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“崖っぷち”で見えた光 サッカー日本代表 W杯への道

“崖っぷち”の闘いが続いている。
2022年ワールドカップカタール大会のアジア最終予選に臨んでいるサッカー日本代表。最終予選10試合のうち6試合を終え、出場権獲得圏内の2位につけているが、3位のオーストラリアとの勝ち点差はわずか「1」。ワールドカップカタール大会は来年11月の開幕まで1年。日本代表の現在地を見つめながら課題を探る。
(スポーツニュース部 記者 武田善宏)

カタールへの道

ワールドカップカタール大会は、来年11月21日に開幕。中東で初めて開かれる大会だ。厳しい暑さを考慮して1930年の大会がスタートして以降初めて“冬”の開催となり、ホスト国のカタールを含む32チームが頂点を争う。
すでに南米のブラジルやアルゼンチン、ヨーロッパからは世界ランキング1位のベルギー、前回の2018年ロシア大会優勝のフランスなどが出場を決めている。

一方で、混戦が続いているのが出場枠「4.5(+カタール)」を争うアジアだ。最終予選に出場する12チームは、6チームずつAとBの2つのグループに分かれてホーム&アウェー形式で対戦。各グループの2位までが無条件で出場権を獲得し、3位のチームはアジアプレーオフで対戦。それに勝ったチームが大陸間プレーオフでワールドカップ出場を目指すことになる。

グループBの日本は、10試合中6試合を終え現在2位。出場権獲得圏内にいるとはいえ決して予断を許さない状況だ。
FIFA=国際サッカー連盟が11月19日に発表した最新の世界ランキングによると日本は26位。アジアでは21位のイランに次ぐ2番目となっている。最終予選で出場権を争っている同じグループBのチームは、
オーストラリアが35位(現在グループ3位)
サウジアラビアが48位(同1位)
中国は74位(同5位)
オマーンは78位(同4位)
ベトナムは99位(同6位)という状況だ。

ランキングではグループ最上位の日本が、なぜ苦しんでいるのか。
最終予選の序盤の“つまずき”が理由というのは言うまでもない。

9月2日、ホームで行われた初戦のオマーン戦は0対1で敗戦。
第2戦で中国には1対0で勝利したものの、10月にアウェーで行われた第3戦でサウジアラビア戦に0対1で敗れて1勝2敗。
この時点で4位と出場権を与えられる2位との勝ち点差が「6」にまで広がってしまった。
キャプテン DF 吉田麻也選手
「次のオーストラリア戦には勝つしかない。もし結果が出なければ監督、選手は責任を取る覚悟ができているが、まだ最終予選は終わっていない。ホームで確実に勝利しなければならない」

苦境を救った「東京五輪世代」

苦境にあえぐ日本代表の中で台頭してきたのが、24歳以下の東京オリンピックの代表選手たちだ。

10月12日の第4戦、オーストラリアとの試合では23歳の田中碧が躍動した。最終予選初出場ながら前半8分に先制ゴール。持ち味の運動量で守備にも貢献。精度の高いパスも散らして攻守にわたって存在感を示し続けた。
MF 田中碧選手
「先輩たちの経験もすごく大事だけど若い選手の勢いも大事だと思う。そういうものを出せればと思っていた。これから簡単な試合は1つもないが日本がワールドカップに行くことが何よりも重要なのでもっと成長して引っ張って行くくらいの立場になりたい」
日本は11月11日の第5戦でベトナム戦1対0で勝利。続く17日(日本時間)の第6戦オマーン戦は24歳の三笘薫が続いた。

三笘はスピードと巧みな技術を駆使したドリブル突破からのシュートやパスが持ち味。森保監督はサイドからの攻撃を強化しようと後半開始から三笘を投入。その直後、三笘は最初の攻撃で左サイドからスピードに乗ったドリブルで相手の選手を抜くなど攻撃を活性化させた。そして36分、クロスボールをあげ決勝点をアシスト。監督の起用に応えた。
MF 三笘薫選手
「勝利することが一番大事なのでアシストで貢献できてよかった。ただ、この試合でそこまで周りの評価も変わると思っていないし、より競争が激しくなると思っているのでそこに勝っていけるようにしたい。(田中)碧の活躍はもちろん刺激になっているし、僕ら東京世代がやらないといけないと常に思っている」

厚み増す選手層 新戦力とベテランが“融合”

若い力が台頭する一方で、今の日本代表では経験豊富なベテラン勢も存在感を示している。

森保監督は、最終予選のここまで6試合すべてで35歳の長友佑都と31歳の大迫勇也を先発起用。大迫は、まだ1得点にとどまるが、体を張ったポストプレーや献身的な守備で貢献している。

そして過去ワールドカップに3大会出場している長友。今月16日のオマーン戦で、相手の陣地深くまでオーバーラップしてクロスボールを上げ、得点のチャンスを作るなど活躍を続けている。
パフォーマンスが落ちれば年齢を理由に批判を浴びやすい立場にあることは理解しているが、ポジションを譲る気はさらさらないという。
DF 長友佑都選手
「(前回2018年)ロシア大会の前から『おっさん、おっさん』と言われていたのでもう免疫がついている。おっさんの力を見せつけてやるという気持ちが芽生えている。若い選手たちに負けずに強いエネルギーで戦いたい」
新戦力とベテランが融合し日本は、第4戦から3連勝。
特に勢いのある若手が台頭してきたことにキャプテンの吉田麻也は手応えを感じている。
吉田は、オーバーエイジ枠として田中や三笘とともに東京オリンピックに出場。3位決定戦で敗れてメダルを逃した直後に「ここがゴールじゃない。この中から1人でも多くフル代表に入ってワールドカップに導いてほしい」と若い選手たちに言葉を投げかけていたのだ。
その言葉に応えるかのように、田中や三笘は海外のチームに移籍。実力を磨いて日本代表に選ばれ活躍するようになった。
キャプテン DF 吉田麻也選手
「(2人の活躍は)率直にうれしい。こういう選手が出てこないといけないとずっと思っていた。ただ、厳しく言えばここから。相手も情報をインプットしてマークしてくると思うので、その中でも結果を出し続けてほしい」

1年後の舞台見据え 厳しさ増す最終予選

1年後、ワールドカップの本大会は、短期間で試合が続く。
日本が目標とする過去最高のベスト8以上の成績を残すためには、連戦の疲労やけがなども考慮し、メンバーを入れ替えながら戦う必要があるため「選手層の厚さ」がカギになる。
ロシア大会で主力として活躍した柴崎岳はアジア最終予選が始まる前、こう話していた。
MF 柴崎岳選手
「ロシア大会からずっと一貫して言っているが選手層(がポイント)。ベンチのメンバーを含めて、いろんな選手が出てチームとして安定して戦っていかないといけない」
アジアの闘いを勝ち抜きつつ、本大会も見据えて選手層に厚みを持たせるという課題に向き合っている森保監督。「ポジション争いはニュートラルに見て今後決めていきたい」と話し、これからの選手間の競争を促している。

最終予選は、次の第7戦が来年1月27日でホームで中国と対戦。
第8戦は2月1日、サウジアラビア戦(ホーム)、
第9戦は3月24日、オーストラリア戦(アウェイ)、
そして最終第10戦は3月29日、ベトナム戦(ホーム)だ。
日本代表 森保一監督
「油断や隙を見せればすぐに順位は入れ替わる。目の前の試合に全力で挑み、最後まで戦い抜く」
残りの4試合中、ホームが3試合とはいえ、勝ち点を1つでも落とせば順位が入れ替わる可能性があり、まさに“崖っぷち”の闘いが続く日本代表。選手たちの間では本大会での代表メンバー入りにつなげようと競争が激しくなることは必至だ。
こうした厳しい闘いを乗り切って7大会連続の出場を勝ち取ることができれば、1年後の舞台で日本が目標のベスト8以上をつかむ大きな原動力になるかもしれない。
スポーツニュース部 記者
武田善宏
2009年入局 鹿児島局、福岡局をへて現所属。プロ野球担当のあと去年夏からサッカー担当。

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