“無料”求人サイトのトラブル相次ぐ 契約後に高額請求

新型コロナウイルスの感染状況が改善し、経済活動が再開する中、人手不足に悩む中小企業などが「インターネットのサイトに無料で求人情報を載せられる」と勧誘を受け、契約したあと、高額な料金を請求されるトラブルが相次いでいます。
対策にあたる弁護士は「高額な請求があった場合は支払う前に相談してほしい」と注意を呼びかけています。

沖縄弁護士会の高良祐之弁護士によりますと中小企業などから「インターネットのサイトに無料で求人情報を載せられると勧誘され、契約したら高額な請求書が送られてきた」といった相談が、各地の弁護士からの情報も合わせると、先月だけでおよそ30件寄せられているということです。

こうした勧誘の特徴として「ハローワークの求人情報を見た」と売り込みの電話があることや、“無料”を強調して契約を持ちかけ、一定の期間がすぎると自動で契約が更新されて料金がかかる仕組みや解約する方法について詳しい説明をしないことなどがあげられるということです。

そのまま契約すると、数週間後に掲載料として十数万円から数十万円を請求され、支払いを執ように迫られるなどトラブルになるということです。

こうした勧誘は3年ほど前から急増し、一時は減少傾向になったものの、新型コロナの感染状況が改善し、経済活動が再開する中、人手不足に悩む中小企業をねらって再び目立つようになっているということです。

求人広告を扱う会社の業界団体でも、一部の業者によるこうした勧誘が増えているとして、ホームページで改めて注意を呼びかけています。

高良弁護士は「“早く人手を確保したい”“無料ならとりあえずやってみようか”という気持ちに相手はつけ込んでくるので、契約する前に“無料”の仕組みをよく確かめることが大切だ。高額な請求をされトラブルになった時は、支払う前に弁護士に相談してほしい」と話しています。

トラブルにあった企業の代表「安易に契約してしまった」

実際にトラブルにあった企業の代表は、人手不足の中で“無料”という、うたい文句にひかれ、安易に契約してしまったと振り返ります。

近畿地方で福祉施設を経営する女性は、来年から新たな施設を開業するため、ことし9月中旬、ハローワークにスタッフの求人を出しました。

すると、1週間ほどたって求人情報のサイトを運営しているという業者から「ハローワークで求人を出しているのを見た。無料で求人を出さないか」という勧誘の電話があり、それから数日の間に複数の業者から同じような勧誘の電話が相次いでかかってきたということです。

女性は、最初に電話をかけてきた業者と契約することにし、相手からは「3週間無料なのでそれ以降、必要なければ連絡ください」などと告げられたということです。

この際、3週間がすぎると自動で契約が更新され料金がかかることや解約する方法について詳しい説明はなかったといいます。

女性は、申込書に「解約は無料のキャンペーン期間中にメールかFAX、郵送で申し出を」と記載があるのに気付き、期間中にFAXで解約の意思を伝える書面を送りました。

ところが、数日後の10月末、掲載料として17万円の支払いを求める請求書が、突然手元に届いたということです。

女性はあわてて業者に電話をしましたが、全くつながらず、メールで連絡しても「解約のFAXは届いていない」などと返信があるだけで、その後も再三にわたって電話で支払いを迫られる状況が続いたといいます。

女性は「当時はハローワークにしか求人を出しておらず、違う媒体にも広げたいと考え、“無料”という手軽さから契約してしまった。いま思い返してみると巧妙な手口だと思う」と話していました。

「内容証明」で解約を伝えることが有効

無料をうたう求人広告サイトのトラブルに詳しい沖縄弁護士会の高良祐之弁護士は、全国各地の500人余りの弁護士と連携して勧誘の特徴などについて情報交換を行う連絡会を立ち上げ対策に取り組んでいます。

こうした勧誘によく見られる特徴の1つとして、無料の期間をすぎると自動で契約が更新され料金がかかる仕組みや解約する方法について詳しい説明がなく、契約の書類を読んでもわかりにくいことがあげられるということです。

企業側が郵送やFAXで解約の意思を記した文書を送っても業者に「届いていない」と主張されたり「無料の期間内に解約に必要な書類を郵送する」と説明を受けていたのに、その書類が送られてこなかったりしてトラブルになるケースが多いということです。

対処法としては、郵送する文書の内容などが記録される「内容証明」のサービスを利用して解約する意思を伝えることが有効だとしています。

そのうえで、こうした勧誘によって結ばれた契約は適切とは言えないとして、高額な請求があった場合は、支払う前に各地の弁護士会を通じて消費者トラブルなどに詳しい弁護士に相談してほしいと呼びかけています。

高良弁護士は「利用者のいちばん気になるところは、誤解のないようにちゃんと説明するのが当然だ。必要な説明を十分せず、高額な請求をすれば苦情が殺到するのは当たり前で、これではまっとうな契約とは言えず、支払いを拒否することは十分可能だ」と話しています。