病院経営状況 新型コロナによる受診控えで悪化も補助金で黒字

病床が20床以上の「一般病院」の昨年度の経営状況は、新型コロナウイルスによる受診控えなどの影響で大きく悪化しましたが、新型コロナ患者の受け入れに対する国の補助金を受け黒字になりました。

医療機関に支払われる診療報酬の改定に向けて、厚生労働省は、昨年度・令和2年度の医療機関の経営状況を調査し、24日に開かれた中医協=中央社会保険医療協議会に報告しました。

それによりますと病床数が20床以上の「一般病院」の収支は、平均で2億2473万円の赤字で前の年度と比べて1億2077万円赤字が増えました。

一方で、新型コロナ患者の受け入れに協力した医療機関などに支給された国の補助金を含めると1321万円の黒字となりました。

経営主体別に見ると、国立病院は平均で5億5540万円の赤字でしたが、補助金を含めると4億1049万円の黒字となりました。

一方、公立病院は9億3874万円の赤字で、補助金を含めても3億1910万円の赤字でした。

また、医療法人が経営する民間病院は191万円の黒字で、補助金を含めると4199万円の黒字となりました。

このほか病床が19床以下の「一般診療所」は、医療法人が経営する診療所が605万円、個人経営の診療所は2231万円のいずれも黒字でした。

また医師の平均年収は、
国立病院の勤務医が1323万円、
公立病院が1472万円、
民間病院が1506万円、
医療法人が経営する診療所は1078万円、
個人経営の診療所は997万円でした。

厚生労働省は「一般病院では、新型コロナ対応のために設備費などの支出が増えた一方、緊急性が低い手術の後回しや患者の受診控えで収入が減り収支が悪化した。今後、補助金を維持すべきか議論を進める必要がある」としています。

日本医師会 中川会長「来年度はちゅうちょなくプラス改定を」

日本医師会の中川会長は、記者会見で「医療現場は、新型コロナウイルスの感染拡大への対応で著しく疲弊しており、来年度の診療報酬改定ではちゅうちょなくプラス改定すべきだ。今後、新型コロナが収束していけば補助金は無くなるため、診療報酬できちんと手当てし、地域医療を立ち直らせることが必要だ」と述べ、医師の人件費などに当たる「本体」部分の引き上げを求めました。

今後の日程

厚生労働大臣の諮問機関である中医協=中央社会保険医療協議会では、24日公表された医療機関の経営状況に関する調査の結果を分析したうえで、来年度の改定率について詰めの議論に入ります。

また、財源の在り方も含めて、厚生労働省と財務省、それに与党側とも最終調整が進められ、政府の来年度予算案が固まる年末までに、診療報酬全体の改定率が決まります。

年明けからは、この改定率をもとに中医協で、手術や検査といった個別の診療行為について、医療保険をどこまで適用するかや、その価格をいくらに設定するかといった具体的な議論が行われます。

そして、年度内に診療報酬の改定案を厚生労働大臣に答申することにしています。

今後の焦点は

来年度の診療報酬改定では、新型コロナウイルスへの対応が求められる中、経営を維持しながら、それぞれの地域で、患者の症状に応じた医療機関の役割分担を進めるための仕組みづくりが焦点になります。

また、政府が打ち出している看護師の処遇改善に必要な財源を、どのように確保するのかも焦点です。

さらに、来年度からの不妊治療への保険適用に向けて、対象となる診療行為をどこまで広げるかに加え、新型コロナ対策として、時限的に初回の診療から認められている「オンライン診療」の恒久化や、家族の介護や世話などをしている子ども、いわゆる「ヤングケアラー」の支援に取り組む医療機関への診療報酬の加算についても、検討が進められる見通しです。