昨年度 温室効果ガス排出量が大幅減 感染拡大で経済活動が停滞

昨年度、国内で排出された温室効果ガスは11億4900万トンと前の年度を5%余り下回り、比較できる1990年度以降では最も少なくなりました。
新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞し、産業部門を中心に排出量が大きく減少しました。

環境省によりますと、昨年度、国内で排出された温室効果ガスは、速報値で、二酸化炭素に換算して11億4900万トンでした。

前の年度に比べて6190万トン、率にして5.1%減少し、1990年度に排出量の算定が始まって以来、最も少なくなりました。

排出量の減少は7年連続で、減少幅はこの期間で最も大きくなりました。

「脱炭素」の取り組みも広がっていますが、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が大きな要因と見られます。
部門別では、
▽工場などの産業部門が3億5300万トンで前の年度から8.3%の減少、
▽自動車などの運輸部門は1億8500万トンで10.2%の減少と大幅に減りました。
一方、
▽家庭部門は、外出自粛やテレワークの拡大などの影響で1億6700万トンと4.9%増加しました。
政府は、2030年度までに2013年度と比べて、排出量を46%削減することを目標に掲げていて、昨年度は18.4%の削減でした。

環境省は、今年度の排出量は経済活動の再開に伴って増加することも見込まれるとしていて、「脱炭素社会」の実現に向けて、各部門の取り組みが課題となりそうです。

脱炭素に向けた電源構成は…

脱炭素社会の実現に向けて、とりわけ重要なのが日本国内で排出された二酸化炭素のおよそ4割を占める発電部門での削減です。
資源エネルギー庁によりますと、
昨年度の電源構成は
▽石炭発電の割合が31%、
▽天然ガスが39%、
▽石油などが6.3%と化石燃料が7割以上を占めています。

政府は、脱炭素を達成するためにこうした電源への依存度を引き下げ、発電時に二酸化炭素を出さない電源の導入を拡大する方針です。

具体的には、
昨年度の電源構成で
▽19.8%だった太陽光や風力など再生可能エネルギーの割合を2030年度には「36%から38%」に、
▽3.9%だった原子力を「20%から22%」にそれぞれ引き上げることを目指すとしています。

業績回復と排出抑制の両立を目指して

新型コロナウイルスで落ち込んだ経済活動が回復すれば温室効果ガスの排出が増えることも見込まれますが、企業の中には、業績回復と排出抑制の両立を目指す動きも出ています。

岐阜県大垣市の会社では

岐阜県大垣市にある衣料品の生地の染色を手がける会社もその1つです。

染色の際には60度以上に加熱した大量の水に生地を、長い場合で半日程度つけておく必要があるほか、生地を乾燥させる工程もあって、熱や電気を多く消費します。

この会社では、新型コロナウイルスの影響で去年の受注量は前の年より2割以上落ち込み、それに伴って温室効果ガスの排出量も2割ほど減少しました。

脱炭素の機運が高まる中、会社では、ことしは業績をコロナ前まで回復しつつ排出量を増やさないことを目指し、今後は2030年の排出量を2018年と比べて半減させる目標に掲げました。

目標実現のために…

目標の実現のため、生地を乾燥させる設備を改修し、これまでは燃料の一部に灯油を使っていましたが、灯油を使わずにすべてバイオマスの燃料で済むようにしました。

また、電力の契約を見直し、工場などで使う電力の1割を再生可能エネルギー由来に切り替えました。

こうした取り組みの結果、11月までの受注量が去年の同じ時期に比べて17%近く伸びるなかで、温室効果ガスの排出量は2%ほど削減できたということです。

また、製造過程で環境に配慮した商品として、取引先からの関心も高まっているということです。

社長「温室効果ガスの削減を経営の中心に」

「艶金」の墨勇志社長は、「温室効果ガスの削減を経営の中心に据えたことに手応えを感じています。今後、排出量の少ない生地をアパレル会社が採用する流れが来るはずなので、チャンスとも捉えています。毎年、積極的な対策を取らないと目標は実現できませんが、再生可能エネルギーの導入など努力を重ねていきたいです」と話していました。

住宅の断熱性能を上げる

家庭部門の排出削減に向けて国や自治体が呼びかけているのが、住宅の断熱性能の向上です。

家庭部門の排出量のうち、住宅の冷暖房によるものが20%余りに上るとされるためです。

住宅の床や壁、天井に断熱材を入れる改修などもありますが、室内の暖房の熱が外に漏れる原因の半分を占める「窓」の改修が比較的、手軽で効果的だとされています。

窓を断熱化した住宅では…

横浜市港南区に住む59歳の会社員の男性は、5年前、築およそ20年の戸建て住宅を購入しましたが、窓枠は熱が外に漏れやすいアルミ製で窓ガラスも1枚のものだったため、冬場はエアコンをつけていても底冷えを強く感じていたといいます。

そこで、2年前、自宅の窓を「断熱化」する改修を行い、窓枠を熱が通りにくい樹脂製に、窓ガラスも2枚で間に空気の層があり特殊な薄い金属の膜が張られたものに取り替えました。

メーカーによりますと、窓の改修は工法によっては1か所につき5万円前後からできるということで、男性は国や自治体の補助金を活用しておよそ20か所を140万円ほどの負担で改修したということです。

その直後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出の自粛やテレワークで自宅で過ごす時間が長くなりましたが、冬場の電気代は以前と変わらず、「断熱」の効果を感じているといいます。

男性は、「冬場は寒いと感じていましたが、だいぶ快適になりました。なるべくエネルギーを使わずに済むということで、家庭でも、環境に少しは貢献できるのかなと思います。感染拡大の前に改修しタイミングもよかったです」と話していました。

リフォーム会社「窓の改修を積極的に提案」

改修を行ったリフォーム会社の巾竜介社長は、「暑さ寒さは窓だということで注目されていて、客から問い合わせを受けるケースも増えている。まだ多くの住宅でアルミの窓枠などが使われているので、窓の改修は積極的に提案しています」と話していました。

植物由来の新しい航空燃料で脱炭素へ

脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、国土交通省は、2030年までに、国内の航空会社が使う航空燃料の10%を、植物由来などの新しい燃料に置き換えることで、二酸化炭素の排出量を削減する目標を打ち出しました。

これは、国土交通省が10日、外部の有識者などで作る検討会に示しました。

それによりますと、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、2030年までに、国内の航空会社が使う航空燃料の10%を、化石燃料ではなく、植物などが由来の新しい燃料に置き換えることを目指すとしています。

こうした燃料は、「持続可能な航空燃料」を意味する英語の頭文字を取って、「SAF」と呼ばれ、世界的な需要の拡大が見込まれていますが、世界の航空燃料全体に占める生産量の割合は、0.03%未満にとどまっているということです。
国土交通省は、国産の「SAF」の供給体制を整えて普及させることで、二酸化炭素の排出量の大幅な削減につなげる方針で、今後、官民の協議会を設置し、具体策を検討することにしています。

山口環境相「楽観できない」

山口環境大臣は、10日の閣議のあとの記者会見で「7年連続で減少しているが、昨年度は新型コロナウイルスの影響もあるものと考えられ、結果を楽観できない。数値だけ見れば、2030年度に46%削減、さらに50%の高みを目指すという目標につながりそうな気もするが、削減に向けた行動を緩めずにしていかなければならない」と述べました。

専門家「リバウンド対策を支援する政策求められる」

気候変動対策に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、「排出量の減少の要因は、再生可能エネルギーの導入がある程度進んだこともあるが、新型コロナウイルスという特殊事情の影響が大きいと思われる。今後、経済活動の回復に伴って産業・運輸部門の排出量が元に戻る『リバウンド』が起きたり、テレワークなど働き方の変化によって排出量が増加した家庭部門で対策が進まなかったりする場合は、国内の排出量が増加するおそれがある」と指摘しています。

そのうえで、「いま日本企業の多くが『脱炭素』に向けた削減目標を掲げて対策を進めているので、こうした対策を支援する政策が求められる。また、住宅の『断熱』は健康な住環境をつくりながら排出削減を行えるというメリットもあるので、それを伝えながら対策を進める必要がある。さらに今後、再生可能エネルギーの導入をはじめ、電力インフラなどの社会基盤そのものを『脱炭素』に変えていくことが産業と家庭の両方から削減を進める大きなカギになると思う」と話していました。