私、こんなに弱かったっけ? 久しぶりの居酒屋で

私、こんなに弱かったっけ? 久しぶりの居酒屋で
緊急事態宣言がすべて解除されて1か月余り。
久しぶりに会った友人や仕事帰りに職場の同僚と一緒に、居酒屋で楽しくお酒を飲んでいたら・・・。

「あれ。私、こんなにお酒に弱かったっけ」

酔った中で感じたことありませんか?
その感覚、実は間違いではないかもしれません。

(ネットワーク報道部 松本裕樹 柳澤あゆみ 村堀等)

新宿で聞いてみた

私と同じように感じている人は、ほかにもいるかもしれない。

やってきたのは、居酒屋やバーが立ち並ぶ新宿3丁目。

11月中旬の平日午後8時半、おいしい料理とお酒を求めて多くの人が行き交っていました。
最初に話を聞いたのは、居酒屋にいた20代から30代の3人の女性。

仕事仲間で緊急事態宣言の解除後、2回目の会食でした。
コロナ禍の前と同じようにお酒を飲めていますか?

「確実に、弱くなりました」

「みんな弱くなったと言ってるよね」
「私は久々に飲んで楽しくって、前よりお酒の量が増えた!」

弱くなったと感じる人はいるようです。

飲まないことで弱くなる?

次に話を聞いたのは居酒屋で飲み終えたばかりの2人。

お酒の量について聞いてみると。
「明らかに弱くなりました」(29歳男性)
「私はそんなに変わらないかな・・・」(35歳女性)
聞けば、女性はもともとお酒が好きで家飲みもしているといいます。

一方の男性は、コロナ禍以前、友人や会社の同僚との飲み会に2日に1回のペースで参加。

ビールやハイボールをジョッキで2~3杯、飲んでいました。
「でも、今はビール1杯なんですよ!しかも、グラスで!」
え、ジョッキじゃなくて瓶ビールとセットで出されるあの小さいグラスですか?
「そうなんです。きょうも飲みたいと思いつつ、グラス1杯だけ飲んであとは水にしました。緊急事態宣言が明けてすぐ友人と飲みに行ったんです。でも、ビールをジョッキで2杯飲んだらフラフラで。具合が悪くなって早めに切り上げました。翌日も夕方まで頭が痛くて・・・」
それ以降、自然とお酒の量をセーブするようになったといいます。
「ショックでした。今後、怖くて飲む量はセーブすることになりそうです。でも、お酒そのものというより、お酒の“場”が好きなので飲めなくても全然大丈夫ですけどね」

専門家 “酵素の働きが鍵”

本当に久しぶりにお酒を飲むと、酔いやすいのでしょうか?

都内でクリニックを営む高山哲朗医師に聞いてみました。
「久しぶりに飲むとお酒に酔いやすくなるのは一部の方について言えば本当です。もともと飲めない人とお酒に強い人がいます。日本人は結構な割合で飲んでるうちに、だんだん強くなるとか、お酒に慣れる方が多いようなことが遺伝的にわかってきています。そういう方がしばらくお酒から離れると弱くなってしまいます」
高山医師は日本人の特性に加え、アルコールの分解にも関わる酵素の働きが鍵を握っているといいます。
高山医師
「お酒を飲んでいる時は、酵素がアルコールを分解する活動をいっぱいしてくれますが、お酒を飲まなくなると活動しなくなります。久々に飲む場合は酵素が十分に働かず、結果としてお酒に弱くなってしまう人が出てきてしまいます」

搬送者は若者が多い

繁華街のにぎわいが戻りつつある今、渋谷にも行ってみました。
新宿での取材と同じ日の深夜。

ぐったりしてうつむいている人を介抱している人がいました。
新型コロナウイルスの感染が拡大した去年、東京消防庁が搬送した人は、おととしより約40%減少しましたが、それでも1万1291人
年代別で見てみると、20代が46.6%と半数近くを占めています。

続いて
▽60代以上が15.9%、
▽30代が14.3%、
▽40代が10.3%、
▽50代が9.7%、
▽20代未満が3.3%でした。

若い世代ほど搬送者が多くなっていますが、60代以上でも急性アルコール中毒になる人は少なくないようです。

久々のお酒 注意点は

久しぶりにお酒を飲む時の注意点を、高山医師にまとめてもらいました。
1.酒量はおさえめに
「酵素の動きが十分でない中、お酒をコロナ禍の前と同じ分量、もしくはいつも以上に飲んでしまうとすぐに酔ってしまいます。場合によっては急性アルコール中毒を引き起こす危険性もあります。まずは以前の“半分程度の酒量”で楽しく飲んでほしいです」

2.空腹時には飲まない
「空腹時にお酒を飲むと、アルコールの吸収が速く、すぐに酔いがまわります。必ず食事と一緒にお酒を飲むということを心がけてください」

3.水をお酒の合間に飲む
「チェイサーなど水を飲むことは大事ですが、ポイントは飲むタイミングです。多く飲んだ後は血中のアルコール濃度が上がっています。お酒の合間に定期的に水を飲むことで血中のアルコール濃度の急激な上昇を抑えつつ、お酒による脱水症状などにも対応することができます。なにより水を飲むことで飲酒量を減らすことにもつながります」
川崎市でクリニックを営む大澤亮太医師はもう1点、付け加えます。
4.帰宅後の無理な入浴は禁物
「お酒を飲んでいると血管が拡張します。この状態で湯船につかると大量の血液が全身に送られることで、脳への血流が減少していまい、貧血を起こしやすくなります。これから寒い季節になるので体を温めたいのはわかりますが、湯船につかることはできれば避けていただきたいです。シャワーだけのほうが無難ですね」

新たなお酒との付き合いかたも

コロナ禍で飲み会が激減し、友人に会う機会も減って寂しいなと思っていました。

けれど、新宿3丁目で最後に会った建設会社の社長の言葉にはっとしました。

仕事の接待で浴びるほどに酒を飲んできたといいますが、コロナ禍で飲み会が少なくなり、酒にも弱くなったといいます。

以前と180度違う生活を送る中で気付きがあったといいます。
「もともと、すごく飲むタイプなんです。飲んでこそ、うまくいっているつながりだと思っていましたが、そうではありませんでした。飲む回数や量が減っても、コミュニケーションは成り立つし、つながっていけるんですよね。価値観が変わったなと思います。
でも、やっぱり外で友人と飲むのって、本当に楽しいですよね」
現在、新型コロナウイルスの新規感染者数は少ない状況が続いていますが、「流行の第6波は来るのか?」「来るとすればいつなのか?」気になっている人が多い中、職場やサークルなど大人数での会食は以前ほどは行われないかもしれません。

それでも、コロナ禍で会えなかった友人と久しぶりに会ってお酒を飲む時には、今回の注意点を参考にしてみてください。