1年以上の「長期失業者」月平均66万人 失業長期化の傾向

仕事を失った状態が1年以上続いている「長期失業者」は、総務省の労働力調査でことし7月から9月は月の平均で66万人に上り、去年の同じ時期より18万人増えたことがわかりました。総務省は新型コロナウイルスの影響による求人の減少などで失業が長期化する傾向が続いているとしています。

総務省が行った「労働力調査」によりますと、働く意欲はあるのに仕事が見つからない「完全失業者」はことし7月から9月は月の平均で191万人で去年の同じ時期より11万人減りました。

このうち、仕事を失った状態が1年以上続いている「長期失業者」は66万人に上り、去年の同じ時期より18万人、率にして37.5%増えました。

「完全失業者」のうち、「長期失業者」の割合は34.6%で新型コロナウイルスの感染拡大以降で最も高くなっています。

厚生労働省によりますと、仕事を失った人を支えるための雇用保険の失業給付は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた特例が設けられていますが、長い人でも360日で給付期間が終わります。

支援団体によりますと、長期失業者が生活に困窮するケースは多いということです。

総務省は「雇用調整助成金などの国の支援策で失業者の大幅な増加は抑えられている一方で、求人の減少で再就職が難しいことなどから、失業が長期化する傾向が続いている」としています。

厚生労働省は、ハローワークなどで企業の求人を開拓する取り組みを続けるとともに、相談の体制を拡充するなど再就職の支援を強化しています。

ハローワークの窓口では…

東京都内のハローワークを利用する人からは「失業の状態が長くなり、仕事が見つかるのか不安が大きい」などという声が聞かれました。

東京 大田区の「ハローワーク大森」には新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人などが多く訪れ、求人の内容を確認したり、窓口で再就職の活動の相談をしたりしていました。

50代の男性はIT関係の会社でシステムエンジニアとして働いていましたが、新型コロナウイルスの影響で仕事を失い、失業期間が半年以上になるということです。

50代の男性は、「もう若くはないので企業に採用されず厳しい状況が続いています。フリーランスの求人もありますが、健康保険料などの負担が大きくなりますし、企業に雇用されて安定して働きたいです。今は貯金を取り崩していて残りは30万円くらいなので、なんとか年末までに仕事を見つけていい正月を迎えたいです」と話していました。

1か月余り前まで保険関係の会社で営業の正社員として働いていたという30代男性は、「仕事は選ばなければあると思っていますが、今の生活水準を落としたくないし、キャリアアップを考えると迷って決断できないです。正直すぐにでも仕事を始めたいですが、再就職まで時間がかかりそうなので、アルバイトをしながら活動を続けていこうと思います」と話していました。

印刷関係の仕事を失った後、およそ8か月仕事を探しているという50代の男性は、「仕事が見つからないため焦っている状態です。働く意欲はありますが、今後への不安が大きくて眠れないときがあります。コロナ禍が早く終わり景気がよくなってほしいです」と話していました。

求人回復傾向も飲食業やサービス業などで厳しい状況続く

ハローワーク大森によりますと、経済活動が再開する動きがあり、企業からの求人は回復する傾向にはあるものの、飲食業やサービス業など一部の業種では厳しい状況が続いていて、失業が長期化する傾向があるということです。

「ハローワーク大森」の富樫久美職業相談部長は、「再就職が難しく困っている人が多いと感じます。求職者に寄り添い相談に応じるとともに就職面接の指導を丁寧に行うなど、再就職に向けた支援を続けていきたい」と話していました。

厚生労働省 長期失業者の支援強化

厚生労働省は新型コロナウイルスの影響が続く中、失業が長期化する人などを対象に支援を強化しています。

再就職が難しく生活が困窮する失業者などを対象に、全国の社会福祉協議会を窓口に当面の生活費を借りることができる制度を設けて活用を呼びかけています。

「緊急小口資金」は20万円を上限に、「総合支援資金」は2人以上の世帯の場合、1か月20万円を上限に3か月間借りることができ、いずれの制度も無利子です。

また雇用保険に入っていなかったり、失業給付の期間を終えたりした人が、月10万円の給付金を受け取りながら職業訓練を受けることができる「求職者支援制度」を設けています。

厚生労働省は全国のハローワークで企業からの求人を増やすための取り組みを続けるとともに、相談の体制を拡充するなど再就職の支援を強化しています。

専門家「経済活動再開しても取り残される人 多くでる懸念」

生活に困窮する人の支援に詳しい大阪市立大学の五石敬路准教授は、今回の総務省の調査を分析すると、40代から50代を中心に失業が長期化する傾向があるとしたうえで「長年勤めていた会社をやめた人が、それまでの賃金水準に見合い、培った技術を生かすことができる仕事を見つけることは難しいことが背景にある」と指摘しています。

そのうえで、「仕事が見つからず収入がない期間が長期化するほど借金が増えたり、健康や精神状態に不調をきたしたりして、仕事を見つけることがさらに難しくなり、以前の生活に戻ることができなくなる。感染が落ち着き経済活動が再開しても取り残される人が多くでる懸念があり、セーフティーネットの充実など支援を強化する必要がある」と指摘しています。