師走の家計を直撃 食品・光熱費 値上げ相次ぐ すでに影響も

12月分の電気とガスの料金は、大手の電力会社とガス会社のすべてで値上がりします。全社の値上がりは4か月連続で、一部の電力会社では、ことし1月分と比べて1000円を超える電気料金の値上がりとなります。

電気とガスの料金の値上がりはいずれも火力発電の燃料であるLNG=液化天然ガスなどの輸入価格が上昇していることが主な要因です。各社はすでに来月分についても値上がりを決めていて、家計への負担が一段と増えることになりそうです。

「砂糖」「業務用小麦粉」が値上がり

食品も値上げが続きそうです。原材料価格や物流コストの上昇などを受けて、主なメーカーの砂糖の出荷価格が大半の商品で1日から値上がりしたほか、業務用の小麦粉も今月下旬から値上げされ、外食業界や加工食品のメーカーなどでは対応を迫られています。

三井製糖と大日本明治製糖を傘下に持つ「DM三井製糖ホールディングス」や、「日新製糖」などの製糖メーカー各社は、砂糖の商品のうち一部を除く大半について1日から出荷価格を1キロあたり6円値上げしました。砂糖の出荷価格の値上げは、3月と7月に続いてことし3回目となります。
値上げの理由について各社では、原材料のサトウキビが主産地ブラジルの天候不順で供給量の減少が懸念され、バイオ燃料の材料として需要が拡大する中、サトウキビから作られる粗糖の国際価格が上昇していることに加え、物流コストがコロナ禍からの経済活動の正常化に伴い上がっていることが主な要因だとしています。
また、業務用の小麦粉では、製粉メーカー大手の「日清製粉」と「ニップン」、それに「昭和産業」の3社が今月20日の納品分から、価格を引き上げます。
主な産地である北米の天候不順などを受け、政府から売り渡される輸入小麦の価格が引き上げられたためで、値上げの幅はいずれも25キロあたりでパンなどに使われる強力粉が315円、うどんや菓子に使われる中力粉や薄力粉は、日清製粉と昭和産業が345円、ニップンが340円となります。

砂糖や小麦粉は、幅広い食品に使われていて、コロナ禍で販売が大きく落ち込んだ外食業界にとっては、引き続き食材価格の上昇が業績回復への重荷となりそうです。

食材高騰で外食産業に打撃

コロナ禍で厳しい経営が続く外食大手では、原材料価格の上昇などで収益が一段と圧迫される中でも商品の価格を極力維持しようと、一段のコスト削減を進めています。

全国でおよそ3000の店舗を展開する外食大手の「すかいらーくホールディングス」は、コロナ禍で落ち込んだ客足の回復が遅れる中、鶏肉や牛肉などの原材料価格の値上がりに加え、電気やガスの料金の上昇などで店舗の運営コストの負担が一段と重くなっています。
このためこの会社では、さらなるコスト削減策として傘下の飲食チェーンで扱う食材の調理工程の共通化に力を入れています。
ファミリーレストランや中華、和食など、それぞれの業態で使う食材は、一括して大量に購入し、自社の加工施設でまとめて調理していますが、これまで業態ごとに別々だった下ごしらえの一部を共通化し、多くの業態で使う鶏肉などは同じラインで加工できるようにしました。
ただ、共通化できる食材の種類には限りがあり、今後もさらに原材料価格や燃料費などの値上がりが続いた場合、今の商品価格を維持できるかどうか、状況に応じて検討を進めるとしています。

クリスマスケーキ“在庫ロス”削減で価格維持

国内の企業の間では、急激な原材料高に直面しながらも販売価格に転嫁できず、企業努力でコストの増加を吸収しようとする動きが目立っています。
クリスマスシーズンを前に注文が最盛期を迎えているケーキ専門の通販サイト運営会社「Cake.jp」によりますとケーキの材料となる卵は去年と比べて9%ほど値上がりしたほか、サラダ油などの油脂類が14%、小麦粉が6%ほどそれぞれ仕入れ価格が上昇していますが、今のところ商品の値上げは予定していません。

原材料価格が高騰する中、会社は在庫のロスを減らすことで利益を確保しようという取り組みを進めています。商品ごとの売れ行き予測に合わせて原材料や人員を確保することで、余分なコストを抑えて在庫のロスを削減し、販売価格を維持できるようにしています。

ミートボールは配送コスト下げて対応

千葉県船橋市の食品メーカー「石井食品」では、主力商品のミートボールに使う玉ねぎなどの食材の仕入れ価格が上昇したほか、ミートボールを揚げる際に使う菜種油の価格も去年と比べて50%から80%ほど値上がりしているということですが、当面は、ミートボール1袋=120円(税抜き)に価格を据え置くことを決めました。
会社は、出荷する際に段ボールに詰めるミートボールの量を増やして配送の回数を減らすなど、少しでもコストを下げる努力を行っています。石井智康社長は「物流のやり方を変え、油を減らしておいしく仕上げる技術開発などにも中長期的に取り組んでいきたいが、将来的には安さだけではなくいい商品を適正な価格で買い支えてもらう流れを作ってくことが重要だと思う」と話しています。

価格維持して量減らす “ステルス値上げ”も

商品の価格は値上げせずに据え置く一方で、内容量を減らして対応する動きも出ています。
このうちカルビーはことし10月末、一部の商品を値上げするとともに、合わせて15の商品については内容量を変更すると発表しました。
主力の「ポテトチップス」のうち内容量が85グラムの商品については、来年1月31日から5グラム減らして80グラムに変更するほか、「じゃがりこサラダ」は来年1月24日から60グラムの内容量を57グラムに変更するということです。

また、湖池屋も原材料の高騰などを理由にコンビニ向けの商品「ポテトチップスのり塩」について、来年1月末から内容量を88グラムから83グラムに減らすほか、味の素冷凍食品は原材料費の上昇などを理由に来年2月の納品分から一部の冷凍食品について値上げしたり、内容量を変更したりすることを決めています。

価格は変えずに内容量を減らすこうした動きは、消費者が気付きにくいことから、SNS上などでレーダーに探知されにくい戦闘機になぞらえて「ステルス値上げ」と呼ばれています。

デジタル技術を使って新たな解決策を提案する動きも

なかなか値上げに踏み切れない日本の企業。
こうした中デジタル技術を活用し、新たな解決策を提案する動きも出ています。

東京・千代田区のIT企業「ハルモニア」は、電機メーカーの「東芝テック」と提携し、スーパーなどの小売り事業者向けに価格を柔軟に設定する新たなシステムの導入を進めています。
商品の在庫や利用客の数、それに商品の鮮度や賞味期限などのデータを分析し、需要が多い時はその商品の価格を高く、少ない時は価格を下げる仕組みで、「ダイナミックプライシング」と呼ばれています。
値段をリアルタイムに表示できる「電子値札」を使うことで、これまで固定されていた商品の価格を柔軟に変動できるようにしていて、今後、大手スーパーなどと実証実験を進めることにしています。

この技術を開発した布川悠介最高製品責任者は「賞味期限が近づいて値引きされる商品を求めている人もいるし、価格が高くても鮮度が良く質の高い商品が欲しい人もいるので、需要に応じて価格を変えていく状況は作れるのではないかと思っている。なかなか賃金が上がらず原材料も上がっていく中で、どこかで負のスパイラルを転じていかなきゃいけないタイミングがあると思っている。これまでのような値下げ合戦ではなく、価値に見合った価格を付ける『価格決定力』をいかに上げていくかが喫緊の課題だと思う」と話しています。

専門家「“デフレマインド”で値上げしづらく」

消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は「コストが増えれば商品の価格を上げるのが自然な行動だが、日本では賃金が上がらない中で安くていい商品があるのが当たり前という『デフレマインド』が醸成されてしまった影響が非常に大きい」と分析しています。
そして「若い年代の収入が伸びにくくなっているし、少子高齢化の中で社会保障への不安も非常に強くできるだけ安くモノを買いたいという節約志向が消費行動の土台になっていて、日本ではこうした消費者の割合が他の国より高くなっている。その結果、値上げを避けたい企業が人件費や仕入れ価格を抑えるなどしてコストの上昇を吸収してしまっている」と、構造的な問題点を指摘しています。