オミクロン株で揺れる市場 次の「灰色のサイ」は?

金融市場の動きを読み解く「マーケット興味津々」のコーナー。11月29日の週のマーケットを揺さぶったのは、なんといっても新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」でした。不透明感高まるマーケットで、ある動物の存在が話題になっています。それは「灰色のサイ」です。(経済部記者 古市啓一朗)

金融市場は11月26日の朝(日本時間)から“オミクロン・ショック”に揺さぶられ続けています。

南アフリカから報告された新しい変異ウイルスは抗体の攻撃を逃れたり、感染力が強くなったりしている可能性があると指摘されています。

29日からの1週間、株価は乱高下し、結局、日経平均株価は1週間で700円余り値下がりしました。

3日(金)こそ日経平均株価は276円余りの値上がりで取り引きを終えましたが、不透明感は払拭(ふっしょく)されていません。

今後の見通しについて、証券会社のストラテジストからは「ウイルスの全容が分からず、情報次第でさらに下落するリスクもある。ポジションを売り買いどちらに傾けるか判断できず情報待ちだ」とか「重症化リスクが低くても、工場の操業停止などサプライチェーンに影響すると世界経済の減速につながりかねない」などの声が聞かれ、神経をとがらせる展開となっています。
不透明感高まるマーケットで、ある動物の存在が話題になっています。

それは「灰色のサイ」です。

野村証券の解説によりますと、将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、現時点で軽視されがちな潜在的なリスクのことを指すということです。

体は大きくてもふだんはおとなしいサイが、いったん暴走し始めると誰も手を付けられなくなることに由来しています。

アメリカの作家でアナリストのミシェル・ワッカー氏が2013年のダボス会議で言い始めました。

今の局面でいえば、先週までの新型コロナウイルスが「灰色のサイ」でしょうか。

ワクチン効果もあって重症化は一定程度抑えられそうだと少し安心して、おとなしいサイだと思われていたところ、突如、オミクロン株が出現し、「ワクチンの効きが悪いのではないか」「感染力が強いかもしれない」とサイが凶暴になり、走り回っているという状況です。

マーケットにはほかの「灰色のサイ」も生息していると言われています。

ことし秋、中国の不動産企業「恒大グループ」が巨額の負債を抱えて経営危機に陥り、中国の不動産業界全体への懸念がくすぶり続けています。

もし、債務不履行が連鎖していけば、中国発の金融危機になるのではないかとの懸念で、恒大グループ問題が次の「灰色のサイ」だとみられています。

そういえばマーケット用語にはいろんな動物が登場します。

「ブラックスワン(黒い白鳥)」

事前にはほとんど予測できず、起きたときの衝撃が大きいことを指します。

2008年のリーマンショックや2016年のイギリスのEUからの離脱、いわゆるブレグジットが例としてあげられます。
さらに株式市場では値上がり傾向の相場をブル(雄牛)マーケット、下落傾向をベア(熊)マーケットといいます。

引き続き、6日の週もオミクロン株の情報は市場の最大の関心事項となりそうです。

投資家たちはマーケットがずっとおとなしい草食動物であってほしいと願っているのか、年末にかけて、角を突き上げる雄牛であってほしいと願っているのか、どちらなのでしょうか。

オミクロン株の正体を早く科学的に突き止めてほしいですね。
10日(金)、日銀が11月の企業物価指数を発表します。

10月は、原油価格の上昇を背景に35年8か月ぶりの高い水準となりました。

企業にとっては調達コストに関わり、収益に影響することから、この指標に注目が集まります。