「あしなが育英会」奨学金利用 高校生の保護者 収入ない27%余

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、病気などで親を亡くした子どもたちの家庭が経済的に苦しい状況にあることが浮き彫りとなりました。
「あしなが育英会」が奨学金を利用する高校生の保護者にことし9月の収入を聞いたところ「収入がない」と回答したのは27%余りに上り、継続した支援が必要だと訴えています。

調査は病気や災害で親を亡くした子どもたちなどを支援する「あしなが育英会」がことし10月から11月にかけて行いました。
育英会の奨学金を利用する高校生の保護者およそ4000人を対象に行い、2648人、66.3%から回答がありました。

それによりますとことし9月の収入を聞いたところ「収入がない」と回答したのは27.6%で前回3年前の調査より7.3ポイント増えました。
またことし9月の月収は手取りで平均10万6485円と3年前の調査より1万561円減っています。
5人に1人が新型コロナウイルスの影響で離職や転職をしたと回答していて働きたくても新しい仕事を見つけることができないという声が多く寄せられました。
またコロナ禍での生活費の確保について複数回答で聞いたところ、
「預貯金や保険を取り崩している」が56.7%、
「子どもがアルバイトをしている」が26.4%、
「子どもに部活動・習い事をやめてもらった」が7.8%、
「子どもに進学を諦めてもらった・進路を変更してもらった」が6.7%などとなっています。
記者会見した「あしなが育英会」の玉井義臣会長は「およそ50年間、支援活動にたずさわってきましたが、これほど悲痛な声が寄せられたのは初めてです。コロナ禍で悩みを相談できる相手がいないという人も多く多くの人に実情を知ってほしい」と話していました。

子どもの進学や将来に悩む声が多く寄せられる

「あしなが育英会」が行ったアンケート調査では新型コロナウイルスの影響が長期化し仕事を失ったり収入が大幅に減ったりしたため、子どもの進学や将来に悩んでいるという声が多く寄せられました。

仕事や経済状況について、大阪の50代の母親は「これから子どもの教育費が1年に200万円近く必要で、借りられるかどうかもわかりません。借りられないと子どもに進学を諦めてもらうしかありません。つらいです」などとつづっています。

宮城県の50代の母親は「コロナのせいで本職の仕事が減り、去年の初めから夜、スーパーの品出しのアルバイトをかけもちでしています。子どもにもアルバイトをしてもらい、なんとか毎月やっている状態です。ことしで遺族年金も終わりです。その後の生活が不安でなりません」としています。

また、子どもが大学受験を控えているという広島県の50代の母親は「コロナにより仕事をやめさせられました。求職はしていますが、どうしたらいいか悩んで体調を崩しました。子どもに悩みを悟られないよう明るくしています」と苦しい胸の内をつづっていました。

宮崎県の40代の母親は「生活保護を申請し、やっと収入は安定しましたが、それ以前に滞納していた家賃や光熱費の支払いが終わるまでは以前と同じように切り詰める必要があります。もうしばらくと思いますが、容赦なく学費の納入期限は迫ってきます。とても厳しいです」と答えています。

3人の子どもを育てた女性「行き場をなくした」

アンケート調査に回答した50代の女性は11年前に夫を病気で亡くしたあと、3人の子どもを1人で育ててきました。

女性は自動精算機の集金やメンテナンスなどを個人で請け負う、業務委託の仕事を続けてきました。
仕事の金額は清掃やメンテナンスを含め1か所あたりおよそ1200円でできるだけ収入を増やしたいと多い時には1日に40か所ほどを回っていました。
仕事は午前4時ごろから午後10時ごろまでとなり、仕事がなくならないよう自分で取り引き先に営業などを行うため休みはほとんどなかったといいます。
仕事の合間に自宅に戻って子どもたちのために食事をつくり、掃除や洗濯などの家事もしてきました。
1か月の収入は手取りで20万円余りで多い時には30万円近くを得ることができましたが3年前にがんが見つかり仕事を減らさざるを得なくなりました。
治療を続けた結果、体調がよくなったため仕事の量を少しずつ元に戻し収入も1か月の手取りで13万円ほどを得ていました。

しかし去年の春以降は新型コロナウイルスの影響でゲームセンターなどでの仕事が大幅に減りことし9月の収入は手取りでおよそ7万円にまで落ち込んでいます。
さらに11月、がんが再発したため仕事ができなくなり収入はなくなりました。

3人の子どものうち、2人の娘はすでに就職をしましたが、高校3年生の息子は大学進学を希望しています。
あしなが育英会からの奨学金は1か月5万円で高校の授業料などにあてています。
息子は大学進学の費用を稼ぐために飲食店のアルバイトを2つかけもちして働いてます。
しかし、それでも足りず、女性は仕事が再開できる見通しが立たないためどのようにして生活費や学費を確保していけばいいのか悩み続けています。
女性は「悩みを言える場所もないし、聞いてくれる相手もいない。これからは自分の治療費もかかりますし、治療が終わった後も自分の体がどこまで動くか分かりません。母子家庭のうえ、親族もいないため保証人を立てられず、銀行などからお金を借りることもできないので『行き場をなくした』と感じることも多いです。自分だけではどうすることもできない家庭があることをもっと知ってほしいし、支え合える社会になってほしい」と話していました。

今年度の奨学金利用は2018年度の1.5倍

新型コロナウイルスの影響が続く中「あしなが育英会」の奨学金を利用する大学生や高校生などは今年度は8325人で3年前、2018年度のおよそ1.5倍に増えています。
今年度に交付される奨学金はこれまでで最も多い63億円に上る見込みです。

あしなが育英会では毎年、春と秋の全国一斉の街頭募金をはじめ、寄付の呼びかけや奨学金の返還などであつめた資金を学生への奨学金や子どもたちの交流活動などにあてています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国一斉の街頭募金は昨年度・2020年度とことしの春は中止を余儀なくされました。
このため緊急時のための積立金を昨年度と今年度で合わせて40億円を取り崩したということです。

あしなが育英会は奨学金の申請が増え続けていることや感染状況が落ち着いていることを踏まえ、街頭での募金活動を再開し、12月11日は東京と金沢市で。12日は札幌市や名古屋市、福岡市など10か所で募金を呼びかける予定です。
きょうの会見には街頭で募金を呼びかける大学生も出席し、奨学金を利用する大学4年生の堀川琉さんは「生活が苦しい子どもたちや保護者の声を広く伝えて支えてくれる人を少しでも増やしたい」と話していました。