未成年の子いたら性別変更認めない規定は合憲 最高裁が初判断

性同一性障害の人に未成年の子どもがいる場合、戸籍上の性別変更を認めない法律の規定について、最高裁判所は「憲法に違反しない」とする初めての判断を示しました。一方、裁判官の1人は「憲法違反だ」とする反対意見を述べました。

兵庫県に住む性同一性障害の54歳の会社員は、性別を適合させるための手術を受けたあと、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう裁判所に求めました。

会社員には、前の妻との間に現在10歳の子どもがいて、神戸家庭裁判所尼崎支部と大阪高等裁判所で行われた審判では、性同一性障害特例法で戸籍上の性別を変えるには「未成年の子どもがいないこと」と規定されているのは憲法違反だと主張しましたが、認められず、最高裁判所に抗告していました。

最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は、未成年の子どもに関する規定について「憲法に違反しない」とする初めての判断を示し、抗告を退ける決定をしました。

平成19年に当時の性同一性障害特例法の規定をめぐって最高裁が示した「家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じるないよう配慮したもので合理性がある」という判断を踏襲した形です。

一方、5人の裁判官のうち、宇賀克也裁判官は「規定は合理性を欠き、個人の権利を侵害していて憲法違反だ」と述べました。

裁判官5人のうち宇賀裁判官が反対意見

裁判官5人のうち、学者出身の宇賀克也裁判官は「規定は憲法違反だ」として結論に反対する意見を述べました。

宇賀裁判官は反対意見の中で「未成年の子どもに心理的な混乱や不安などをもたらすと懸念されるのは、服装や言動なども含めた外見の変更の段階で、戸籍の性別変更は、外見上の性別と戸籍上の性別を合致させるだけだ。子どもの心理的な混乱や親子関係に影響を及ぼしかねないという説明は、漠然とした観念的な懸念にとどまるのではないか」と疑問を示しました。

そのうえで「外見上の性別と戸籍上の性別の不一致で、親が就職できないなど、不安定な生活を強いられることがあり、その場合は、戸籍上の性別の変更を制限することが、かえって未成年の子の福祉を害するのではないか」と指摘しています。

さらに「性同一性障害の人の戸籍上の性別変更を認めても、子どもの戸籍の父母欄に変更はなく、法律上の親子関係は変わらない。大多数の家族関係に影響を与えるものでもなく、家族の秩序に混乱を生じさせないという理由についても十分な説得力が感じられない」としています。

そして、規定は合理性を欠き、幸福追求権を保障する憲法13条に違反しているとして、性別変更を認めるべきだと述べました。

「性同一性障害特例法」めぐる最高裁の判断

戸籍上の性別変更を認める性同一性障害特例法では、性別を変える要件として、
▽20歳以上であること、
▽現在、結婚していないこと、
▽未成年の子どもがいないこと、
▽生殖腺や生殖機能がないこと、
などを規定していて、これまでにも最高裁判所の判断が示されています。

このうち生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする規定について、最高裁はおととし1月「変更前の性別の生殖機能によって、子どもが生まれると、社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくものだ」として憲法に違反しないとする初めての判断を示しました。

一方、この規定については、裁判官4人のうち2人が「手術は憲法で保障された身体を傷つけられない自由を制約する面があり、現時点では憲法に違反しないが、その疑いがあることは否定できない」とする補足意見を述べています。

また、去年3月には結婚に関する規定について「異性の間だけで結婚が認められている現在の婚姻秩序を混乱させないように配慮したもので、合理性に欠くとはいえない」として、憲法に違反しないと判断しました。

今回争われた「未成年の子どもがいないこと」という規定は、平成16年に法律が施行されたときには「子どもがいないこと」と規定されていましたが、子どもが成人した場合には性別を変更できるよう、平成20年の法改正で緩和されました。

改正前の規定については、最高裁が平成19年に「子どもがいる人の性別変更を認めると、家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じかねないという配慮に基づくもので、合理性を欠くとはいえない」として、憲法違反ではないとする判断を示していて、今回はこの考え方を踏襲し、憲法に違反しないことは明らかだと結論づけました。

司法統計によりますと、特例法が施行されてから去年までに全国の家庭裁判所で性別変更が認められたのは1万301人に上り、当事者やその支援者などで作る全国組織「LGBT法連合会」では、規定の撤廃など法律の抜本的な見直しを早期に行うよう求めています。