難民問題を考えよう

難民問題を考えよう
紛争や迫害によって故郷を追われる人たち。「難民」や「国内避難民」は、2020年末の時点でおよそ8240万人にのぼっています。今回は、難民について考えます。

問題に挑戦!

まずは難民に関わる入試問題を見てみましょう。
問題
1950年に設立され、難民や避難民を国際的に支援し、難民問題の解決に向けて働きかけている国際連合の機関として正しいものはどれですか。次から1つ選び、記号で答えなさい。
ア WHO
イ ILO
ウ UNHCR
エ UNCTAD
(富士見中学校 2020年 改題)
正解は「UNHCR」、日本語だと「国連難民高等弁務官事務所」です。

UNHCRとは

どのような活動をしているのか、UNHCR駐日事務所副代表の川内敏月さんに聞きました。
川内さん
「例えばイメージしやすいのは、難民キャンプの中で、水、食料、衣類を配ったりしている。そればかりではなく、働いて収入を得る機会を確保していく、子どもたちが教育を受ける、その前提として、その国あるいは場所に、その人がいるという記録・書類を作っていく。非常に多岐にわたる仕事になってきます」
世界各地で難民や避難民の数は増え続けています。
内戦が続く中東のシリアや、深刻な経済の落ち込みが続く南米のベネズエラ、タリバンが再び権力を握ったアフガニスタン、そしてミャンマーでは、イスラム教徒の少数派、ロヒンギャの人たちがミャンマー軍の迫害から逃れ、多くが隣国バングラデシュの難民キャンプでの生活を余儀なくされています。
こうした人たちを支えるため、UNHCRでは135か国で1万2000人を超える職員が活動しています。
日本でUNHCRの教育支援を受けている、ロヒンギャのカディザ ベゴムさんです。難民に認定された夫と暮らしています。
カディザさん
「私は『日本に来て大学に行きます』みたいな夢をバングラデシュにいたころから持っていました」
カディザさんはUNHCRの「難民高等教育プログラム」という、難民が大学や大学院に通うための奨学金制度を受けることができました。
その制度に支えられ大学を卒業し、現在は大学院で難民の権利と課題について研究しています。
カディザさん
「教育を受けて彼らのことを助ける、助けられるところまで行くために自分が頑張らないといけないと思っています」

UNHCRの歴史

1951年に採択された難民条約で、難民とは、政治的な迫害などにより国境の外に出てきた人と定義されました。このため、UNHCRは国外に逃げた人たちを保護の対象にしてきました。
その方針が大きく変わったきっかけが、1991年の湾岸戦争です。
戦争を機に、イラク国内で弾圧を受けていたクルド人が蜂起。制圧に出たイラク軍から逃れようとしましたが、大勢の人が国境を越えられず、行き場を失いました。
そのとき、大きな決断を下したのが、当時のUNHCRのトップ、国連難民高等弁務官の緒方貞子さんでした。
議論の末に方針を転換。
国内で避難するクルド人たちの保護と支援に乗り出したのです。
緒方さん
「ルールを変えることにはなるけど、基本原則の根幹は同じなのではないかと。つまり難民を保護するということですよね。生命の安全を確保すると」
国内避難民 4800万人
難民    2640万人
(2020年 UNHCRまとめ)
2020年末の時点で、世界の国内避難民の数は、国外に逃れた難民の数を大幅に上回っています。
川内さん
「緒方さんが、こういう事態に、私たちがきちんと対処できる土台を作ってくれたことは、非常に大きな意義があった」

受け入れる側に必要な姿勢とは

日本の私たちも含め、難民を受け入れる側にはどんな姿勢が必要でしょうか。
川内さん
「私が実際にフィールドでUNHCR職員として多くの難民に会ってきたわけですが、私たちと同じように、家族との幸せな生活を望んだり、仕事のことで悩んでいたり、目標を持って勉強に励んでいたり、私たちと全く変わらないことを考えたり行ったりしている人たちなんです。社会の一員になり得る人たちなんだと考えて受け入れるのが重要ではないかと思います」
日本でも難民条約に基づいて難民を認定していますが、認定率は、2020年は1%程度で欧米に比べて基準が厳しいという指摘があります。
2021年7月、難民認定制度の改善に向けて、UNHCRと出入国在留管理庁は覚書を交わしました。
川内さんは、まずは日本でどのように難民審査が行われているのか、正確に理解することが重要で、協力して取り組んでいきたいと話していました。
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