コンテナ不足 世界の物流混乱 国連“世界経済の回復に影響も”

世界的なコンテナ不足を背景にした物流網の混乱の影響が広がっています。国連はコンテナ船の運賃の高騰が続けば2023年までに世界の輸入価格を11%ほど押し上げ、コロナ禍からの回復に影響しかねないとする報告書をまとめました。

世界の物流網をめぐっては経済活動の再開に伴って中国や東南アジアから欧米などに運ばれる荷物が急増し、世界的なコンテナ不足や運賃の高騰を招いています。

UNCTAD=国連貿易開発会議は18日、海上輸送に関する報告書を公表し、この中でコンテナ運賃の高騰は去年の後半から始まり、コンテナだけでなく労働者の不足もあって各地の港が混雑し輸送の遅れにつながっていると指摘しています。

そのうえでコンテナ運賃の高騰が続けば2023年までに世界の輸入価格が10.6%上昇し、輸入品の価格上昇を通じて消費者物価を1.5%押し上げる可能性があると試算し、コロナ禍からの世界経済の回復に影響しかねないとしています。

特に発展途上国のうち海上輸送での輸入に頼っている島国が最も大きな影響を受け、輸入価格の上昇幅は24.2%に上るとしていて、UNCTADのレベッカ・グリンスパン事務局長は「運賃の高騰は海上輸送が正常に戻るまで貿易に大きな影響を与え、特に発展途上国の社会経済の回復の妨げになるだろう」と警鐘を鳴らしています。

そしてUNCTADはコンテナ船の運航会社や荷主、港湾当局などが情報を共有し輸送の効率性を高めていくべきだとしています。

ロシア極東の港も混雑

世界的な物流網の混乱に伴う港の混雑はロシア極東のウラジオストクの港でも起きています。連日、中国などから貨物船が入っていますが、荷物をさばききれず複数の船が沖で待機を余儀なくされる状態になっています。

混雑の背景にはヨーロッパの経済活動の再開に伴って中国などからの荷物が増加していることがあります。
通常、中国や東南アジアからヨーロッパに運ぶ荷物はスエズ運河を経由した海上輸送が主流です。

しかしコンテナ不足やそれに伴う運賃の高騰を背景にシベリア鉄道を利用して陸路でヨーロッパに輸送する需要が増えていて、そのための荷物がウラジオストクの港に集まっているということです。

ロシア鉄道によりますと、ことしに入って9月までにロシアを経由して中国とヨーロッパの間で輸送された荷物の量は1年前の同じ時期と比べて47%増えたということです。陸路の輸送は海上輸送に比べて所要日数が短いという利点があります。
ただウラジオストクの物流業界で20年以上働いているという貿易会社のニコライ・バラーキン社長は、港の混雑によって配送に2か月ほど遅れが出て混乱が起きているとしています。

バラーキン氏は「すべての荷主がじりじりしています。なんとかして状況を打開するしかないですが今後、半年くらいこの危機が収まる見通しはありません」と話していました。