南アフリカでワクチンの効果低下させる新たな変異ウイルス発見

南アフリカの保健当局は25日、新型コロナウイルスのワクチンの効果を低下させる可能性がある新たな変異ウイルスが見つかったと発表しました。WHO=世界保健機関はこのウイルスを「懸念される変異株」などに指定するかどうか、検討することにしています。

南アフリカの保健当局は25日、首都プレトリアや、最大都市ヨハネスブルクのあるハウテン州で、新型コロナウイルスの新たな変異ウイルスが検出されたと発表しました。

保健当局によりますと、これまでに国内で確認されたこの変異ウイルスの感染例は77例ですが、検出される割合は急速に増えていて、ハウテン州以外にも広がっている可能性があるということです。

またこの変異ウイルスには、ワクチンの効果を低下させる可能性のある変異があるということで、南アフリカ以外にも隣接するボツワナで検出されているほか、香港でも、南アフリカからの旅行者から検出されたということです。

これについて、WHOで新型コロナウイルス対策の技術責任者を務めるバンケルコフ氏は25日「この変異ウイルスについてわかっていることは少ないが、現在、専門家が治療薬やワクチンの効果にどのような影響があるか、調べている」と述べました。

WHOは、このウイルスを「懸念される変異株」や「注目すべき変異株」に指定するかどうか検討することにしています。

イギリス政府 南アフリカなど周辺の計6か国を渡航禁止に

イギリス政府は、南アフリカで新たな変異ウイルスが確認されたことを受けて、南アフリカやその周辺のボツワナなど合わせて6か国を対象に、現地時間の26日正午、日本時間の26日午後9時から、渡航制限を強化する措置を発表しました。

これらの国々からは直行便が停止され、入国が禁止されます。

また、イギリスに住んでいる人については政府指定のホテルでの隔離が義務づけられることになります。

25日夜、ジャビド保健相はメディアの取材に応じ「この変異ウイルスは、デルタ株よりも感染力が強い可能性があり、ワクチンの効果を弱めるおそれがある」と述べ、対策の必要性を強調しました。

イギリス政府によりますと、新たな変異ウイルスはイギリス国内では今のところ確認されておらず、今回の措置は予防的なものだとしています。

官房長官「緊張感を持って対応」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「新型コロナウイルスの新たな変異株について、南アフリカを中心に感染が広がっているとの報道は承知している。新たに変異株が確認された場合は、その感染性や重篤度、ワクチン効果に与える影響などを評価していくことが重要だと考えており、緊張感を持って対応しているところだ」と述べました。

そのうえで「現時点では空港検疫を含めて日本国内では確認されていないが、引き続きWHO=世界保健機関や諸外国の動向などの情報を収集しているところだ。また、検疫で陽性が判明した検体はすべて国立感染症研究所でゲノム解析を行うとともに、国内におけるゲノムサーベイランスにより変異株の動向を監視している」と述べました。

そして「危機管理の要諦は最悪の事態を想定することだ。水際対策についても、新たな変異株の感染が拡大するなど、状況が悪化する場合には機動的に対処していくことにしており、本件についても迅速かつ適切に対応していく考えだ」と述べました。