中国とラオス結ぶ鉄道開通 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」

中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要プロジェクトの1つとされる、中国南西部と東南アジアのラオスの首都を結ぶ鉄道が開通しました。
中国が東南アジアと経済的なつながりを深め、一段と影響力を強めていくことが予想されます。

この鉄道は、中国南西部雲南省の昆明と隣国ラオスの首都ビエンチャンの間およそ1000キロを結びます。

2015年から続いてきた工事が終わり、3日に式典が行われ、オンラインで出席した中国の習近平国家主席とラオスのトンルン国家主席が鉄道の開通を宣言しました。

鉄道は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要プロジェクトの1つとされ、将来的にはタイ、マレーシア、そしてシンガポールまで結ぶ構想もあり、中国が東南アジアとの経済的なつながりを深め、一段と影響力を強めていくことが予想されます。

一方で、世界銀行などによりますと、ラオス国内の区間、およそ420キロの総事業費、59億ドルのうち、7割を中国が、残りの3割をラオスが負担していて、ラオスはその大半を中国の政府系金融機関からの借り入れでまかなっています。

内陸国のラオスとしては、初の長距離鉄道が経済発展を後押しすると期待を寄せていますが、多額の債務を返済できなくなり権益の譲渡などを迫られる、いわゆる「債務のわな」に陥る可能性も指摘されています。

急速に深まる関係 中国の存在感 警戒する声も

ラオスは隣国の中国と、経済を中心に急速に関係を深めていて、JETRO=日本貿易振興機構によりますと、中国との貿易総額は、2010年と2020年を比較すると3.5倍に増えています。

また、不動産や農業、鉱山開発などへの投資が相次いでいて、ラオス政府に届け出のあった中国からの直接投資の金額は、去年1年間で82億ドル、日本円でおよそ9300億円で、海外からの投資の7割以上を占めています。

ラオス国内には、中国に農作物を輸出する中国資本の農園も相次いでつくられています。

ラオスの首都ビエンチャンにあるバナナ農園では、300人以上のラオス人が中国に輸出するバナナを栽培しています。

新型コロナウイルスの感染拡大で、隣国タイなどへの出稼ぎができなくなったことをきっかけに、農村部から家族連れで移り住んで働く人も増えています。

妻とともに去年から、この農園で働く37歳の男性は「ふるさとにいても仕事はない。ここでの仕事は、そこまで大変ではないし、暮らしはよくなった」と話していました。

去年1年間の収入は日本円で30万円ほどで、日系の製造業で働く作業員の基本給と、ほぼ同じ水準だということです。

農園を経営する中国人の56歳の男性は「ラオスは中国から近く、質のよいバナナを育てるのにも適しているし、ラオス人もよく働いてくれる」と話していました。

また、ビエンチャンの中心部には、中国人が経営し、中国語の看板を掲げる店が数多く建ち並んでいるほか、一部の道路では、中国語の標識なども設置されています。

こうした高まる中国の存在感を警戒する声も一部では出ていて、ことし2月には、地元の新聞が「ラオスは外国からの投資によって発展しているが、建設現場や投資の現場でラオスのアイデンティティーを考慮していない看板を掲げるなど、不適切なものがある。ラオス人は自分たちの独立性や主権を大事にしなければならない時期に来ている」とする記事を掲載しています。

ラオスの膨らむ債務 大部分が中国からの借り入れ

ラオスではインフラの建設が進む一方で、政府の借金にあたる公的な対外債務が膨らんで財政悪化への懸念が高まっています。

ラオスの中央銀行によりますと、政府が海外から行った借金にあたる公的対外債務の残高は、去年末の時点で106億ドル余りに達しました。

前の年より6.7%増加し、残高はGDP=国内総生産比で55%まで上昇しました。

インフラの建設に必要な資金が増えているところに新型コロナウイルスの感染拡大が加わって、財政の悪化が続いています。

このため、大手格付け会社の間では、ラオスが発行する国債の信用度を示す格付けを引き下げる動きが去年相次ぎました。

このうち「フィッチ・レーティングス」は、相当重大な信用リスクがあるとする「CCC」に格下げしたうえで、ラオスでは債務返済に充てられる外貨準備高が13億ドルとなっているのに対し、2021年からの4年間に毎年11億ドルの債務が返済期限を迎えるとして「厳しい債務の状況に直面している」と指摘しました。

大部分は中国からの借り入れとされるうえ、アメリカの民間の調査機関は、ラオス政府が公表していない中国からの、いわゆる隠れ債務が存在するとも指摘しています。

専門家「中国に依存し 抜け出せない状態に」

ラオスの現状に詳しい、JETROアジア経済研究所の山田紀彦研究員は「内陸国のラオスは、海にアクセスする物流ルートを確保し、いかに輸送コストを低下させるかが課題だったので、鉄道の建設は悲願だった」とした一方で「農作物などが中国に輸出しやすくなるので、一段と経済的な関係が深まる。鉄道によって、ラオスがこれまで以上に中国に依存し、抜け出せないほどの状態になっていく」と指摘しています。

そのうえで、「ラオスは中国の資金に依存しながらの経済発展と、ASEAN諸国などとの関係のバランスをどうとっていくか、課題を抱えることになる。日本は、中国に資金面で対抗していくのは難しいが、今回の鉄道をラオスが生かせるように、鉄道に関連するインフラの整備などを支援していくことができると思う」と話していました。

東南アジア各国を取り込みたい 中国の思惑

中国は、ラオスとの間を結ぶ鉄道について、巨大経済圏構想「一帯一路」の象徴的なプロジェクトと位置づけています。

中国は、アメリカとの対立が続く中で、東南アジア各国との関係強化に力を入れていて、11月には、ASEAN=東南アジア諸国連合との関係を格上げしています。

経済面でも結び付きを深めていて、中国とASEANのほか、日本などが参加するアジア太平洋地域の自由貿易を推進する枠組みの、RCEP=地域的な包括的経済連携が1月に発効します。

中国としては、東南アジアから人口14億人の市場への輸出が拡大するメリットを強調しています。

中国とラオス間の鉄道には、建設中のタイを縦断する鉄道と連結して、マレーシア、そして最終的にはシンガポールまでをつなげる構想もあり、中国は「一帯一路」のもとで積極的に建設を後押しする姿勢です。

鉄道の開通で経済成長に貢献するとアピールすることで、各国を取り込みたい思惑があり、まずは同じ社会主義国として、つながりが強いラオスとの関係をさらに深めるねらいがあるとみられます。

一方、中国が関わる鉄道構想をめぐって、マレーシアでは、2018年に当時のマハティール首相がマレー半島の東海岸を通る鉄道の建設を、高額な費用を理由に、いったん凍結するなど、当初の計画どおりに進まないケースも出ています。

また、ラオスの財政が悪化する中、鉄道運営の採算がとれない場合、中国は資金を回収できないリスクを抱えることになります。

中国政府は去年「双循環」と呼ばれる国内経済を主体とする新たな発展モデルを打ち出していて、今後どのように「一帯一路」の構想を進めていくのか注目されています。