脅されて、わいせつ行為をさせられたり、無理やり性交させられたといった被害が目立つといいます。

寄せられている相談は“氷山の一角”にすぎず、被害を防ぐためには被害者支援だけでは限界があるといいます。
「ぱっぷす」理事長 金尻カズナさん
「加害者はネット上の匿名性を利用してやりたい放題、声をかけたい放題です。被害に遭った子どもたちに『写真を送ってはダメ』『撮ってはダメ』と言うのではなく、まずは加害側に『性的な写真を要求してはダメ』と、加害の予防をすることが必要ですし、加害が野放しになっている現状にどう終止符を打つのかが重要だと思います」

“14歳の女子中学生”になって見えた景色

加害の実態を可視化するために「ぱっぷす」と共同で架空のツイッターアカウントを作成。
どんな人が、どういう手口で、SNS上で子どもたちに近づき、犯罪へと引き込むのか、記録を始めました。
設定は「14歳、中学3年生の女子生徒で、甘いものが好きな受験生」

警察庁の資料によると、中学生はだまされるなどして、みずからの裸の写真や動画を送らされる「自画撮り」被害に遭う割合が最も高く、また受験の悩みやストレスなどにつけ込まれるケースがあるからです。

さらに、相手とやり取りするにあたっては、法的な範囲内で取材を進めるために、性犯罪に詳しい弁護士などの助言を基にルールを作成。
犯罪を誘発しないために「みずから連絡しない」「誘惑や挑発はしない」「未成年であることを強調する」ことにしました。

プロフィール欄に中学生であること、14歳であることを明記。
顔写真は載せずに、まず「友達がほしい」とつぶやいてみました。
すると、1分もたたないうちに10人近くからダイレクトメッセージ(個人に直接送るメッセージ)が送られてきました。

送信者は10代から40代、全員が男性と思われる人物。
内容を見てみると、目を疑うような文言が並んでいました。
多くが唐突に、性的な話題を始めてきたのです。
さらに目を覆いたくなるような出来事もありました。
20代男性と称する人物が、一方的にみずからの自慰行為を写した動画を送ってきたのです。
さらに男性は「どう?」と感想を求めてきました。ことばが出ませんでした。
真意を問いただそうと相手にすぐにメッセージを送りましたが、送信できない状態になっていました。
男性のアカウントはすでに削除されていたのです。
「ぱっぷす」相談員 後藤稚菜さん
「子どもを“性的なもの”としか見ていないと感じました。子どもをひとりの人格ある人間だと思っていたら、まずいきなり性的なことばや動画を送りつけてはこないですよね。にもかかわらず一方的に送ってくるのは、送ってもいい相手、支配できる相手として見下しているんだなと感じました。怒りしかありません」

“いい人”として接触してくる…

接触してきた人たちの多くが、一方的に性的な要求をしてきましたが、中には時間をかけて何気ないやり取りを重ねてから、態度を一変させるケースもありました。

一人息子がいる40代の男性と称する人物。
この男性は当初、性的なことには一切触れず、学校や勉強、家族の話など日常的な話題をごく普通に振ってきました。
特徴的だったのが「受験生なんだね」「勉強の邪魔にならないかな」など、当初こちらを気遣う様子を見せたこと。

さらに甘いものが好きだと書いたプロフィールを見て「甘いものが好きなんだね。俺も!」「甘い物好きどうしだねー」と共通点を提示。

また、日常のささいなつぶやき、例えば「学校の先生に怒られた」といったつぶやきにも「落ち込まないで」など親身になった丁寧なことばを寄せてきました。
こうしたメッセージを、ほぼ毎日欠かさずに送ってきたのです。
「ぱっぷす」相談員 内田絵梨さん
「性的要求を一方的に押しつけてくる人が多いため、“まともに”コミュニケーションがとれ、さらにいつも“応援”したり“寄り添って”くれたりすると、少しずつ“いい人”なのではと思ってしまう。正直自分も、毎日『お疲れさま』『がんばっているね』ということばをかけられ続けると、感謝する気持ちを持ってしまうときもありました。私は被害者支援を続けてきて、さらに調査だとわかって相手とやり取りしているのですが、そんな自分でもこう思ってしまう瞬間もあるのだから、子どもだったらより一層心を開いてしまうのではないかと思いました」

“安心感”“信頼感”を利用する「グルーミング」

男性に対し、ある種の“安心感”を抱き始めたちょうどそのころ、男性のメッセージの内容が一変します。
受験勉強で「ストレスがたまる」と愚痴をこぼす投稿をしたところ、ストレスを「やわらげる方法」として男性が示してきたのが、“性行為”だったのです。
男性は、性行為によって「ストレスが解消されるんだよ」とし「絶対にマイナスにはならないよ」「あなたのためなんだよ」「女の子にとっては大切なことなんだよ」などと彼にとって都合のいい個人的な解釈を並べたうえで、性行為をするためには自慰行為が大切で「一つ一つ触って女の子の大切な感覚を目覚めさせないといけない」から、自分が“教えたい”と説いてきたのです。
女性器のイラストも送られてきました。
さらに、自分が自慰行為を教えたことで「ある小学生も気分転換になったと言ってくれたよ」と、“みんなが喜んでいる”と思わせるようなメッセージも送ってきたのです。

こうした偽りの“信頼関係”を利用し、ことば巧みに性的話題に慣れさせたり「かわいがってあげる」「癒やしてあげる」などと言って、性行為やわいせつ行為に持ち込む手口は「グルーミング」手なずけ行為と呼ばれ、子どもをねらう加害者が用いる典型的な手口とされています。

子どもたちの中には、一度信頼を寄せた大人のことばには疑問を抱けず、被害を受けたという自覚すら持てぬまま、性的な要求を受け入れてしまうケースも少なくないといいます。
「ぱっぷす」相談員 後藤稚菜さん
「『いい人』だと思った相手から性的なことを求められたり、たたみかけられたり、理詰めにされたら、相手から嫌われたくないと思ったり、これまで気遣ってくれた関係性を壊したくないなどと思って、性的要求を断れなくなってしまう子どもたちも多いと思います」
私たちは「性的行為を無理やり教えることはセクハラなのではないか」と伝えました。
すると男性は「セクハラではない」「知らなかったら君がつらい思いをするんだよ」と、あくまでも自分は“正しい”という姿勢を崩しませんでした。

あぜんとし、返事をできぬままでいると、数時間後、男性から「塾頑張ってね!」という、いつものこちらを気遣うメッセージが送られてきました。
性的に“加害”したという自覚がないのだと痛感しました。

対面 罪の意識が乏しい大人たち

約2か月にわたった私たちの調査で、200人近い人物が(14歳の私)に接触。
そのほとんどが性的目的でした。
中でも多かったのが、実際に会って、性行為やわいせつ行為をしたいというもの。
未成年へのわいせつ行為や性行為は、例え未成年の同意があったとしても、各都道府県の条例で犯罪として定められていて、懲役または罰金が課されます。
さらに金銭などの対価の授受や、立場を利用したり暴行や脅迫を伴ったりした場合は、法律でより重く処罰されます。

それにもかかわらず、なぜ未成年との性行為やわいせつ行為を求めてくるのか。
私たちは執ように性行為をもちかけてきた30歳前後だという男性の求めに応じ、一度直接会って、話を聞いてみることにしました。
支援団体とともに待ち合わせ場所に向かった私たち。
立場を明かし、これまでやり取りしてきたダイレクトメッセージを見せると、男性は、それは自分だと認めたうえでこう答えました。
男性
「どこまでいけるか、冷やかしで遊んでみようかと思ったんです。ユーチューブなどいろんな動画でこういう遊びをしているものを見て、自分でも実験してみようかなと。そもそも本当に14歳の女の子が来ることは疑っていたので。もし本当に14歳が来たら諭して帰っていたと思いますよ」
実はこの男性、事前のやり取りの中で金銭を介して性行為に及べば逮捕されるが「互いの同意の上で」あれば「すぐ犯罪行為という訳ではない」。だから「信号無視とか未成年の飲酒と比べたら悪事って訳ではない」と、子どもを誘い出すために、自身の“都合のよい”解釈を伝えてきていました。
男性
「真剣な交際かどうかっていうのはよく言われる話で、基本的に1対1の関係だと思うので」
支援団体
「1対1ですけど、対等な大人どうしの関係ではなくて大人と児童ですよね。ちょっと勘違いされているんじゃないかなと思うのですが」
男性
「それは個別の関係で、一概に言うのは難しいんじゃないですか?」
支援団体
「『同意があるからいいんだ』とか『みんな楽しんでいるよ』という大人がすごく多いんです。一方で、女の子たちから話を聞くと、自分は利用されたんだと思って悲しくなってしまうということもある。心の傷になるかもしれない、そういうことは一度でも考えたことはありますか?」
男性
「それって児童だから、成人だからって関係なくて、恋愛とか性的な関係で傷つくことって別に一般的な話だと思うんですけど。児童かどうかって差があるかと言われたらそれは個別の関係だし、程度の問題なんで」
30分にわたって話を続けましたが、男性は“真剣な交際であれば問題ない”という主張を繰り返し、最後まで自身の非を認めませんでした。

“真摯(しんし)な恋愛”という「免罪符」

この2か月、事前調査を含めると400人近い人物とやり取りを重ねました。
そうした中で感じたのは、子どもとの性行為などを「真摯な恋愛」「同意があるなら問題ない」と主張する大人たちがいかに多いか、そしてそれは大人の“勝手な思い込み”にすぎず「みずからの欲望を正当化するための免罪符」ではないか、ということです。
なぜなら、相手の大人が対等に接しているとは到底思えず、都合よく言いくるめてコントロールしようとしていると強く感じたからです。

性行為を求める前提で一方的に話を進める大人、
「二人だけの秘密だよ」と淫らな行為を隠すよう指示する大人、
「好きだ」「特別だ」などのことばを繰り返し性行為に持ち込もうとする大人、
人間性よりも「中学生」「14歳」という肩書にしか興味を持たない大人…

こうした状況下から“真摯な恋愛”は生まれるのでしょうか。
得られた“同意”は果たして“同意”なのでしょうか。
そもそも同意は対等な関係においてなされるもので、大人と子どもといった明らかに立場の違いがある上での同意は同意ではありません。
事実、同意があっても犯罪行為だと定められています。

現在、未成年との性行為やわいせつ行為などは、暴行や脅迫をともなったり(13歳未満は除く)、金銭の授受や立場などを利用したりしないかぎり、条例でしか罰せられません。
「子どもの性的搾取は許さない」という社会全体の決意が、いま私たちに問われています。
首都圏局ディレクター
二階堂はるか
2016年入局
沖縄局、ニュースウオッチ9を経て現職
2年ほど前から「性暴力」をテーマに取材