ガソリン価格 11週ぶり値下がりも2014年以来の高値水準続く

レギュラーガソリンの小売価格が11週ぶりに値下がりし、全国平均で1リットルあたり168.9円となりました。一方で、値下がり幅は0.1円で、依然として2014年以来の高値水準が続いています。

経済の回復に向けて動き出そうとしている各地で広がる影響や寄せられた不安の声、それに経済産業省や農林水産省が打ち出した対策についてまとめました。

国の委託を受けてガソリン価格を調査している石油情報センターによりますと、15日時点のレギュラーガソリンの小売価格は全国平均で1リットルあたり168.9円と先週より0.1円値下がりしました。

レギュラーガソリンの小売価格が値下がりに転じるのは11週ぶりです。

これは世界的な経済活動の再開に伴って原油の先物価格が高止まりする中、市場の予想を上回る量の原油の在庫がアメリカで積み上がっていることがわかり、先物価格がわずかに下落したことが要因です。

ただ、経済の回復によって原油の需要が高い状況は変わっておらずガソリンの小売価格は2014年以来の高値水準が続いています。
一方、灯油の店頭価格は全国平均で18リットルあたり1950円と、前の週と比べて1円値上がりし、2008年以来13年ぶりの高値水準となっています。
今後の見通しについて、石油情報センターは「世界の大きなトレンドとしてはコロナ禍からの回復で原油の需要が高い状態が続いている一方、一部の国では再び感染が広がっていて、需給のバランスを注視する必要がある」と話しています。

続く価格高騰 各地から不安の声 対策求める声も

ガソリンを始め、農業や漁業に使う重油、家庭用の灯油などの燃料費が高騰していることについて各地からは不安の声や国などに対し対策を求める声があがっています。

北海道 東北

【北海道釧路市の水産加工会社では】

北海道で赤潮の影響が続く中、釧路市の水産加工会社ではウニなどの仕入れが難しくなっているのに加え、原油の高騰で発送用の発泡スチロールの箱も値上がりし“二重の打撃”を受けています。
商品の発送に使う発泡スチロールの箱も16日から1箱あたり15円ほど値上がりしたため会社では一部の商品で発泡スチロールから段ボールに切り替えるなどしてコスト削減を図っているほか、商品の値上げをできるだけ避けようと、詰め合わせの内容を一部、干物などの加工品に変更するなど、ギリギリまで経営努力を続けたいとしています。

【秋田市の介護施設では】

秋田市の介護施設「楽土デイサービス広面」では、利用者の送迎のため、3台の車を使って遠いところで往復1時間以上かかる地域から施設まで毎日往復しています。
ガソリン代の支払いは去年の同じ時期よりも20%以上増えていて、施設は効率のよい送迎ルートを検討するなどしています。
施設運営会社の大山貴裕代表は「いろいろと試行錯誤しているが、自分たちでできることには限界がある。提供するサービスの低下だけは避け、どうにか乗り切りたい」と話していました。

【山形県東根市のさくらんぼ農家は】

さくらんぼ農家の須藤一元さんの農園には7つのハウスに灯油と重油を燃料とする13台のボイラーが設置されています。須藤さんによりますと、この地域の灯油価格は1リットルあたり100円程度と去年の同じ時期より30円ほど値上がりしているということです。
農園では1か月あたり灯油と重油を合わせておよそ1万リットルを使うため、1か月で30万円ほど負担が増えるということです。
須藤さんは「少しでも経費を削減しながら頑張っていきたい」と話していました。

【仙台市のガソリンスタンド利用者は】

仙台市青葉区のガソリンスタンドでは、レギュラーガソリンの価格が17日時点で1リットル169円となっていました。村田町の40代の男性は「急加速を減らすなどの運転を意識するようになりました。ガソリン価格の高止まりは家計にも影響が大きいです」と話していました。
仙台市の70代の女性は「灯油も高いので暖房器は電気で動くものを使うようになり大きな買い物も控えるようにしています」と話していました。
また利府町の40代の女性は「ガソリンを給油するときは満タンにしないようにしています。以前のようにガソリン価格が安くなってほしいです」と話していました。

関東甲信越

【水戸市の納豆メーカーは】

特産の納豆を製造しているメーカーでは、納豆を入れるパックやフィルムなどに石油由来のプラスチック製品を使っていますが先月パックなどを仕入れている企業から「次の取り引きから容器類を5%から10%程度値上げする」と伝えられたということです。
メーカーでは、消費者の買い控えを懸念し容器代の値上がりなどを商品価格に上乗せすることは今のところ考えていないものの、原油価格の高騰が長引く場合には値上げを検討する必要も出てくるとしています。
「だるま納豆」の高野友晴社長は「値上げへの消費者の意識を見極めながら製造段階で経費削減するなどして対応していくしかない」と話しています。

【栃木県那須塩原市のイチゴ生産現場では】

24棟のハウスでイチゴを栽培している菊池宏さん(64)は、冷え込みが厳しい出荷シーズンの秋から春ごろにかけボイラーでハウスの温度を上げるため重油を使いますが、去年のこの時期の重油の購入価格と比べことしはおよそ1.5倍になる見通しで負担は30万円以上増えそうだということです。
こうした負担を少しでも減らそうと、菊池さんは出入り口のシートを三重にして、温かい空気をできるだけ外に逃がさないよう工夫しています。
菊池さんは「農産物の場合、コスト上昇分を価格に転嫁するのは難しい。ほかの資材や肥料なども値上がりしており、国は価格の安定にもっと力を注いでほしい」と話していました。

【群馬県渋川市の伊香保温泉では】

原油価格の高騰が続く中、温泉旅館「美松館」では、重油を地下の5000リットルのタンクに保存していますが、原油高騰に伴う値上がりで月に10万円近く負担が増えています。宿泊代への上乗せは考えていませんが今後寒くなり源泉の温度が下がると重油の使用量も増えるため、さらなる負担増を心配しています。
「美松館」の高橋秀樹社長は「新型コロナの時は冷や汗をかいていたが、お客様が出向く時期にこういう状況になってしまい、今度はあぶら汗をかくのではと心配している。私たちもお客様に迷惑がかからないように頑張りますが、政府も早く対応してほしい」と話していました。

【千葉県 銚子漁港は】

地元漁協によりますと原油価格高騰による水産物の水揚げ量や価格に今のところ影響はないものの、漁船の燃料が先月よりおよそ20%値上がりしていて漁業者の中には燃料を節約する人も出ています。
また水産物の卸売業者によりますとこん包資材を扱う会社などが来月から一斉に値上げすることになり、魚を詰める発泡スチロール容器が平均でおよそ16%値上げになるということです。
水産物卸売業の島田政典さんは「衛生管理しながら消費地に送っている中、毎日のコストとしてかなり重くのしかかってくる。この声をどこに届けたらいいのか不安です」と話していました。

【東京 杉並区の銭湯では】

昭和24年創業の銭湯では、お湯を沸かすための燃料に使う重油にかかる費用が、去年の同じ時期よりおよそ1.5倍に増加しているということです。気温が下がる冬場は、燃料が夏場と比べて2倍近く必要になり、よりコストがかさむということで店主は不安を募らせています。
銭湯の入浴料は東京都によって決められていて、店の判断で値上げはできませんが、店主は値上げするような状況になる前に原油価格の高騰に歯止めがかかってほしいと考えています。

【新潟市のチューリップ農家は】

新潟市南区の高野博さんの農業用ハウスでは、毎年秋になると、暖房を使って栽培を進めています。暖房の燃料は灯油で、高野さんは近隣の生産者の分も合わせて仕入れを担っていますが、先月中旬の時点で1リットルあたりの仕入れ価格は88円と、去年の同じ時期と比べて30円上昇しました。
さらに原油高などで燃料代が上乗せされ、主にオランダなど海外から船で球根を輸入する際の仕入れ価格が去年の同じ時期と比べて15%ほど高くなっているといいます。
高野さんは「灯油代は昨シーズンより少なくとも200万円は多くかかる見込みです。この状況が続けば経営が立ち行かなくなるかもしれません」と話しています。

東海・北陸・近畿

【石川県 中小企業の特別相談窓口開設の動きも】

原油価格の上昇が続く中、中小企業の資金繰りなどの相談に応じようと、金沢市に本店がある「はくさん信用金庫」は、先週から県内22の店舗すべてに窓口を設け、原油価格の上昇に伴う資金繰りなどの相談に応じています。相談窓口は来年3月まで、平日午前9時から午後3時まで開設されます。
「はくさん信用金庫」融資部の徳田一樹副部長は「新型コロナの影響が続く中での原油価格の上昇で、県内の企業にも大きな影響が懸念されます。個々の顧客の実情に応じた支援を行いたい」と話していました。

【岐阜県有数の寒冷地では】

県内有数の寒冷地、高山市の郊外の丹生川町に住む堺俊行さん(73)は、自宅と併設している雑貨店で8台の灯油ストーブを使っていますが灯油を購入している店の配達価格は去年の同じ時期と比べておよそ1.6倍に値上がりしこのままの水準で推移した場合、この冬の暖房費は例年より17万円ほど増える見通しだということです。
堺さんは灯油の消費量を抑えるため暖房の温度設定を見直したり家族が1つの部屋で過ごしたりといった対策を考えているということです。
堺俊行さんは「これからさらに寒くなるので大変です。去年とおととしはマイナス14度になった日もあったので、暖房なしは考えられません。ことしは灯油を節約しないといけないです」と話していました。

【静岡市葵区のバラ園では】

年間およそ1万本を出荷している「森田バラ園」の代表の森田剛司さんによりますと、バラの栽培は1年を通じて農業用ハウスの中の気温を16度以上に保つ必要があり、冬を迎えるこれからの季節は室内をあたためる暖房用の重油が欠かせません。
「森田バラ園」では、冬の最も寒い時期には1日およそ200リットルの重油を使用しますが、仕入れている重油の価格は比較的値段の高かった去年に比べても3割ほど高い状態になっているということです。
森田さんは「現在は業務用エアコンを使って室内をあたためていますが、来週から気温が下がる見込みなので暖房能力の高い重油が欠かせません。高止まりが続けば死活問題になりかねないので、良質なバラを届けるためにも重油の価格が下がることを期待したいです」と話していました。

【兵庫県 淡路島のクルーズ船運航会社は】

3隻のクルーズ船を運航する会社は、原油価格の高騰で燃料の軽油が1年前に比べ1.5倍に値上がりしていて、会社の社長は「新型コロナの感染者が減少し、お客様が戻ってきたなか大きなダメージだ」と訴えています。
会社によりますと、去年の6月ごろから燃料の軽油の値上がりが続き、現在の価格は去年の同じ時期のおよそ1.5倍になっているということです。
「ジョイポート南淡路」の鎌田勝義社長は「せっかくお客様が戻ってきたところなのに、原油の価格高騰は大きなダメージです。国や自治体には緊急的な支援を検討いただきたいです」と話していました。

中国・四国・九州

【山口 下関市のタクシー会社では】

80台余りの車両を保有している下関市のタクシー会社では1台あたり1日100キロから150キロを走行していて、燃料となるLPガスの1リットルあたりの価格が去年と比べて20円ほど値上がりしたため、1か月の燃料費は最大で600万円増える見込みです。
一方で、タクシー運賃は国土交通省が地域ごとに定めた範囲で決める仕組みになっています。多くのタクシー会社はその上限まで運賃を上げているため燃料コストの上昇分を価格に上乗せするのは難しいといいます。

会社の社長は、コロナ禍と燃料高騰のいわば”二重苦”が続けば事業が立ちゆかなくなるところも出てくるとしていて「われわれはダブルパンチを受けているということで燃料部分についても何とか支援策を考えていただければ幸いです」と話しています。

【松山市のガソリンスタンドでは】

市内のセルフ式ガソリンスタンドは仕入れ価格の上昇を受けて1リットル当たりのレギュラーガソリンの価格を10月以降、3回に分けて合わせて11円値上げしました。最近の傾向として1回の出費を抑えるため、満タンではなく金額を指定して、小分けに給油する人が増えているということです。
ガソリンスタンドを経営する三原産業の藤田章弘課長は「ガソリンの価格が上がることで来店する人の数が減ってしまうのではという懸念があります。できるかぎりほかのサービスを充実させるなど工夫はしようと思いますが、早く状況が改善してくれることを願っています」

【長崎県の離島 五島市の福江島では1L当たり190円も】

島のガソリンスタンドでは今週から「5円上がって190円」と書かれた価格表が貼り出されています。県内の離島は石油製品の輸送コストが本土よりも割高になるため資源エネルギー庁は10年前から福江島では価格を10円値引きする助成措置を行っていますが、値上がりに歯止めがかかっていません。
給油に訪れた男性は「離島と本土ではガソリンの価格差が大きすぎるので早く価格が元に戻ってほしい」と話していました。

【熊本県天草市の漁業の関係者は】

天草漁協五和支所では、所属するおよそ200人の漁業者のほとんどが、有明海で1本釣り漁を行っていますが、漁船の燃料の軽油は1リットルあたり119円とこの1年で25円ほど値上がりしていて、漁業者1人あたり燃料代だけでおよそ20万円、負担が増しているということです。
天草漁協五和支所の松本裕一郎支所長は「新型コロナの影響で飲食店との取り引きが少なく魚の価格が低い状況のなか、原油価格の高騰が続けば東京や大阪への出荷ができなくなるおそれもあり正直厳しいです。原油価格が下がるのを願うしかありません」と話していました。

経産省は来月から補助金使い小売価格上昇抑える緊急対策

原油価格の高騰が続く中、経済産業省は、ガソリンの小売価格の平均が一定水準を超えた場合は、補助金を使って小売価格が上昇するのを抑える緊急対策に乗り出します。

対策は来月下旬から来年3月までで、ガソリンの平均価格が170円を超えた場合、石油元売り会社に1リットルあたり最大5円分の資金を補助するという仕組みを検討しています。

この資金によって、石油元売り会社が原油価格の上昇分を卸値に転嫁するのを抑え、ガソリンの小売価格の上昇に歯止めをかけるねらいで、経済産業省は「石油元売り会社の支援ではなく、小売価格を抑えるための補助だ」としています。
経済産業省は今後、灯油や軽油などでも同じ仕組みの対策ができないかを検討することにしていて、原油高の直撃を受ける家計の負担を軽減できるかが課題となります。

農水省は農家や漁業者向けの支援制度追加募集

原油価格の高騰に対して農林水産省は、漁業者や温室ハウスで野菜や果物を生産する農家に対する支援制度を設けています。

重油や灯油など燃料費の価格が一定水準を上回った場合、国と漁業者や生産者で積み立てた基金から支給する仕組みです。

農家向けの支援制度は毎年7月に申請受け付けを締め切っていますが、ことしは原油高騰が続いていることから追加募集を行い、今も3回目の募集を行っています。

1年に3回募集するのはこれが初めてです。

専門家 「高止まりもしくは一段と高くなる可能性」

日本総合研究所マクロ経済研究センターの石川智久所長は政府が検討している原油高への対策について、「ガソリンの税率を下げるという方法もあるが、それは法改正が必要なためどうしても時間がかかる。今回の対策は補助金を出すだけなので、速やかに対応できることになる」と述べ、素早い対応を検討していることには前向きに評価する考えを示しました。

一方で「最終的にガソリン代が下がらなければ政策の意味がない。近年、ガソリンスタンド数が減り、競争原理が働かなくなっているという指摘もあり、そうすると消費者に還元されないことになる。それを避けるためにも監督官庁がきちんと監督して、指導していくということも大事だ」と述べました。

今後の原油価格については「今から原油の消費シーズンである冬を迎える。暖房で原油を使う国が増え、基本的に原油価格は高止まり、もしくは一段と高くなる可能性が高い」と述べました。