円相場1ドル=115円目前でノックアウト!?【経済記者コラム】

金融市場の動きを読み解く「マーケット興味津々」のコーナー。11月15日からの週で注目といえば円相場でしょう。17日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=115円を超える円安になるかどうか、投資家も、私たち金融を取材する記者も固唾をのんで市場の動きを見つめていました。結局、このとき1ドル=114円97銭と、すんでのところで超えなかったのですが(19日午後8時現在)、市場関係者からは「ノックアウト」がブロックしたとの声が。ノックアウトとは何なのでしょうか。(経済部記者 白石明大)

円安基調が強まったきっかけは日本時間の16日午後10時半に発表されたアメリカの10月の小売り売上高。

前月比でプラス1.7%。市場予想の1.2%を上回りました。

また、企業の生産を示す「鉱工業生産」も前月比でプラス1.6%。

5日に発表されたアメリカの雇用統計も好調だったことから、アメリカ経済の順調な回復が確認されました。

FRB=連邦準備制度理事会が利上げの時期を早めるのではないかとの見方が強まり、日米の金利差の拡大からドルが買われて、円が売られる展開となりました。

17日は1つの節目である1ドル=115円台をつけそうだとの展開となり、私たち金融を取材する記者たちは朝から市場の動きを警戒していました。

じりじりと円安が進んでいきましたが、1ドル=114銭97銭と、すんでのところで為替のグラフは下向き(円高)に方向転換していったのです。

節目を超えそうで超えない動き。なんとももどかしいものですが、為替のトレーダーに取材すると「『ノックアウト・オプション』がブロックして、1ドル=115円目前で失速していますね」との答えが返ってきました。

「ノックアウト・オプション」とは何なのか。

これは取り引きに対するリスクを一定の範囲内に抑えることができるオプション取り引きの1つです。ノックアウトオプションでは「ノックアウト(=損切り)価格」を設定することによって、自動的に損失を確定することが可能です。

例えば、為替が1ドル=115円を超えると損失が大きくなるトレーダーが、114円90銭にノックアウト価格を設定しておき、為替が円安に振れてその価格に達すると自動的にドル売り円買いが発注される仕組みです。

この「ノックアウトオプション」が1ドル=115円の防波堤として機能していたと市場関係者は見ていたわけです。

今の円安傾向、金融関係者はどう受け止めているのでしょうか。大手銀行幹部に取材すると懸念の声が聞かれました。

「従来は円が安くなれば輸出企業に有利で企業の収益が拡大すると言われてきたが、もうそういう状況じゃない。いまや円安はエネルギー価格、原材料の値上がりとなり、多くの製造業にとっても難しい環境になっている。今の水準以上に円安が進むとこのネガティブな要素がさらに拡大し、日本経済全体にとっても良くないだろう」

円安は輸入物価を押し上げ、身近な食品の値上げにもつながっています。
「ノックアウト」で円安をブロックして欲しいと願っているのは為替トレーダーだけでなく、消費者も、なのかもしれません。

注目予定

来週は日本で緊急事態宣言が解除されてから、個人消費がどこまで回復したかを見通す上で重要な「コンビニエンスストア売上高(10月)」や「デパート売上げ(10月)」などが公表されます。

2022年2月に任期満了となるFRBのパウエル議長。

その後任人事を巡ってバイデン大統領が16日、「4日ほどのうちに決める」と発言したとの報道が伝わり、市場の大きな関心事項となっています。