アメリカで竜巻 5州で死者 専門家 “スーパーセルで発生か”

アメリカ南部や中西部の6つの州で相次いで発生した竜巻で、これまでに5つの州で死者が確認されるなど被害は広範囲に及んでいて、行方不明者の捜索や救出活動が懸命に行われています。

アメリカでは、南部や中西部の6つの州で10日夜から11日にかけて竜巻が相次いで発生し、各地で建物が倒壊するなど大きな被害が出ました。

このうち南部ケンタッキー州では、ろうそく工場が倒壊し、当時、中にいた従業員などおよそ110人の多くががれきの下に閉じ込められたと見られています。

周辺を上空から撮影した映像では、広い範囲にわたって住宅が原形をとどめないほどに壊れ、街のいたるところにがれきが散らばっている様子が分かります。

ケンタッキー州のベシア知事は11日、竜巻による被害が出た地域は州内だけで320キロ以上にわたるとした上で「死者は100人以上になることも考えられる」と述べました。

また、
▽隣接する中西部イリノイ州でもIT大手アマゾンの倉庫が大きく壊れてこれまでに6人の死亡が確認されたほか、
▽同じ中西部のミズーリ州、
それに南部の
▽テネシー州と
▽アーカンソー州でも死者が確認されたということです。

被害の全容は分かっていませんが広範囲に及んでいて、行方不明者の捜索や救出活動が懸命に行われています。

アマゾンの倉庫 6人死亡45人救出

中西部イリノイ州のエドワーズビルでは、アメリカのIT大手、アマゾンの倉庫が大きく壊れました。

この倉庫は、ミズーリ州セントルイスから東に30キロほど離れた場所にあり、倉庫は屋根が崩れ落ち、壁も100メートルほどにわたってなくなっています。

地元の警察当局などによりますと10日の午後8時38分に最初の通報を受けたということで、これまでに45人が救出された一方、少なくとも6人の死亡が確認されたということです。

11日は、救出作業とともに重機でがれきを取り除く作業が進められ、夕方になっても慌ただしく重機が運ばれたり、壊れた配送車を撤去したりする作業が続けられていました。

倉庫からおよそ3キロ離れた場所に住んでいるという60代の夫婦は「昨夜はすごい雨と風で、竜巻を知らせるサイレンが鳴ったので自宅の地下室に急いで避難した。とても怖い思いをした。こんな風に建物を破壊するなんて、本当にひどい」と話していました。

物流の拠点を直撃 供給網の混乱広がるおそれ

今回相次いだ竜巻は、クリスマスに向けた年末商戦で荷物の配送が増える物流の拠点を直撃しました。

中西部イリノイ州に物流倉庫があり、少なくとも6人の従業員が死亡したIT大手の「アマゾン」は「竜巻の犠牲になった従業員に心から哀悼の意を表し、被災者への支援を続けていく」というコメントを出しました。

地元メディアによりますと、アマゾンは2016年にイリノイ州エドワーズビルに2つの物流倉庫を開設し、注文を受けた商品を配送するまでの間、保管していたということです。

クリスマスに向けた商品の配送などに対応するため、多くの従業員が働いていたと見られますが、地元の消防は、竜巻が直撃した当時は、ちょうど従業員のシフトの交代が行われているタイミングだったため、倉庫にいた人数は正確に把握できていないとしています。

また、物流大手の「フェデックス」は、本社がある南部テネシー州メンフィスの物流センターが大きな被害を受けたと発表しました。

死傷者の有無などについては明らかにしていませんが、このセンターはアメリカ南部における主要な拠点となっていて、今後、荷物の配送に遅れが生じるおそれがあるとしています。

配送が遅れる日数などの情報については、ホームページを随時、確認してほしいとしています。

アメリカでは新型コロナウイルス後の経済の再開に伴ってサプライチェーン=供給網の混乱が広がっていますが、今回の竜巻でこうした状況にさらに拍車がかかるおそれもあります。

専門家「スーパーセル」によって起きたか

アメリカ南部や中西部の竜巻について、発生のメカニズムに詳しい専門家は「スーパーセル」と呼ばれる巨大な積乱雲によって多くの竜巻が起きたとみられると指摘しています。

「スーパーセル」は非常に強い上昇気流によってできる巨大な積乱雲で、空気が回転しながら上昇し建物に大きな被害を及ぼすような破壊力の強い竜巻をいくつも引き起こすのが特徴です。
竜巻の発生メカニズムに詳しい防衛大学校の小林文明教授は今回、アメリカ南部や中西部の広範囲で竜巻の被害が相次いだことに注目し「スーパーセルによって複数の竜巻が次々に生み出されたとみられる。スーパーセルは巨大なためなかなか衰弱しないのが特徴で、今回も長時間にわたって州をまたいで移動し、広い範囲に被害がでた」と指摘しました。

アメリカ南部や中西部では南のメキシコ湾から湿った空気が流れ込み、西にあるロッキー山脈を越えて乾いた風が吹くため、低気圧が発達する際に強い上昇気流が発生しやすく、過去にも竜巻による被害が相次いでいるということです。

一方、竜巻の発生は春先が多く、12月など冬の時期に今回のように多くの竜巻が発生するのは非常に珍しいということです。

小林教授は「この時期にこれだけ多くの竜巻が起こるとは現地でも想定していなかったのではないか。発生が夜間だったため、竜巻に気づきにくく、地下シェルターなどへの避難も難しかったと予想される」と話していました。

また、小林教授は気象条件によっては日本でも同じような竜巻が発生するおそれはあるとした上で「日本では、低気圧が急速な発達に合わせて冬でも竜巻が起きるので、決してひと事と思わないでほしい。急発達する低気圧が近づく際には、ベランダにあるものを家の中に入れるなど備えをするほか、雷の音が聞こえたり冷たい風が吹いてくるなどしたら竜巻が起こるサインと思って気をつけてほしい」と話していました。

バイデン大統領「歴史上最大規模の竜巻被害」

バイデン大統領は11日、滞在先のデラウェア州で今回の竜巻被害について「状況を注視している。おそらく歴史上最大規模の竜巻被害のひとつだ。大切な人が亡くなったり、安否がわからなくなったりしている人々のことを思い、祈っている。これは悲劇だ」と述べました。

そして、被害を受けた地域の州知事らと電話で話したとして「知事らにも伝えたが、連邦政府として支援のためにできることは何でもする」と述べたうえですでにFEMA=連邦緊急事態管理庁の担当者らが現地を支援するための対応にあたっていると説明しました。

また、バイデン大統領は、大きな被害を受けたケンタッキー州について、非常事態宣言を承認したことを明らかにしたうえで、救助活動などに支障が出ない時期に、被災した地域を訪れたいという考えを示しました。

北米トヨタ 被害の報告なし

北米トヨタによりますと、南部ケンタッキー州ジョージタウン市にある自動車などを生産する工場について、現地時間11日の昼すぎの時点で竜巻による被害の報告は入っていないということです。

この工場ではおよそ8000人の従業員が働いていて、会社では、被害が出ていないか確認を進めたうえで、週明け13日から操業するかどうか判断するとしています。

これまでも竜巻による被害

アメリカでは南部を中心に、これまでも竜巻による被害が相次ぎ多くの死傷者が出ています。

去年3月には、テネシー州で、大規模な竜巻が発生して20人以上が死亡したほか、4月にはミシシッピ州で少なくとも11人が死亡するなど被害が相次ぎました。

おととし3月には、アラバマ州で相次いで竜巻が発生し、住宅が倒壊するなどして20人以上が死亡しました。

そして2011年4月には、アラバマ州やミシシッピ州など南部の広い範囲で発生した竜巻で300人以上が死亡したほか、その翌月には中西部ミズーリ州で100人以上が死亡するなど、多くの犠牲者を出しています。