「田中前理事長と永久に決別」日本大学が強制捜査後初の会見

学校法人トップの理事長やその側近の理事が逮捕される異例の事態となっている日本大学は、東京地検特捜部の強制捜査から3か月余りたった10日、初めてとなる記者会見を開き、加藤直人理事長は「田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除する」と宣言しました。

日本大学では理事長だった田中英壽容疑者(75)が先月、所得税法違反の疑いで逮捕されたほか、側近で理事だった井ノ口忠男被告(64)が付属病院の事業をめぐって大学からあわせて4億円余りを流出させた背任の罪で先月までに逮捕・起訴されました。

大学は、一連の事件で東京地検特捜部が最初に強制捜査に乗り出してから3か月余りたった10日、初めて記者会見を開き、加藤理事長は冒頭「前代未聞の出来事で、大学を代表するものとして学生、生徒、保護者の方々に心よりお詫びを申し上げます」と陳謝しました。

「理事会そのものが形骸化」

そのうえで「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除し、今後、大学の業務に携わることは許しません」と宣言し、役員報酬や退職金を一切支払わないと述べました。

また井ノ口元理事が役員を務め、事件の舞台となった子会社の日大事業部について清算を視野に対応することや外部有識者を中心とする「日本大学再生会議」を組織し、大学の将来について検討することを明らかにしました。

この会議は来年1月から議論を開始し、3月に再生に向けた提言をまとめることを目指すとしています。

加藤理事長は、田中前理事長と決別するとした理由について「130年以上の大学の歴史の中で理事長の逮捕という不祥事は初めてだったうえ、田中前理事長が井ノ口元理事の採用を含めてある程度独断で決めていた点を問題視した」と述べました。

一方、田中前理事長の脱税の逮捕容疑について大学の見解を問う質問に対しては、特捜部の捜査が続いていることを理由にコメントしませんでした。

このほか、背任事件が起きた原因としてアメリカンフットボールの問題で理事を辞任した井ノ口元理事が日本大学事業部の役員として迎えられ、絶大な権限を持つようになったことを挙げ、元理事に対しては今後、損害賠償請求を視野に対応していくと述べました。

さらに大学の理事会による事業部の管理監督体制が十分でなく、コンプライアンスも徹底されていなかったとしています。

加藤理事長は理事会について「日大には30人を超える理事がいるが、理事会そのものが形骸化し、報告会のようになっており、互いのチェックを行う場になっていなかった」と述べました。

日本大学をめぐる一連の事件

日本大学ではことし9月、本部や学校法人のトップだった田中前理事長の自宅などが東京地検特捜部の強制捜査を受けました。

その後、前理事長の側近の元理事、井ノ口忠男被告が背任の罪で逮捕・起訴されます。

先月29日には田中前理事長本人も脱税の疑いで逮捕される、極めて異例の事態になっています。

このうち背任事件では、井ノ口元理事と大阪の医療法人の前理事長、籔本雅巳被告(61)が、大学の付属病院の建て替え工事や医療機器納入をめぐって、大学から合わせて4億円余りを籔本前理事長側に流出させ、損害を与えた罪に問われています。

関係者によりますと、井ノ口元理事と籔本前理事長は、流出させた資金の一部をペーパーカンパニーなどを通じて事実上還流させていた疑いがあるということです。

2人は調べに対し「再任祝いや誕生日祝いなどとして、田中前理事長側に合わせて7000万円以上を提供した」などと供述しているということです。

特捜部は、田中前理事長が3年前と去年、籔本前理事長やほかの取引業者などから受け取った現金、合わせておよそ1億2000万円を税務申告せず、5300万円を脱税したとみて、所得税法違反の疑いで捜査を進めています。

田中英壽前理事長とは

田中英壽前理事長は日本大学相撲部出身で、大学の職員となったあとも競技を続け「アマチュア横綱」など数々のタイトルを獲得しました。

スポーツ界に幅広い人脈を持ち、アマチュア相撲を統括する日本相撲連盟の副会長を現在も務めているほか、平成29年までの4年間はJOC=日本オリンピック委員会の副会長も務めました。

大学の職員としては、各運動部の運営を束ねる保健体育審議会の幹部などを経て、13年前の平成20年に学校法人日本大学の理事長に就任しました。

当時は総長が経営の実質的なトップでしたが、就任から4年後の平成24年、総長のポストを廃止し、理事長の権限が強化されました。

複数の日大関係者は、名実ともに大学のトップとして絶大な影響力を持つようになったと話しています。

日本大学の元理事が付属病院をめぐる背任の罪で起訴されたあとも、公の場で説明をすることはなく、脱税の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたあとの今月1日、理事長の辞任が理事会で承認され、今月3日には理事も解任されました。

日本大学の学生は

10日の記者会見を前に、日本大学の学生たちからは、大学への不信感や大学側に納得のいく説明を求める声が多く聞かれました。

3年生の女子学生は「高い学費を払っているので、私たちの学費が変なところに流れていないか不安な気持ちになります。私たちも大学から説明を受けていないので、今後の再発防止策や改善策も含めて納得のいく説明をしてもらいたいです」と話していました。

3年生の男子学生は「就職活動中なので影響が出ないか不安です。大学側には何も隠さずしっかり事実を話してほしいです」と話していました。

別の男子学生は「新型コロナウイルスの影響で大学の授業もオンラインで行われていて、その分学費を下げてもらえないかと親とも話していた中で起きた事件なので、不信感があります」と話していました。