コロナ感染者数 北海道で徐々に増加 専門家「今後に注視を」

新型コロナの感染者数は、全国的にはことしに入って最も少ないレベルですが、その中で北海道では今月に入って徐々に増加してきています。北海道では、気温が低い時期には各地に先行して感染が広がる傾向があり、専門家は、感染拡大の第6波につながらないか、注視する必要があると指摘しています。

新型コロナの新規感染者数は、全国では感染拡大の第5波の最中だったことし8月下旬から、12週連続で減少し、ことしに入って最も少ない水準となっています。

北海道でも、8月18日の595人をピークに先月下旬までは減少傾向で、1週間平均で1日当たりの新規感染者数はおよそ8人でしたが、今月に入って前の週を上回る傾向となり、19日の時点ではおよそ20人となっています。

北海道では、気温が低い時期には各地に先行して感染が拡大する傾向が見られ、去年2月下旬には国内で最初に感染拡大し、その後、3月中旬以降、東京都で感染が拡大しました。

また、去年冬の感染拡大の「第3波」では、北海道では10月下旬から感染者数の増加が始まり、東京都では11月中旬以降、増加が始まりました。

専門家は、この冬はワクチン接種が進み、一定程度、感染拡大が抑えられるとみられる一方、密閉された室内で過ごす時間が長くなると感染リスクが高まるため、感染拡大の「第6波」につながらないか、北海道での感染状況を注視する必要があるとしています。

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「全国で見ると、順調に感染者数のコントロールができているが、北海道はここ2週間、増加傾向が続き、リバウンドの兆候が見え出したような状況がある。ここから1週間、2週間、感染状況がどう動くのか、非常に注意しないといけない」と話しています。

北海道 全国に先行し感染が拡大する傾向

去年冬の感染拡大「第3波」の際には、北海道では、全国や東京都などに比べ2週間ほど先行して感染が拡大する傾向が見られました。

北海道では、去年10月下旬から1週間平均の新規感染者数が前の週との比較で増え始め、10月19日には1日の新規感染者数が17人だったのが、11月20日には304人となりことし2月上旬まで100人前後の日が続きました。

一方、東京都では去年11月上旬には1日の新規感染者数は100人前後でしたが、11月中旬には前の週との比較で増加が見え始めるようになり、さらに12月中旬には増加傾向が明確になって、ことし1月7日には1日で2520人とそれまでで最も多い感染者数となりました。

全国で見ても、増加が顕著になったのは去年11月中旬以降で、去年11月上旬までは1日の新規感染者数は1000人未満だったのが、11月下旬に2000人、12月末には4000人となり、ことし1月8日には8000人近くにまで上りました。

また、去年2月下旬に国内で最初に感染が広がったのも北海道で、2月28日には独自の緊急事態宣言を出して外出の自粛を呼びかけました。

このときも東京都で感染が拡大したのは、3週間余りのちの3月下旬以降で、その後、4月上旬には初めての緊急事態宣言が出されました。

「密閉・密集・密接」を避け、換気含めた対策を

新型コロナウイルスは、空気がよどみやすい閉めきった環境で感染しやすいことが分かっていて、気温が低い冬は換気の機会が少なくなり、感染リスクが高まりやすいと指摘されています。

閉めきった環境で感染しやすいことが最初に分かったのは、去年2月の「さっぽろ雪まつり」のときで、閉めきった休憩所で暖を取っていて感染が広がったケースなどがあったことを受けて、専門家が分析した結果、密閉された空間で一定の時間、ウイルスが含まれたごく小さな飛まつがしばらく漂い、それを吸い込むことで感染することが分かりました。

これをもとに、手洗いや消毒、マスクなしでの会話を避けることに加え、「密閉・密集・密接」の3密を避けるという対策が行われるようになりました。

また、換気することで感染リスクが下がるということも分かっています。

しかし、気温が下がる冬は室内での活動が増え、年末に向けて忘年会やクリスマス、正月休みなどで人と人との接触の機会が増えるため、感染リスクが高まるおそれがあるとして、厚生労働省の専門家会合は換気を含めた基本的な対策を徹底するよう呼びかけています。

ことしの冬はワクチン接種が進み、2回の接種を終えた人は全国で75%を超え、一定程度感染拡大が抑えられるとみられる一方、接種していない人での感染や接種を終えた人でも感染する「ブレイクスルー感染」が一部で起きることから、専門家会合は接種を終えた人を含めて引き続き、対策をとることが必要だとしています。

道対策本部「一気に感染が拡大する兆候ない」

北海道内の感染状況について、道の新型コロナウイルス感染症対策本部は「クラスターの発生が感染者を増やしている」としたうえで「市中で広がっている状況にはなく、一気に感染が拡大するような兆候は今のところ見られない」との認識を示しました。
道内では、1日の新たな感染者が、今月16日におよそ1か月ぶりに30人を超えるなど、前の週の同じ曜日より感染者が多くなる日が増えています。

この状況について、道の新型コロナウイルス感染症対策本部は、NHKの取材に対し「一気に感染が拡大するような兆候は見られていない」との認識を示しました。

その理由として、感染者が増えているのは、札幌市と旭川市が中心だと指摘したうえで、札幌市については「医療機関でクラスターが発生したことで感染者が増えたが、現段階では市中で広がっているような状況ではない」としています。

また、旭川市についても「飲食店などでクラスターが発生していて、感染者が今後も散発的に出ると思われるが、感染が一気に拡大する兆候は見られていない」としています。

さらに、新たに感染しているのは、ワクチンを接種していない人がほとんどだとしています。

北海道では、保健所で感染者や濃厚接触者に話を聞くなどして、感染経路をつきとめ、感染の拡大を防ぐためのクラスター対策を行っているほか、道は基本的な対策を徹底するよう呼びかけています。

道の感染症対策本部は「今後も新規の感染者が増え続けるようであれば、第6波の入り口ということにもなりえるので、感染状況を引き続き、注視していきたい」としています。

東邦大 舘田一博教授「基本的な感染対策の徹底を」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「北海道では去年も11月から12月にかけて、全国に先駆けて感染の増加が見られる兆候があった。いろいろな考え方はあるが、寒くなると、ウイルスは排出されたあとも空気中でしばらく漂いやすくなるし、乾燥すると人の気道の粘膜が傷ついて、そこにウイルスが付着すると感染が起きやすくなると考えられる。人々が密閉した空間の中で長期間滞在し、感染のリスクの増加につながる可能性が考えられる」と話しています。

また「市中にウイルスは存在していて油断していると増加してきてしまう。感染が高まってくる時期にさしかかっており、マスクを着用し、3密を避けること、換気をしっかり行うことなど、基本的な感染対策の徹底を心がける必要がある」と話しています。