岸田首相が所信表明「コロナに慎重対応 3回目接種は間隔短縮」

岸田総理大臣は6日召集された臨時国会で所信表明演説を行い、新たな変異ウイルス「オミクロン株」など新型コロナに細心かつ慎重に対応すると強調したうえで、3回目のワクチン接種について、できるかぎり2回目との間隔を短縮する考えを表明しました。

先の衆議院選挙後、初めての本格的な論戦の舞台となる臨時国会が6日召集され、岸田総理大臣は、衆参両院の本会議で、所信表明演説を行いました。

この中で岸田総理大臣は、新型コロナについて最悪の事態を想定するとしたうえで「オミクロン株」の感染拡大で外国人の新規入国を原則停止したことに触れ、慎重すぎるという批判はみずからがすべて負う覚悟だとして、新型コロナに細心かつ慎重に対応すると強調しました。

そして、コロナ対策と同時に、一日も早く日本経済を回復軌道に持っていかなければならないと指摘し「危機に対する必要な財政支出はちゅうちょなく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない」と述べ、経済を立て直したあと、財政健全化に取り組む考えを示しました。

3回目のワクチン接種「できるかぎり前倒し」

また3回目のワクチン接種をめぐって「既存ワクチンの『オミクロン株』への効果などを一定程度見極めたうえで、優先度に応じ、追加承認されるモデルナを活用し、8か月を待たずにできるかぎり前倒しする」と述べ、できるかぎり2回目との間隔を短縮する考えを表明しました。

さらに次の危機に備え、国産ワクチンや治療薬の開発・製造に5000億円規模の投資を行うほか、国が主導して危機に対応できるよう地方との連携強化を行うとともに、緊急時に迅速な薬事承認ができるよう法整備を行う方針を示しました。

また、新たな「Go To」事業などの消費喚起策の準備を進める一方、経済社会活動の再開は慎重に状況を見極めるとして、感染が再拡大した場合は、国民の理解を丁寧に求めつつ、行動制限の強化を含め、機動的に対応する考えを示しました。

「新しい資本主義」その具体策は

そして、みずからが掲げる「新しい資本主義」の主役は地方だとしたうえで、デジタルを通じて、人口減少や高齢化などの課題を解決するとともに地域活性化を進め、地方から国全体へボトムアップの成長を実現すると強調しました。

その具体策として、海底ケーブルで日本を周回する「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を3年程度で完成させ、光ファイバーや「5G」を組み合わせ、国内のどこでも高速大容量のデジタルサービスを使えるようにする意向を明らかにしました。

また、今月20日から、マイナンバーカードとスマートフォンを使って、電子化されたワクチン接種証明書を入手できるようにすると表明しました。

このほか、気候変動問題を成長分野へと大きく転換していくため、送配電網や蓄電池への投資を進めるとともに、経済安全保障は喫緊の課題だとして、サプライチェーンの強じん化や、基幹インフラの信頼性確保を進めるため、来年の通常国会に新たな法案の提出を目指す考えを示しました。

分配戦略をめぐっては、民間企業の賃上げを支援するための環境整備に全力で取り組むとして、給与を引き上げた企業の税額控除率を大胆に引き上げる方針を明らかにしました。

また、若者世代や子育て家庭の所得を大幅に引き上げることを目指し、女性の就労の制約となっている制度の見直しや、社会保障による負担増の抑制に取り組む考えを示しました。

外交・安全保障「敵基地攻撃能力含め 現実的に検討」

一方、外交・安全保障をめぐっては、いわゆる「敵基地攻撃能力」も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化するとして、新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、そして中期防衛力整備計画を、おおむね1年かけて策定する方針を表明しました。

北朝鮮については、すべての拉致被害者の1日も早い帰国を実現するべく、条件をつけずに、キム・ジョンウン(金正恩)総書記と直接向き合う決意を重ねて示したほか、中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、共通の課題には協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す考えを示しました。

そのうえで「国民の理解や後押しのある外交・安全保障ほど強いものはない。『国民と共にある外交・安全保障』を進める」と述べました。

また「重要な隣国である韓国には、わが国の一貫した立場に基づき、引き続き適切な対応を求めていく」と述べました。

災害対応「盛り土規制へ 法整備進める」

災害対応では、静岡県熱海市で起きた土石流を踏まえ、これまで規制が及ばなかった区域でも盛り土規制を行うための法整備を進めるほか、豪雨災害への対応として、線状降水帯の予測モデルの開発や観測機器の整備を前倒しして取り組む考えを明らかにしました。

憲法改正「与野党の枠超え 積極的な議論を」

そして憲法改正について、与野党の枠を超えて国会での積極的な議論を期待するとともに、国民の理解をさらに深めることが大事だと指摘し、国会議員が広く国民の議論を喚起していこうと呼びかけました。

松野官房長官「できるだけ丁寧に国民に説明」

松野官房長官は、午後の記者会見で「前回の所信表明演説で示したコンセプトやスローガンを具体化してきた内容を中心に、できるだけ丁寧に国民の皆さんに説明し、岸田総理大臣が考えている政策をしっかりとお伝えすることを主眼としたものだ」と述べました。

そのうえで「特に力を入れて取り組んでいるのが新型コロナ対策だ。足元で感染状況は落ち着いているが、新たな変異ウイルス『オミクロン』によるリスクなど気を抜くことができない状況であり、最悪を想定し、慎重に対応する方針を強調した」と述べました。

そして「政府として、新型コロナでお困りの方の生活を支え、雇用を守り抜いていくとともに、危機に対する必要な財政支出はちゅうちょなく行い、万全を期していくという決意を表したものだ」と述べました。

官房長官 所信表明の引用のことばを解説

松野官房長官は午後の記者会見で、岸田総理大臣が所信表明演説の中で述べた「遠きに行くには、必ず邇(ちか)きよりす」は、儒教の経典からの引用であることを紹介しました。

そのうえで「大きく物事を進めていく際には順番が大切であり、まずは新型コロナ対策にしっかり取り組み、その危機を乗り越えた先に、新しい資本主義の実現を目指すとの趣旨だ」と述べました。

また、同じく所信表明演説で触れた「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」ということばは、アメリカの第35代のジョン・F・ケネディ大統領が、1962年1月の一般教書演説で言及したものであると説明しました。

そのうえで「現状、日本では新型コロナの感染が落ち着いているが、新たな変異ウイルス『オミクロン株』も確認される中、最悪の事態を想定しながら感染拡大に備えるべきという趣旨だ」と述べました。