ワクチン3回目接種 私たちはいつになる? 自治体の準備も進む

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種が1日から医療従事者を対象に全国で始まりました。
来年1月には65歳以上の高齢者なども対象になる見込みで、自治体ではこれまでの接種で見られた予約時の混乱を避けるための準備を進めようとしています。

東京医療センター院長「重要な1歩が始まった」

東京 目黒区の東京医療センターでは、午前9時前に接種会場が設けられ、医師と看護師合わせて18人が予診票を提出し、ファイザーのワクチンの接種を受けていました。

新木一弘院長は「大変ほっとしている。職員だけでなく、患者や家族に安心して受診していただくための重要な1歩が始まった。オミクロン株に対する有効性は、これから知見が集積していくと思うが、デルタ株などには一定程度有効だと言われているので、3回目の接種は大変重要だ」と話していました。

愛知・北海道でも3回目接種始まる

愛知県豊明市にある藤田医科大学病院でも3回目の接種が始まりました。
この病院では、きょう中におよそ200人の医療従事者が3回目の接種を受ける予定だということです。
接種を受けた20代の看護師は「2回目の接種では頭痛などの副反応が出たので心配しましたが、患者さんに感染させてはいけないと思い、接種しました」と話していました。

北海道旭川市では、およそ1万9000人の医療従事者を対象に1日から始まり、旭川赤十字病院では92人が問診を受けたあと接種を受けました。
牧野憲一院長は「医療従事者の身を守り、病院の機能を維持するためにも院内の医師や看護師への3回目の接種を進めたい」と話していました。

【スケジュール】3回目接種は“原則8か月以上たった人”から

厚生労働省によりますと、3回目接種の対象となるのは2回目の接種から原則8か月以上たった人で、接種の時期になると自治体から接種券が届きます。
▽今月は医療従事者だけで104万人が対象です。
▽来年1月に新たに対象となるのは、医療従事者200万人と65歳以上の高齢者61万人、それに2回目までを早期に接種した64歳以下の人、42万人も対象になります。
▽来年2月には医療従事者183万人と高齢者1160万人、64歳以下の73万人。
▽来年3月には医療従事者89万人、高齢者1624万人、64歳以下の435万人に加え、企業や大学などで行う「職域接種」の168万人も対象になります。
▽来年4月には、高齢者が313万人、64歳以下が1194万人、職域接種が500万人。
▽来年5月には高齢者が58万人、64歳以下が1462万人、職域接種が155万人。
▽来年6月に高齢者が35万人、64歳以下が1273万人、職域接種で248万人が新たに対象となります。

厚生労働省は少なくとも来年9月までは3回目の接種を続けるとしています。
また、厚生労働省は「2回目との接種間隔を原則8か月以上とする方針を現時点では変える予定はない。オミクロン株についてワクチンにどのような影響があるのか検証を進めていいるがまだ不明だ。感染状況が大きく変わるような事態が起きた場合には、ワクチンが確保できるなどの条件のもとで必要であれば改めて方針を判断する」としています。

3回目は「交互接種」が可能に

3回目の接種では、2回目までとは異なるメーカーのワクチンを接種する「交互接種」も行われます。
その大きな理由は、2回目までファイザーのワクチンを接種した全員が、3回目もファイザーで受けられる量をすぐに確保できる見通しが立っていないことです。
厚生労働省によりますと今月と来年1月に接種の対象となるおよそ400万人分はすでにファイザーのワクチンを確保しています。
しかし、2月と3月に対象となる人はおよそ3400万人に急増するのに対し、現時点で国が用意できるのは2000万人分にとどまる見通しです。
このため、厚生労働省は、安全性や有効性を検証したうえで、今後、モデルナのワクチンが承認されれば、ファイザーからモデルナに切り替えることを認めました。

一方、自治体からは、交互接種を認めても、ファイザーを希望する住民が多ければ、ワクチンが不足するのではないかと懸念する声が出ています。
厚生労働省は「2回目の接種から8か月のタイミングで希望者全員にファイザーのワクチンを打てるかは分からない。その場合はモデルナのワクチンを接種することを検討してほしい」としています。

混乱なく3回目接種を進めるために

ワクチン接種を担うのは各地の自治体です。
接種をめぐっては1回目の接種の際に予約サイトや電話にアクセスや問い合わせが集中し、予約が取りづらいことなどが課題となりました。

こうした中、NHKが11月26日の段階で東京23区に3回目の接種ではこうした課題にどう対応するか聞いたところ19の区が混乱を避けるための取り組みを行う予定があると回答しました。
このうち、新宿区、文京区、江東区、杉並区、葛飾区、江戸川区の6つの区では、日時と会場を区があらかじめ指定するとしています。

また港区、台東区、墨田区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、北区の8つの区では、コールセンターの回線数や予約をサポートする会場を従来より増やすと回答しました。

“日時や会場をあらかじめ指定” 東京 江戸川区

日時と会場をあらかじめ指定するという東京 江戸川区取り組みです。

江戸川区は2回目の接種を区の集団接種会場で受けた高齢者について、2回目の接種からちょうど8か月後となる日の同じ時間を3回目接種の日時に指定することにしています。また会場も2回目と同じか近くの会場を指定するということです。

そして来月中に3回目の接種券を送付する予定で、その後も順次、発送することにしています。指定された日時や会場を変更したいという要望はコールセンターやインターネットで受け付けるということです。

高齢者を対象とした取り組みが順調に進めば、ほかの世代でも同様に日時や会場を指定することも検討するということです。

江戸川区新型コロナウイルス感染症ワクチン接種担当課の笈川晋一課長は「『オミクロン株』については今後の国の情報などを注視しつつ、まずは目の前に控えた3回目の接種を区民の皆様がスムーズに受けられるよう準備を進めていきたい」と話していました。

自治体からは早期接種の要望も

国内で2例目「オミクロン株」の感染者が1日に確認されるなど、新たな変異ウイルスへの懸念が強まっています。
こうした中、自治体からは2回目の接種からの間隔を6か月に前倒しして実施したいという要望も出ています。

3回目の接種について、厚生労働省は2回目からの接種間隔を原則8か月以上としていて、医療機関や高齢者施設でクラスターが発生した場合などには厚生労働省に事前に相談したうえで施設の利用者や職員に対しては6か月に前倒しできるとしています。
これに対し、これまでに大阪府や茨城県など複数の自治体がクラスターが発生しなくても医療従事者や高齢者施設などに対しては接種の間隔を短縮して実施したいと国に要望しています。

東京 世田谷区 “国は柔軟な対応を”

このうち東京 世田谷区は高齢者施設や介護事業所が区内におよそ1000か所あり、巡回して接種を終えるまでに時間がかかることやオミクロン株の感染拡大も懸念されるなどとして、2回目から6か月以上たった利用者や職員から接種を始められるよう、国に要望しています。

世田谷区の保坂展人区長は「クラスターを発生させないために高齢者施設のほうからもなるべく早めにやってほしいという要望も受けている。1週間前までは感染は非常に落ち着いていたが状況はどんどん変わってきている。オミクロン株は感染力が大変強いと言われているし、国は早く接種を進めたいという自治体を後押しするような柔軟な対応をしてほしい」と話しています。

専門家「自治体の自主性や自立性を尊重すべき」

地方自治に詳しい中央大学法学部の礒崎初仁教授は「今回の接種業務は国から自治体への法定受託事務なので、国が一定程度、指示することは可能だ。ただ、国がワクチンを供給しないと自治体は事実上、指示に従うしかなくなる。ワクチン接種は広域かつ緊急の対応が求められていることから、本来は地域の実情に基づいて接種を進める必要があり、自治体の自主性や自立性を尊重すべきだ」と指摘しています。