【詳しく】入国停止で留学生「日本で学びたい でも限界かも」

政府は、新たな変異ウイルス、オミクロン株の感染が各国に広がっているのを受けて、11月30日からすべての国と地域からの外国人の新規入国を原則、停止しました。
日本への留学を目指し、海外で待ち続けてきた外国の人たちは、再び入国ができなくなったことをどう受け止めているのでしょうか?
留学を希望する人たちや受け入れ先の日本語学校に話を聞きました。
(国際部記者 近藤由香利)

「この先どうしたらいいのか、分からない」

インド人のディクシャ・ヴェダさん(25)は「治安のよい日本で教育を受けたい」と、ことし4月から福岡市の日本語学校に留学する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、母国で待機を続けています。
【再び入国停止となりましたが、どう受け止めていますか?】
29日の朝、起きたらこのニュースを知ってとても落ち込んでいます。
長い間ずっと日本に行くことを待っていて、11月8日に、入国制限が緩和された時には、受け入れ先の日本語学校から「来年1月には来日できるかもしれない」と説明を受けていました。

日本に行くことを楽しみにしていたので、とても残念なニュースです。
【今回の日本の措置についてどう考えていますか?】
日本を新たな変異ウイルスから守るためだということは理解しています。
ただ留学生は日本に留学するために自分の時間やお金を投資しています。それは私たちの将来のキャリアがかかっているからです。

どうか留学生がこのような状況に置かれているということを理解していただき、日本でのキャリアを描けるようにしてほしいです。
【入国できないことで、ヴェダさんの人生にどう影響していますか?】
当初は日本語学校で学んだあと、日本の大学院でマーケティングの博士号を取得したいと考えていました。でも、すでに日本への留学が先延ばしになっているので、大学院への進学は諦めました。
今は、日本語学校で学び、インドの日系企業への就職を目指しています。ただ、さらに入国が延期になれば、この先の人生をどうしたらいいのか、正直分かりません。

いま言えることは、私の思い描くキャリアを実現できるかどうか、瀬戸際の状態だということです。

「日本への留学を諦めるかもしれない」

ドイツ人のベンジャミン・キューンさん(34)は、小学生のときに見た日本のドキュメンタリーをきっかけに日本に関心を持ち、将来はITエンジニアとして日本で働き、暮らしたいという夢を持っています。
当初、ことし3月に来日して、4月から日本語学校で学ぶ予定でしたが、今は貯金を切り崩しながら生活しているといいます。
【再び入国停止となりましたが、どのように受け止めていますか?】
ニュースを聞いたとき、私やほかの留学生たちは、大きなショックを受けました。私たちは自分たちの将来や、今後の生活についてとても心配しています。
【日本に来ることができない間、何が一番大変ですか?】
ドイツで10年間、ITエンジニアとして働き、ことし1月に会社をやめて、3月から日本に行く予定でした。しかし、日本に行くことができないので、日本語学校のオンライン授業を平日の午前4時半から4時間受けています。
また、日本にいつ行けるかわからず、エンジニアとしての仕事も再開できないことから、日本語学校の学費や生活費は貯金を切り崩しています。

こうした生活が精神的にとてもつらいだけでなく、「いつまでこの生活が続くのか」と毎日不安な気持ちでいっぱいです。
【今後はどうする考えですか?】
もし来年1月までに日本に行けなかったら、日本への留学を諦めるかもしれません。今は待つことしかできず、ずっと不安を感じている状態なので、これ以上待てません。

そして、別の選択肢も考えています。
1つは、留学生を受け入れている韓国に行き就職することです。
もう1つの選択肢は、ドイツにとどまり仕事を探すことです。

私の夢は海外で働くことで、1番働きたい国はもちろん日本ですが、日本にいつ行けるか見通せず、生きていくためには、別の道も考える必要があります。

「いつまで経営を続けられるのか、時間との勝負」

感染拡大の前、およそ400人の留学生が学んでいた福岡市内の「福岡日本語学校」では、現在およそ250人が留学を希望し海外で待機していて、留学生の待機場所や日本語教師の確保など留学生の受け入れ再開に向けて準備を進めてきました。

校長の永田大樹さんに話を聞きました。
【留学生の入国が再び停止されました。どう受け止めていますか?】
日本への入国を心待ちにしていた留学生たちは、ニュースを知って「今後どうなるのか」といった不安の声もあり、学校としても落胆しています。
一方で新たな変異株が出てきたための措置で、やむをえないことでもあり、苦しい心境です。
【受け入れの準備を進めてきたと思いますが、影響はありますか?】
留学生たちが入国できず、在校生の数が感染拡大前の4分の1くらいに減っている中、受け入れが再開されたときのために、教室を維持したり日本語教員を確保したりしなければなりません。
そのための費用もかさみ、いつまで経営を続けられるのか、時間との勝負だと感じています。
【今後、一番心配していることは何ですか?】
「国際交流の礎」となる留学業界全体が非常に厳しい状況に追い込まれていて、この先、留学生そのものの受け入れが難しくなってしまうのではないかと強く懸念しています。
また、日本に来ることを選んでくれた外国人が留学を諦めてしまうケースが出ていることも、とても心配です。
そのため、感染が終息したあとを見据えて、留学生が日本で学べる環境を維持するための支援が必要だと思います。