日本政府 石油の国家備蓄の一部放出決定を発表 米との協調で

原油価格が高騰する中、日本政府は、アメリカ バイデン政権の要請を受けて、石油の国家備蓄のうち国内消費量の数日分を放出することを正式に発表しました。政府としては、アメリカや韓国など各国と協調姿勢をとることで、原油価格の上昇を一定程度抑えるねらいです。

経済産業省は24日、石油の国家備蓄を放出することを正式に発表しました。

萩生田経済産業大臣は24日、出張先の熊本県で記者団の取材に対し「アメリカや関係国と歩調を合わせ、石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部を売却することを決定した」と述べました。

日本は石油の国家備蓄としてことし9月末時点で145日分を国内で保管しています。

石油の国内需要は減少傾向にあり、備蓄のタンクにある古い石油を新しい石油に入れ替える際にその時期を前倒しして一時的に備蓄量を減らす形で放出すると説明しています。

放出量は数日分、数百万バレルとしています。

石油の放出は法律でガソリンなどの供給不足や地震など緊急時に限定されています。

政府はアメリカからの要請に応じるため異例の対応をとることになりました。

石油の備蓄放出としては2011年6月にリビア情勢の悪化を受けて民間備蓄から出したのが最後で、外国からの要請を踏まえ国家備蓄を放出するのは初めてとなります。

日本政府としては、放出量は限られるもののアメリカや韓国、中国やインド、イギリスと協調姿勢をとることで、原油価格の上昇を一定程度抑えるねらいがあります。

石油の備蓄の方法は

日本政府は1973年に起きたオイルショックの経験を踏まえて、石油備蓄法を制定しました。

国や石油会社などが石油の供給が不足した場合に備えて、石油のほかガソリンや灯油をすぐに供給できるよう国内に保管を義務づけています。

備蓄の方法は、
▼国が備蓄する「国家備蓄」と、
▼民間の石油会社が義務づけられている「民間備蓄」、
▼産油国と協力して国内の石油タンクで備蓄する「産油国共同備蓄」の、
3つがあります。

資源エネルギー庁によりますと、ことし9月末時点の備蓄量は、
▼「国家備蓄」が国内消費量の145日分、
▼「民間備蓄」は90日分、
▼「産油国共同備蓄」は6日分が備蓄されています。

石油備蓄の放出は石油備蓄法によってガソリンなどの供給不足のおそれがある場合や地震や豪雨など災害時に限定されており、価格上昇の対応策としての放出は想定していません。

備蓄した石油を放出したのは過去5回あります。

このうち2011年3月、東日本大震災が起きたときには、東北や関東の製油所の一部が操業を停止するなど、安定的に供給できない状況になったことから、民間備蓄のうち25日分を放出しました。

2011年6月、リビア情勢の悪化を受けて民間備蓄のうち790万バレルを放出したのが最後となります。

外国からの要請を踏まえ国家備蓄を放出したことは過去にありません。

原油価格は世界的な需要の動向や産油国の生産計画などによって大きな影響を受けます。

政府内には備蓄を放出したとしても量は限られるため、ガソリン価格などへの影響は限定的だという見方も出ています。

備蓄 どう放出するのか

今回、経済産業省は石油の国家備蓄の放出にあたり、古い石油を新しい石油に入れ替える際の売却時期を前倒しするという方法で行います。

国はガソリンなどの供給不足や地震など緊急時に備えて石油を備蓄しています。

ことし9月末時点で国内消費量の145日分を保管しています。

保管している石油の一部は年に数回、新しい石油に入れ替えられます。

古い石油は入札によって石油元売り会社や商社などに売却されることになっていて、当初は、来年春以降の実施を予定していました。

経済産業省ではこの入札時期を前倒しして一時的に備蓄量を減らす形で石油の放出を行うと説明しています。

国家備蓄されている国内消費量の145日分のうち数日分、数百万バレルを放出するとしています。

放出される石油は入札によって最も高い価格を提示した会社が購入し、最終的に各地のガソリンスタンドや海外に届けられることになります。

萩生田経済産業大臣は「売却時期、最終的な量については現在精査中だが、いずれも法令に従い、公告入札などの手続きを可能なかぎり早く進めていきたい。引き続き、国際的なエネルギー市場の動向や日本経済に及ぼす影響を注視していくとともに、関係省庁と連携しつつ、産油国に対する増産の働きかけの継続などを着実に講じていく」と述べました。

専門家「無限に備蓄あるわけではない 効果は一時的では」

日本総合研究所マクロ経済研究センターの石川智久所長は、日本政府が石油の国家備蓄のうち一部を放出すると決めたことが、原油価格に与える影響について「インパクトがあったのは事実だが、国家備蓄の量は限られている。無限に備蓄があるわけではないので、効果は一時的にとどまるのではないか」と指摘しました。

また、今後の見通しについては、OPECなどの産油国が増産に踏み切るかどうかを注視する必要があるとしたうえで「北半球はこれから冬を迎えて暖房需要がある。また、再生可能エネルギーが優先され油田の開発が進まないなど供給が増えていかないこともあり、原油価格は下がりにくい状況が続くと思う」と述べました。

そのうえで、市民生活への影響については「原油価格が高止まりしているので、ガソリン価格はなかなか下がらず、軽油など他の燃料も下がらず、消費者の生活はかなり厳しい影響が出てくるのではないか」と指摘しました。

斉藤国交相「価格安定化につながれば」

日本がアメリカなど各国と協調して石油の国家備蓄の一部を放出する方針を決めたことについて斉藤国土交通大臣は、24日の閣議のあとの記者会見で「これまでの石油備蓄の放出の考え方からすれば、今回は初めてのケースになるという認識だ。各国で協調することと相まって価格の安定化につながっていけば」と述べ期待感を示しました。

そのうえで、原油価格の高騰の影響を受けている運送業界などへの支援について「関連する業界は燃料費の値上がりで大変な苦境にある。価格を下げるための補助金の導入や、荷主企業へ燃料サーチャージ制度の説明を行うなど努力を続けたい」と述べました。

立民 福山幹事長「政府はしっかり手当てを」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し「今回はアメリカとの対話も含めて国際的な要請と動向を踏まえて判断されたものだと考えている。最近の石油価格の高騰は国民生活に非常に大きな影響を及ぼしているので、事業者に対する緊急支援やガソリン・灯油の購入費への助成など、政府には、しっかりと手当てができるような政策をとってほしい」と述べました。

公明 竹内政調会長「やむをえない措置」

公明党の竹内政務調査会長は記者会見で「国際問題であり、放出はやむをえない措置だ。政府は、石油元売り会社への補助や農業・漁業への支援など、できるかぎりの手段を尽くして、原油価格の安定に努めるべきだ」と述べました。

一方で、いわゆる「トリガー条項」の発動については「機動性に欠くうえに、価格を上げ下げすることが現場に混乱を与える可能性もあり、慎重に考えたほうがいい」と指摘しました。

国民 玉木代表「効果は限定的」

国民民主党の玉木代表は党の執行役員会で「原油の先物価格は高騰しており効果は限定的だと思う。そもそも法律では価格の安定を目的とした放出は想定しておらず、法律の趣旨に反する可能性さえある。われわれが提案しているいわゆる『トリガー条項』の凍結解除ならば、消費者へのメリットがわかりやすい形で価格を下げることができるので賛同できる各党、各会派に呼びかけ、臨時国会で法案を成立させたい」と述べました。