「オミクロン株」英・独でも感染例確認 入国制限の動きが拡大

南アフリカで確認された新たな変異ウイルスの感染例が、イギリスとドイツでも初めて確認されました。感染が疑われる症例も各地で報告されていて、各国で、アフリカ南部からの入国を制限する動きが急速に広がっています。

南アフリカで確認された新たな変異ウイルスについて、WHO=世界保健機関は26日、現在広まっているデルタ株などと同じ「懸念される変異株」に指定し、「オミクロン株」と名付けました。

この変異ウイルスはこれまで南アフリカと隣国のボツワナ、香港、イスラエル、それにベルギーで確認されていましたが、イギリスの保健当局は27日、2人の感染を確認したことを明らかにしたほか、ドイツでも南アフリカから到着した2人の感染が確認されました。
また、オランダでは、南アフリカから飛行機で到着した乗客のうち61人の陽性が確認され、このうち複数の人が新たな変異ウイルスへの感染が疑われるとして保健当局が確認を急いでいます。

このほかイタリアとチェコでもこの変異ウイルスへの感染が疑われる症例が報告されたということです。
イギリスのジョンソン首相は、27日、記者会見を開き「オミクロン株についてはまだ初期段階で、わかっていないことは多いが、感染拡大のスピードが速く、2回ワクチンを接種していても感染することもあり得るようだ」と述べ、水際対策などを強化する方針を明らかにしました。

また27日には、新たに韓国やタイ、スリランカも、南アフリカと、その周辺の国からの入国を制限することを発表しました。

新たな変異ウイルスについては、感染力や重症化のリスク、ワクチンの効果への影響などがまだ明らかになっていませんが、感染の拡大を防ごうと、各国で、アフリカ南部からの入国を制限する動きが急速に広がっています。

イギリス 2人感染確認 アフリカ南部への渡航に関係

イギリスの保健当局は27日、国内で2人の感染が確認されたことを明らかにしました。

2つの症例は、アフリカ南部への渡航に関係しているということです。

また、イギリス政府は、新たな水際対策として南アフリカなど6か国に加え、28日からは、マラウイやモザンビークなど4か国を対象に入国を制限する方針を明らかにしました。

ドイツ 2人感染確認 南アフリカからミュンヘン空港に到着

ドイツ南部バイエルン州の保健当局は27日、2人の感染が確認されたことを明らかにしました。

2人は今月24日、南アフリカからミュンヘン空港に到着したということです。

また、中部ヘッセン州の当局も今月21日に南アフリカからフランクフルト空港に到着した1人について、新たな変異ウイルスに感染している疑いがあり調べているとしています。

このほか、チェコとイタリアでも、この変異ウイルスへの感染が疑われる症例が見つかったとして保健当局が確認をすすめています。

イタリアでも感染確認

イタリア政府は27日、新たな変異ウイルスの感染が国内で初めて確認されたと発表しました。

それによりますと、感染が確認されたのはモザンビークから帰国した1人で、家族への感染などについて調べているということです。

イスラエル 外国人の入国を14日間禁止

イスラエル政府は27日、すべての外国人の入国を14日間禁止することを決めました。

イスラエル政府は、26日には北アフリカを除くアフリカの国々からの外国人の入国を禁止するとしていましたが、ヨーロッパなどでも感染が確認されるなか、1日で水際対策をさらに強化した形です。

イスラエルでは、アフリカ南部のマラウイから戻った人で変異ウイルスの感染が確認されているほか、感染の疑いがある人も7人いるということです。

スポーツ界でも影響

新たな変異ウイルス「オミクロン株」が確認された南アフリカでは、ラグビーの試合に出場予定だったヨーロッパのチームが帰国を決め、一部の試合が延期されるなど、スポーツ界でも影響が出ています。

ロイター通信などによりますと、南アフリカで行われる予定だったラグビーの「ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ」の試合で、イギリスやイタリアなどの合わせて4チームが新たな変異ウイルスの確認を受けて帰国を決め、これに伴って一部の試合が延期されました。

このうちのウェールズの2つのチームはチャーター便を手配しましたが、イギリスの航空当局の許可がおりておらず、南アフリカでの滞在を続けながら早期の帰国を目指しているということです。

このほか、南アフリカで開催中の男子ゴルフの大会でも、10人以上のイギリス選手が帰国のために棄権するなど、スポーツ界でも影響が出ています。

日本人駐在員らからは不安の声

現地の日本人駐在員や家族からは不安の声が上がっていて、水際対策が強化された日本への一時帰国を諦める人も出ています。

このうち、国際機関に勤める柳本恵伸さん(44)は妻と、8歳と6歳の2人の子どもとともに、5年前から最大都市のヨハネスブルクで暮らしています。

柳本さんは、変異ウイルスが確認されたことについて「やはり、大きな衝撃を受けました。具体的にどういった影響があるのかは調査中ということなので、今後、報道などを見ていきたい」と話しました。

家族は、来月上旬から一時帰国を予定していましたが、日本の水際対策が強化され、入国後、10日間宿泊施設にとどまる必要があることから、諦めることにしました。

柳本さんは「水際対策が強化されて待機期間が10日間となり、ホテルの部屋から一歩も出られないと聞いています。特に幼い子ども2人にとって現実的に厳しいと考えて、一時帰国の取りやめを決断しました。2年半ぶりの一時帰国となる予定で、高齢の母親にも会いたかったですし、母親には孫の顔を見せたかっただけに残念です」と話していました。

また、妻の真季さん(40)は「変異ウイルスについてわからないことが多く、心配です。これから実態がわかってくるのではないかと思いますが、耐えて忍ぶしかないと思っています」と話していました。

国際線の乗客からは隔離措置に懸念の声

各国が相次いで南アフリカなどからの入国の制限に乗り出す中、ヨハネスブルクの空港では国際線に搭乗する乗客の間から、到着後に新たに隔離措置を求められることに不安や懸念の声が聞かれました。

ドイツ人の男性は「出張で来ていましたが、きのう予定されていた便はキャンセルになっていました。帰国後に2週間の隔離が設けられますが、しかたないことだと思います」と話していました。

イギリスに住む南アフリカ人の女性は「イギリス到着後にホテルで10日間自費で隔離しなくてはいけなくなりました。そんな費用はありません」と話していました。