あなたの至福のひとときに暗雲が…この冬、給湯器がピンチ!!

あなたの至福のひとときに暗雲が…この冬、給湯器がピンチ!!
「うわぁ、冷たっっっ!」

寒さがひときわ厳しい朝、浴びていたシャワーのお湯が突然冷たい水に!あわてて確認した給湯器の液晶画面にはエラーメッセージが。

朝から故障か、きょうはついてないな…

しかし、災難はそこで終わらなかったのです。

男性はその夜も次の朝も、自宅の温かいお風呂に入ることはできなかったのです。

一体、給湯器に何が起きているのでしょうか?

(ネットワーク報道部 鈴木彩里 芋野達郎 杉本宙矢/【取材協力】野田麻里子)
「マジで給湯器がない
「どこも在庫がない
「お風呂入れません」
「冬本番なのにお湯使えない」
「メーカーに注文しても5か月待ち
「冷水シャワー浴びた」

いま、SNS上には、給湯器の確保をめぐる悲鳴が相次いでいます。

壮絶体験談1 “5秒間のシャワー”

そんなツイートの1つを投稿した福岡県に住む20代の男性に話を伺いました。

男性はつい先日、日課の朝のシャワーを浴びていたところ、飛び上がりました。

突然、お湯が冷たい水になったのです。
慌てて給湯器を確認すると、液晶画面にエラーコードが点滅。

あれこれ試した結果、電源を入れてから5秒間だけお湯が出ることに気づきました。

5秒間だけ温水を浴びては電源を入れ直すことを繰り返し、やっとのことで浴びました。

ガス会社からは給湯器の部品が不足していると言われ、男性は近所の銭湯に通うことも検討していると話していました。

壮絶体験談2 鍋のお湯でお風呂

そんな体験談の取材を進めていると、隣の野田記者から「私も実は・・・」といきなり告白が。

野田記者は夫と3人の娘の5人暮らしです。
10月中旬、お風呂にお湯をためようとした際、給湯器が故障していることに気づきました。

この日は休日でガス会社に連絡もつきません。

キッチンの3つ口のコンロに家にある鍋を3つかき集めてお湯をわかし、お風呂にためていくことにしました。

30分以上かけて何とか湯船の半分ほどになり、お風呂に入れましたが、その後も家族が入るたびにお湯を使うため、継ぎ足しにキッチンと風呂場を何往復もするはめに。
しかし、大変なのはこれからでした。

翌日、自宅に来たガス会社の担当者から「今は給湯器がないので、取り替えがいつになるか分からない」と告げられてしまいました。
それからは近くの実家に娘と一緒に、お風呂を借りにいく毎日。

仕事で帰りが遅くなる夫は流しの水で頭を洗い、布団の中で「寒くて眠れない」と体を震わせていたそうです。

給湯器の交換が終わったのは2週間後。

娘からは喜びのメールがすぐに届きました。
「お風呂、直ったよー」
野田記者
「給湯器ってほんとうに大事と改めて痛感。お湯が出てきたときはほっと安心しました」

業者も苦境 “依頼はすべてお断り”

工事業者からも悲鳴が上がっています。

東京・神奈川を中心に給湯器の工事を専門に行う天谷富士夫さんです。
天谷富士夫さん
「9月いっぱいを最後に給湯器を仕入れられなくなりました。来年3月になれば入荷できるという説明がありましたが、今、すでに待っている人が多いと聞くので、本当に仕入れられるのか不安を感じています」
例年、寒さの厳しくなるこの時期、ひと月およそ30件ほどの給湯器関連の依頼があったということですが、いまは現物がないため、すべて断るしかありません。

給湯器の専門業者のはずが、現在は電気工事や水道工事などを請け負って、何とかしのいでいると窮状を訴えていました。
天谷富士夫さん
「これまでも新型コロナウイルスの影響は多少ありましたが、こういう形で大打撃を受けるとは思ってもみませんでした。給湯器専門の業者だったのに仕事の内容がすべて変わりました」

メーカー談 “創業100年で初めて…”

給湯器メーカー各社のホームページには「納期遅延」を知らせる告知がずらり。
一体何が起きているのか、聞いてみました。

「創業100年の歴史の中で、製造過程でこれだけ大きなトラブルが起きたことはありませんでした。まさかここまで影響が広がるなんて…」

そう話すのは、大手メーカーの担当者です。

このメーカーではガス給湯器や小型湯沸かし器、ハイブリッド給湯・暖房システムなど、5つの給湯機器のすべてのシリーズで納期が遅れているといい、その理由をこう話します。
リンナイ広報担当者
「遅延の原因は一つではなく複合的なんです。給湯器の組み立て工場自体は国内にあるのですが、部品の多くは人件費などのコストを下げるため世界中からやってきます。その供給が新型コロナをはじめとして連鎖的に影響を受けているのです」
きっかけは東南アジアでの感染拡大でした。

生産工場のあるベトナムで外出制限を含む「ロックダウン」が実施されると、製品の電子基板の部品の供給が滞り始めました。

一方、東南アジアから遠く離れたアメリカ。

ここでは春先の寒波で生産工場がおよそ2か月にわたって停止を余儀なくされたといいます。

その影響が夏頃から次第に出始め、部品どうしをつなぐコネクターに使う樹脂が入手困難になりました。

そこに追い打ちをかけたのが慢性的な半導体の供給不足。

こうした複合的な影響が重なり、供給が元に戻る見通しは立っていません。
経済産業省の統計からも、ことし7月以降、ガス給湯器・風呂がまの生産台数が大きく落ち込んでいることがわかります。

特に9月は去年と比べて5万台あまり、率にして35%落ち込んでいます。

しかも、ここに来て、新たな脅威が新型コロナウイルスのオミクロン株。

少しずつ回復してきた物流が再び打撃を受けるのではないかと、メーカーは戦々恐々としています。
リンナイ広報担当者
「新型コロナや気候変動などの要因でグローバルなサプライチェーンにおいて、いろんな悪いずれが生じてきています。オミクロン株の出現もあり原材料の高騰や物流のひっ迫なども予想され、再びロックダウンのような事態が起きてもおかしくはありません。納品遅延に追い打ちをかけなければいいのですが…」
毎日、何気なく入ってきたわが家のお風呂。

湯けむりの向こうにグローバルな問題も見えてきます。

自分で修理?ちょっと待って

修理や買い替えがなかなか難しい中…

「じゃあ、壊れたなら自分で直そう」

SNS上では自分で点検や修理をしたという声もちらほら。

でも、ちょっと待ってください。

それ、危ないかもしれません。

製品の経年劣化や事故について詳しいNITE=製品評価技術基盤機構の担当者は誤った点検や修理の仕方は火災などの事故につながる恐れがあると指摘します。
石油やガスの給湯器は製品の“寿命”にあたる「設計標準使用期間」がおよそ10年とされています。

特に石油を使うタイプの給湯器は経年劣化による重大な事故が懸念されることから、法律でも10年ごとの点検が定められています。

このタイプの給湯器では異常な煙や炎が出たり、周りに延焼したりなどした事故は、2020年までの5年間に17件に上っているということです。
NITE製品安全広報課 岡田有毅さん
「インターネットのオークションやフリマサイトなどで購入した中古品を使っていたり、適切な点検が行われず給湯器から周りに燃え広がる危険な事故も起きています。早めの点検で防げる事故もあるので、10年が経過したり異変を感じたりしたら購入した販売事業者や工事業者に相談してほしい」

できることは?

給湯器が壊れないようにするために何かできることはあるのでしょうか?

大手メーカーに聞いたポイントをまとめてみます。

まず大事なのは凍結予防。

給湯器の電源プラグ(コンセント)は抜かないこと。
最近の一般的な給湯器には「凍結予防ヒーター」と呼ばれる安全装置が内蔵されていて、ある一定の温度になると自動的に作動し凍結を防止しますが、電源プラグが抜けていると作動しなくなってしまうということです。

また寒冷地では配管の凍結を防止するために保温材を巻いたり、電気ヒーターを取り付けたりする処置が有効なこともあります。
つぎに寒波の予報が出たら給湯栓から少量の水を流しっぱなしにすること。

特に低温が予想される時には給湯栓から約4mmほど、5円玉の穴を通るぐらいの太さの温水(1分間に約400cc)を流したままにすることで、水道管の凍結を防止します。

ではもし凍結してしまったら?

給湯器や配管に熱湯はかけちゃダメ

気温が日中に上昇し、自然に解凍するのを待つ必要があります。
このメーカーではこれらの対策を記事や動画にまとめ、ホームページで紹介しているので参考にしてほしいと話しています。

給湯器のチェックを!

日々の疲れを癒やしてくれる“お風呂タイム”。

娘との至福のひとときを守るため、私も給湯器を確認してみようと思います。

ここまで読んでいただいた皆さんも、ぜひご自宅の給湯器をチェックしてみてください!