オミクロン株 感染力は?重症化は?分かってきたこと【12/15】

日本を含め、多くの国や地域で確認されるようになってきた新たな変異ウイルス「オミクロン株」。

感染力が強そうだということが徐々に見えてきた一方、感染しても軽症だという報告が多く出てくるようになっています。

本当にそうなのか、重症化しやすいかどうか分かるまでには時間がかかることもあり、慎重に見るべきだとしています。

これまでに分かってきたことをまとめました。
(2021年12月15日現在)

オミクロン株 デルタ株より感染力が強い?

オミクロン株について、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、12月14日の記者会見で「これまでに77か国が感染者を確認した」としたうえで「実際に検出されていなくても、すでにほとんどの国に広がっているだろう」と述べました。

南アフリカなどではオミクロン株に置き換わってきているとされています。

南アフリカでは、デルタ株の感染が収まってきていたために、デルタ株より速いスピードで広がったと見られていました。

その後、デルタ株の感染が多くあったイギリスなどでも、今ではデルタ株より速いスピードで広がっています。

こうしたことから、WHOは、証拠はまだ限られているとしながらも、デルタ株より速く感染が拡大しているとしています。
世界中の研究機関から、ウイルスの遺伝子配列が登録されるサイト「GISAID」では、デルタ株は2021年4月に「VOC=懸念される変異ウイルス」に指定されて以降、一貫してすべての新型コロナウイルスのうちで占める割合が増加してきました。
最も最近の2か月間でも99.2%がデルタ株ですが、オミクロン株の増加に伴って、今週に入って初めてその割合が減少しました。

また、京都大学の西浦博教授らのグループは、特にオミクロン株が広がっている南アフリカのハウテン州では、1人が何人に感染を広げるかを示す「実効再生産数」はデルタ株の4.2倍で、データの偏りを補正しても少なくとも2倍以上になったとしています。

減少傾向にあるデルタ株と急増しているオミクロン株を比べた結果で、オミクロン株そのものが持つ感染力はまだ分かっていないとしていますが、南アフリカでワクチンを接種した人や過去に感染した人の割合を踏まえて解析すると、免疫によるオミクロン株に対する感染予防効果は20%程度にとどまっていて、免疫をすり抜ける再感染によって急拡大しているとみています。

現在報告されている以上の広がりか

ヨーロッパではオミクロン株が報告されていない国から入国した人からもウイルスが検出されているほか、遺伝子解析が十分に行われていない国もあります。

このため国立感染症研究所は、アフリカ地域を中心にオミクロン株の感染がすでに拡大している可能性があると指摘しています。

専門家は、アルファ株やデルタ株が大きく広がったときと同じように、いま見えている数以上に世界各地で感染が広がっているのではないかと懸念しています。

“第6波で広がるおそれ”指摘も

日本では、新型コロナウイルスの感染者数が去年(2020)夏以降で最も少ない状態が続いています。

しかし、厚生労働省の専門家会合などはワクチンの接種から時間がたって効果が弱まることや、気温が下がり感染が拡大しやすい室内の閉めきった環境での活動が多くなることで感染拡大の“第6波”が起きるおそれを指摘しています。

専門家は、オミクロン株の感染力が高かった場合、ただでさえ感染拡大しやすい季節に“第6波”として広がってしまい、大きな感染拡大になることを警戒しています。

重症化しにくい? 慎重に見る必要

12月13日、イギリスのジョンソン首相はオミクロン株に感染して少なくとも1人が死亡したと明らかにしました。

南アフリカでは、オミクロン株への感染者が占める割合は明らかになっていないとしていますが、11月末からの1週間で新型コロナの入院患者は82%増加しました。

そのうえで、感染者数が増えれば入院患者の数は増えるとして、全体像を把握するにはより多くの情報が必要だとしています。

その一方で、ヨーロッパ、アメリカ、それに韓国からはほとんどの人が軽症か無症状だという報告されています。

WHOでは「ヨーロッパで報告された範囲では軽症か無症状だ」とデルタ株よりも低い可能性があるとしたものの、判断には追加のデータが必要だとして慎重な姿勢を示しています。

感染者が増加してから、重症化する人や亡くなる人が増加するまでは一定の時間がかかることがその理由です。
さらに、WHOのテドロス事務局長は12月14日の記者会見で、オミクロン株について人々の間で危険性を過小評価する動きが広がっていると懸念を示したうえで「たとえ症状が軽かったとしても、多くの感染者が出れば医療制度が再び成り立たなくなる」と述べ、引き続きワクチンの接種や、マスクの着用などの感染対策を怠らないよう呼びかけました。

多くの人が感染すると、重症化しやすい人にも感染が広がります。

このため、日本国内でこの夏の“第5波”などで経験したような医療が危機的な状態になるおそれがあるとしていて、こうしたことからも感染対策を続けるよう呼びかけています。

いまワクチン接種を終えた人は80%近くと高くなっていて、これまでの感染拡大の際とは状況が異なりますが、ワクチンを接種した人でも感染するケースもオミクロン株で報告されています。

感染力や感染した場合の重症になりやすさ(病原性)を見極められるまでは、最大限の警戒をするという対応が取られています。

これまでの変異ウイルスとの比較

感染力や病原性など、いま分かっていることをWHOや国立感染症研究所、各国の公的機関などの情報をもとに、ほかの「懸念される変異株=VOC」と比較する形でまとめました。

感染力

オミクロン株はスパイクたんぱく質の変異の数から見ると、感染力が強まっている可能性が指摘されています。

WHOは証拠は限られているとしながらも、オミクロン株はデルタ株より速く感染が拡大しているとしています。

病原性

アメリカ政府の主席医療顧問を務めるファウチ博士は12月5日、アメリカメディアのインタビューで「重症化の度合いはそれほど高くないようだ」と述べる一方で、断定するには時期尚早でさらなる研究が必要だとする考えを示しました。

アメリカのCDC=疾病対策センターは、12月10日に出した報告で、アメリカ国内でのオミクロン株の症例は多くが軽症だとしています。

感染したあと重症化するまでの間には一定の時間があるほか、ワクチンを接種済みの人やこれまでに感染したことのある人にオミクロン株が感染することで軽症となっている可能性もあるとして、病原性は今後さらに症例が増えることで明らかになってくるという考えを示しています。

再感染のリスク

▽『アルファ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは維持、再感染のリスクは従来株と同じか

▽『ベータ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る、ウイルスを攻撃する細胞の働きは維持

▽『ガンマ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きはやや減る

▽『デルタ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る

▽『オミクロン株』
→再感染のリスクが上がっている可能性があるという報告も

WHOでは、ワクチンや過去の感染によって免疫を持つ人でも再感染しやすくなる変異があるとしています。

南アフリカでは、再感染のリスクが11月にはそれ以前と比べて2.39倍になっているとする研究報告があるということです。

WHOはデータがさらに必要だとしていますが、初期段階のデータでは再感染のリスクは上がっているとみられるとしています。

ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)

▽『アルファ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ベータ株』
→発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ガンマ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『デルタ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず
(感染予防・発症予防は下がるという報告も)

▽『オミクロン株』
→中和抗体低下・発症予防効果低下の報告も
(※重症化予防効果あるとの見方も)

オミクロン株について、ワクチン接種を完了した人でも感染しているケースが報告されています。
WHOは初期段階のデータからはワクチンの効果は下がっている可能性があるとしています。

ワクチンの効果に関する研究結果が徐々に公表され始めています。

南アフリカのアフリカ健康研究所は、オミクロン株に対するワクチンの効果について、ファイザーのワクチン接種を受けた12人の血液を使って分析した結果、中和抗体の値が従来のウイルスに対する場合と比べておよそ40分の1になったと発表しました。

第三者の専門家からの査読を受けていない段階の発表ですが、発症予防効果は、従来のウイルスに対する場合と比べて22.5%にとどまるとする試算も示しました。

この中で、新型コロナウイルスに感染したあとワクチン接種を受けた6人のうち5人は中和抗体の効果が比較的高かったということで「3回目の追加接種を受けることなどで中和抗体の働きを高めたり、重症化を防ぐことができたりする可能性が高い」としています。

ファイザーとともにワクチンを開発したビオンテックのCEOは、アメリカメディアのインタビューで、オミクロン株に対しても重症化を防ぐ効果がある可能性が高いという見解を示しています。

アメリカの製薬大手ファイザーなどは12月8日、オミクロン株に対するワクチンの効果について、3回目の接種を行うことで中和抗体の値が2回接種の場合の25倍になり、従来のウイルスに対する場合と同じ程度に高まったとする初期の実験結果を示しました。

また、南アフリカの医療保険会社は12月14日、ファイザーのワクチンを2回接種したことで入院を防ぐ効果は、デルタ株の流行中には93%だったのに対し、オミクロン株の流行中でも70%を維持していたとする分析結果を発表しています。

治療薬の効果

オミクロン株の変異のため、重症化を防ぐために感染した初期に投与される『抗体カクテル療法』に影響が出ないか懸念されています。

一方で、ウイルスの増殖を防ぐ仕組みの飲み薬には影響が出ないのではないかと考えられています。

またWHOは、重症患者に使われる免疫の過剰反応を防ぐ薬やステロイド剤は、引き続き効果が期待されるとしています。

感染経路

新型コロナウイルス感染経路は、飛まつや「マイクロ飛まつ」と呼ばれる密閉された室内を漂う小さな飛まつが主で、ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染も報告されています。

オミクロン株について感染力が強まっているおそれはありますが、同様の感染経路だと考えられています。

専門家「市中感染が起きることを前提に対策を」

厚生労働省の専門家会合のメンバーで、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「過去の変異ウイルスを見ると検疫で初めて確認されてから1か月くらいで、国内での市中感染例が見つかっている。オミクロン株についても、例えばきょう国内での感染が見つかっても全く不思議ではない。国内で市中感染が起きることを前提に、感染者が見つかった場合、濃厚接触者の調査をどの範囲まで広げるのかや現在の厳しい水際対策をどうするのかなど、対策を切り替える方法を検討しておく必要がある」と指摘しました。

そのうえで「年末年始にかけて忘年会などで人との接触が増えたり、帰省などで人の移動が増えたりすると見込まれていて、こうした中でオミクロン株が入ってくると、急激な拡大につながるおそれもあると考えている」と話しています。

専門家 3回目接種「重症化を抑える働きあるのでは」

また、ウイルスやワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「オミクロン株は細胞の表面にある突起のスパイクたんぱく質に変異が30あっても、スパイクたんぱく質全体からすると3%に限られ、ワクチンが全く効かなくなるというほどではない。感染を抑える効果は多少落ちる可能性が高いが、重症化を予防する効果はそれほど落ちないと思う。3回目の接種をすることで、抗体のレベルを上げるだけではなくて、ウイルスを攻撃する細胞による免疫の能力も高いレベルにすることができる。ウイルスに変異があり、抗体が逃れるかもしれないが、広い範囲の変異に対しても対応できる細胞による免疫が誘導されて、それが高いレベルで維持できることによって、重症化を抑える働きがあると考えられる」と話しています。

これまでと同様の対策を

オミクロン株は、
▽デルタ株より感染力が強く、病原性も高い変異ウイルスなのか、
▽感染力は強いものの、重症化の割合は低い変異ウイルスなのか、
2021年12月中旬の段階でも見極められていません。

オミクロン株の起源は分かっておらず、国際的なウイルスの監視網が届いていないところで発生したと考えられています。

現在、感染力や病原性について世界中で研究が進められていて、WHOや国立感染症研究所などが情報を更新していく予定です。

私たちができる対策はこれまでと変わりません。

厚生労働省の専門家会合も、ワクチン接種の推進に加えて、マスクの着用、消毒や密を避けるといった基本的な対策を続けるよう呼びかけています。