魚の赤身と白身の違い

魚の赤身と白身の違い
今回は魚の生態についてです。魚の身の色には赤身や白身などがありますが、なぜ色が違うのか考えたことはありますか?

問題に挑戦!

まず、魚の身の色にまつわる入試問題です。
問題
白身の魚と比べ、赤身の魚の泳ぐ能力にはどのような特徴があると考えられますか。
(海城中学校 2021年)
正解は、白身の魚と比べて赤身の魚は「持続的に泳ぐことができる」です。
ではなぜ、魚の身の色は赤かったり白かったりするのでしょうか。
それは、魚それぞれの生態の違いが関係しています。

赤身と白身 生態の違い

水産物の利用や加工に関する研究を行っている東京海洋大学の岡崎惠美子さんに話を聞きました。
岡崎さん
「魚の筋肉の中に含まれている赤っぽい色は、ミオグロビンという名前の色素。ミオグロビンの量が多いものが赤身魚、少ないものが白身魚と言うことができます」
魚はエラ呼吸をして、水の中から酸素を取り込みます。
その酸素を蓄える役割をするのがミオグロビンです。
岡崎さん
「マグロは広い海を高速でずっと泳ぎ続けている魚なので、酸素の消費量がとても多い。筋肉の色がとても赤いのは、ミオグロビンがたくさん入っているから。白身の魚は底のほうでふだんはじっとしているけれど、敵が来たりエサをとったりする時に瞬発的にパッと動いて運動する。そんな時に使うのが普通肉の部分、白い身の部分と言われています」

赤身と白身を分ける境界線

例えば、赤身はマグロやカツオなどの回遊魚。
白身はタイやヒラメなどがありますが、果たして赤身と白身を分ける境界線はあるのでしょうか?
岡崎さん
「どこで線引きするかはとても難しいけれど、お肉100グラムに対してミオグロビンの量が10ミリグラムより下だと、筋肉の色が白っぽく見える。それよりも多くなると赤っぽく見えるので、その辺が分ける目安になります」
では、オレンジっぽい身のサケはどちらなのでしょう?
岡崎さん
「サケはちょっとかわいそうだけれど、赤身魚には入れてもらえない。サケにはミオグロビンはほとんど入っていない。含まれている色素が全く違うもので、アスタキサンチンという脂に溶ける色素で、エビとかカニに含まれているのと同じタイプのものです」
このような身の色になるのは、サケが好むエサに含まれるアスタキサンチンという色素が蓄積するからだそうです。
ということで、サケは赤身魚ではなく白身魚に分類されます。

赤身と白身「味」の違い

では、赤身魚と白身魚は、味にも違いはあるのでしょうか?
岡崎さん
「これははっきりあると思う。エキス成分と言って、味に関係する成分が赤身魚の場合には白身魚よりも比較的多く含まれる。特に、ヒスチジンというアミノ酸がたくさん入っている。これが赤身魚のコクというか、味の強さに関係していると考えられています」
さらに、赤身魚は白身魚に比べて脂肪が多いので、味が濃く感じられると言います。
しかし、うまみ成分が多い赤身魚には、調理の際に注意しなければならない点があるそうです。
岡崎さん
「赤身魚は鮮度の落ち方がとても速いものが多い。『腐っても鯛(タイ)』、『鯖(サバ)の生き腐れ』のようなことばがあるが、これは本当に白身魚と赤身魚の違いを典型的に表していることばかなと思う。腐ったら食べられないけれど、タイは非常に長く置いても腐りにくいというのはあります」
白身魚はイノシン酸という、うまみ成分の生成がゆっくりしていて蓄積している時間も長いので、おいしい味が長持ちする傾向にあるそうです。
岡崎さん
「『鯖の生き腐れ』についてはエキス成分の中でも特にヒスチジンというアミノ酸がたくさん入っているが、これが細菌の作用でヒスタミンという物質に変わってしまう。腐敗したり傷んだりした時にこのヒスタミンが出てくると、いわゆるヒスタミン中毒ということでアレルギー症状を呈したりする。鮮度をきちっと管理して、鮮度を落とさないようにすることが大事です」

おいしく食べるために大事なこと

魚を買ってから家に持ち帰るまでの10分、20分が大事なのだと岡崎さんは教えてくれました。
岡崎さん
「魚は漁獲されてからスーパーに届くまで、本当に温度管理はしっかりしている。それで低温で販売されるが消費者が買ってから家庭で食卓に並ぶまでが結構ずさん。温度管理をきちっとしていただくと、よりおいしく食べられると思います」
おいしさの基準には食感もありますよね。
白身は刺身にするとコリっとしていて、その食感が好きだという人もいると思います。瞬発的に動く白身魚は筋肉が強いからあの食感が生まれるそうです。
ちなみに、岡崎さんの得意な魚料理はシメサバだということです。
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