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アルコール消毒の盲点?増える感染性胃腸炎

お店の入り口でシュ。
出勤してシュ。
食事の前にはウェットタオル。

これで感染対策はバッチリ!…と思っていませんか?
アルコール消毒だけでは十分に防げないウイルスもあるんです。

いま胃腸炎を引き起こすノロウイルスなどの感染がじわじわと増えています。
(ネットワーク報道部 廣岡千宇・野田麻里子・清水阿喜子)

流行のきざし?

『感染性胃腸炎でしょう』

11月中旬、水のような下痢をしている娘(1歳8か月)を小児科へ連れて行くと、医師からこう告げられました。
娘が通う保育園にもこんな貼り紙が。

「感染性胃腸炎にかかっている子が6名います。(11月合計13名)」

使い捨ての手袋をつけて娘のおむつを替えながら私(記者)は思いました。
ついに、この季節が…。

コロナ前の水準近くまで増加

主にウイルスが原因となり、冬場に患者が増える感染性胃腸炎。
おう吐や下痢などの症状が出て高齢者や乳幼児は脱水など症状が重くなることもあります。
この感染症、去年の今頃は例年に比べて大幅に少なくなっていました。
インフルエンザと同様、新型コロナの感染対策が効果を発揮したとみられています。

しかし今シーズンは、コロナの感染が拡大する以前のおととしの水準に近づきつつあります。

感染予防しているのに…

去年と変わらず感染に気をつかう日々が続いているのに、どうして感染性胃腸炎の患者は増えているのでしょうか。

その理由の一つとして、東京都の担当者があげたのが“手洗いに対する意識の変化”。

「新型コロナの感染対策でアルコール消毒が定着したことで、手洗いがおろそかになっているのではないか」

そんな声が医療現場から寄せられているというのです。
アルコール消毒が定着したから手洗いがおろそかになっている?
本当にそうなのか街ゆく人に尋ねてみました。

「手、洗っていますか?」
「いろんなところでアルコール消毒しているから手洗いはまぁいいかなって思うときがある」(男子大学生/19歳)

「外食のときにはおしぼりで手をふくだけでわざわざせっけんで手を洗うことはしていません」(男性/70代)

「基本的にはしっかり洗っていますが、外で食事をするときとか手を洗える場所がないとアルコール消毒だけで済ませてしまいます。洗う場所を探すのがちょっとおっくうなので」(女性/23歳)
意識して手を洗っている人がほとんどでしたが、外出先ではそういかないことも。
そんなときにアルコール消毒で済ませているという人もいました。

どうして手を洗わないと感染するの?

大東文化大学 中島一敏 教授
「実は感染性胃腸炎の病原体となるウイルスに対しては、アルコール消毒ではあまり効き目がないんです」

そう警鐘を鳴らすのは、感染症の予防に詳しい大東文化大学の中島一敏 教授です。
アルコール消毒は新型コロナやインフルエンザウイルスを死滅させることはできますが、感染性胃腸炎の原因となるノロやロタ、サポウイルスなどには効果が十分ではありません。

その理由はウイルスの構造にあるといいます。
大東文化大学 中島一敏教授
「ウイルスには、脂の膜に包まれているものとそうではないものがあります。アルコールはこの膜を壊すことでウイルスにダメージを与えることができるのですが、膜がないウイルスは表面がタンパク質の殻で覆われているため、それができません。ノロウイルスなどにはこの脂の膜がなく、一般に消毒薬に強い性質があります。こうしたウイルスに感染しないためには、手洗いで物理的に洗い落とすという作業が必要です」

もう一度、きちんと手洗いをしよう

中島教授自身もこの2年、アルコール消毒など新型コロナの予防策を訴えてきましたが、いま改めて手洗いの大切さを呼びかけているそうです。
「意識せずに手を洗うと指の間や手の甲などは洗い残してしまいがちです。そうならないためにせっけんをつけて少なくとも30秒以上、丁寧に時間をかけて洗うようにしてください。またせっけんは、固形よりも液体タイプをおすすめします。固形のせっけんだとどうしても表面が汚染されてウイルスを移してしまうおそれがあります」

感染しない、させないために

手洗い以外にも感染性胃腸炎を防ぐ方法をアドバイスしてくれました。
大東文化大学 中島一敏教授
「ノロウイルスなどは人から人に感染するケースのほかに食品を介して人に感染する場合があります。この時期に旬を迎えるカキなどの二枚貝は、加熱用の場合しっかりと中まで火を通して食べることが大事です。台所まわりを次亜塩素酸や熱湯で消毒するというのも有効な方法です」
「もしも同居している家族が具合を悪くしたり、あるいは感染してしまったときには、おう吐や排便の際、多くのウイルスが排出されるため処理には特に注意を払う必要があります。おう吐したものから出たしぶきが空気中に広がり知らずに口から吸い込んで感染した事例も知られています。
おう吐したときには換気にも気を配ってください。家族全員が感染しないよう、看病する人を限定することも考えてみてください」

それでも感染したら… 胃に優しい食べ物を

最後に、感染性胃腸炎になったときの食事について教えてもらいました。
病気のときの食事に詳しい東京医療保健大学 細田明美講師
「胃腸炎に感染したときに口にするものは目安として便の形状と同じくらいのものと考えると分かりやすいでしょう。例えば水のような便なら水分補給、軟便状なら同じくらいの固さのおかゆといった具合です。子どもは口に出して症状を訴えることが難しいので尿の量から判断して水分補給してあげましょう」
発症直後は体から水分と電解質が失われるため、水分と同時に塩分の補給が重要になるそうです。

そして吐き気が収まってきたら軟らかく消化によいもので糖質を補給し、次に様子を見ながらタンパク質を摂取するようにします。
<胃腸炎になったばかりの頃>
経口補水液
(手作りするなら…水 500ml、砂糖 大さじ2強、塩 小さじ4分の1)

<少し食べられるようになったら>
おかゆ
煮込んだうどんなど
例えば卵雑炊に軟らかくした高野豆腐を入れるのもおすすめだそうです。

これ以上、感染を広げないために

取材をする中で2歳の子どもが感染性胃腸炎にかかったという女性に話を聞くことができました。

症状はおう吐や下痢にとどまらず発症から2日後、白目をむいて倒れ、けいれんを起こして意識を失ったそうです。

とても怖い思いをした女性は、こういうケースがあることを知ってほしいとSNSで発信を続けています。

11月に入って各地の保育園などで感染性胃腸炎の集団感染が相次いでいます。
これからの時期は新型コロナ以外の感染対策にも気を配る必要がありそうです。

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