厳しい寒さ コロナ感染対策「換気」はどうする?ポイントは?

気象庁によりますとこの冬は寒気の影響を受けやすいということです。

オミクロン株への警戒も高まる中、専門家は、建物の換気には室温や湿度を一定以上に保つことが重要だと指摘しています。
試行錯誤する現場や換気のポイントを取材しました。

高齢者施設の利用者からは「寒い」の声

東京・世田谷区にある特別養護老人ホームでは、全館を換気するシステムが入っていますが、加えて廊下や食堂は日中と夜間を通じて2時間ごとにおよそ10分間換気をしているほか、入所者が過ごす部屋も食事などで部屋を空ける際、1日4回ほど換気しているということです。

ただ、これまでは入所者が「寒い」と訴えると窓を閉めることもあったということで、去年11月に入所者と職員合わせて10人以上の陽性が確認されたことを受け、換気を徹底する方針を確認したということです。
また、入所者にも換気の重要性を理解してもらえるよう、実施する時間帯を廊下などに貼ることにしました。

一方、最近の冷え込みでは利用者から再び「寒い」という声が増えてきたということで、空調の温度を25度前後にするほか、加湿器を使って湿度が下がらないよう注意しているということです。

特別養護老人ホーム「博水の郷」の山本伸秀課長は、「利用者の方に『寒い』と訴えられると開けたり閉めたりというのが現状です。体調の変化に注意しながら進めていきますが、これから寒さがより厳しくなり、特に雨や雪が降るときは心配しています」と話していました。

専門家「高齢者施設などでは室温20度・湿度40%以上」

冬に換気をする際の注意点について建物と健康について調べている専門家は、「温度と湿度の下がりすぎ」に気をつけてほしいと指摘しています。

ポイントは「室温20度・湿度40%以上」だということです。
建物の構造と健康の関係についての研究を進めている慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授の研究グループは、近畿にある14の有料老人ホームで温度や湿度と冬の間の健康状態の変化にどう関連があったか調べました。
その結果、▽個室の室温が20度を下回ると20度以上の場合に比べて要介護度が1.5倍悪化しやすく、▽湿度が30%を下回ると30%以上の施設に比べ、要介護度が2倍悪化しやすかったということです。

伊香賀教授は「換気は非常に重要だが、冬の時期にむやみに換気をすると温度や湿度が下がりすぎる懸念がある。

特に古い施設では断熱性が不十分なことがあり、隙間風で夜間、室温や湿度が下がって▽かぜやインフルエンザにかかりやすくなったり、▽血圧が上がったり、▽睡眠の質が下がったりとデメリットが出てくる」と指摘しています。
そのうえで、一般家庭では「室温18度以上、湿度40%以上」、高齢者施設や高齢者がいる家庭では「室温20度以上、湿度40%以上」を保つことが重要だとしています。

室温20度や18度をそう簡単には下回らない、と思いがちですが、伊香賀教授は「大多数の家では要注意だ」と指摘しています。

▽夜は、暖房器具や加湿器で温度と湿度を保つことに加えて▽温度計や湿度計で部屋のデータをとってみることも大切だということです。

「冬は夏より短い時間で換気可能」

部屋の温度をあまり下げずに換気するためには、どんな方法があるのでしょうか。

大手空調メーカー、「ダイキン工業」によりますと、ほとんどのエアコンは、吸い込んだ室内の空気を暖めて戻す仕組みのため換気はできず、暖房をつけたままにして窓を開け、外の空気を取り込むことが必要だということです。

効果的に室内を換気するためのポイントは3つあるといいます。
▽1つ目は、暖房をつけて室内を暖めてから、窓を開けること。

部屋の壁や床が暖まっていると、室温が下がりにくくなります。

▽2つ目は、窓を開け続ける場合その幅を小さくし、空気清浄機を併用することです。

空気清浄機について厚生労働省は、「HEPAフィルタ」とよばれる網の目の小さいフィルターを使い、かつ風量が1分あたり5立方メートル以上であることが必要だとしています。

▽3つ目は、換気の時間を短くし、短い間隔で行うこと。

冬は夏に比べて部屋と外の温度差が大きく、風も強いことが多いことから、夏より短い時間で換気ができるということです。

例えば、10分の換気を1時間おきにするより、5分以下の換気を30分おきにしたほうが、温度変化は小さくできるということです。

「ダイキン工業」広報グループの重政周之さんは、「エアコンからなるべく離れた窓を開けると、暖かい空気が屋外に出にくくなると同時に、電気代の節約にもつながります」と話していました。

「レンジフード」の活用も

また、キッチンに設置されているレンジフードを製造している「FUJIOH」は、レンジフードを活用した換気の方法についても紹介しています。
およそ9畳にあたる35平方メートルほどの部屋でシミュレーションしたところ、風量の弱い「常時換気」で運転した場合、空気を入れ替えるのにおよそ37分かかり、レンジフードを「強」にして運転した場合の9分より長くかかりましたが、部屋の温度はあまり下がらず、「強」で運転した時と比べ、平均でおよそ3度高かったということです。
「FUJIOH」はレンジフードを活用する場合、▽部屋に設置されている「給気口」を開くことが重要で、▽給気口とレンジフードとの間に柱や壁がある場合、十分換気ができない場所ができるおそれがあるほか、▽部屋が広くなると換気に時間がかかることにも注意してほしいとしています。