「ワクチン・検査パッケージ」制度要綱案を了承 政府分科会

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会が開かれ、ワクチン接種や検査による陰性の証明によって行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示され了承されました。
専門家からは、接種を終えた人でも感染リスクがあるといった限界があることに注意し、感染が大きく拡大した場合には停止も検討する必要があるといった意見が出されたということです。

16日に開かれた政府の分科会では、政府側から今後感染が再拡大した場合でも経済社会活動との両立を図るため、ワクチン接種や検査で陰性の証明を示すことで行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示されました。

案では、飲食やイベントでの行動制限を緩和しようとする事業者は、あらかじめ、制度の適用を都道府県に登録し、利用者に対してワクチンの接種証明か検査の陰性証明のいずれかを選択するよう求めるほか、ワクチンの接種証明について、2回目の接種から14日以上経過したことの確認を条件とし有効期限は当面定めないなどとしています。

これについて、専門家からは接種を終えた人や検査で陰性の人も感染リスクがあるといった限界があることに注意し、感染が拡大し、一般医療を相当程度制限しなければコロナ対応ができない「レベル3」では停止も検討することや接種証明の有効期限について、今後検討することが必要だといった意見が出されましたが、要綱案は了承されました。

このほか分科会では、第5波までの新型コロナ対応を教訓にした今後の医療体制の在り方についての見解が専門家から示され議論が行われました。

尾身会長 “要綱案を了承”

政府の分科会の尾身茂会長は、分科会のあと取材に対し「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案について「よりよくするための提案はいくつかあったが、反対ということはなくて、大きな方向では了承というか、合意したということでいいのではないか」と述べ、了承したことを明らかにしました。

山際経済再生相「感染リスク引き下げながら経済社会活動継続を」

山際経済再生担当大臣は、分科会の冒頭「ワクチン接種の進捗(しんちょく)や治療薬の普及などに加え、飲食店の第三者認証制度の普及さらには検査環境の整備などにより、日常生活や経済社会活動に伴う感染リスクを以前よりも引き下げることができるようになってきている。政府としては、行動制限の緩和の内容など、新型コロナ対策の全体像で示された具体的な方策について速やかに対応を決定し、感染リスクを引き下げながら経済社会活動の継続を可能とする新たな日常の実現に取り組んでいきたい」と述べました。

後藤厚生労働相「今後感染拡大を見据え備えていくこと重要」

後藤厚生労働大臣は、分科会の冒頭「全国の新規感染者はきのう75人、1週間の移動平均では171人と減少が継続し、去年の夏以降で最も低い水準になっている。他方、気温の低下で屋内での活動が増えるとともに年末に向けて忘年会やクリスマス、お正月休みなどの恒例行事によって社会経済活動の活発化が想定される中で、今後感染拡大を見据えて備えていくことが重要だ」と述べました。

経済同友会 櫻田代表幹事「接種証明のデジタル化急務」

ワクチン接種や検査による陰性の証明によって行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が、政府の分科会で了承されたことについて、経済同友会の櫻田代表幹事は、16日の定例会見で「要綱案が了承されたことは大いに結構で、経済界としても歓迎したい」と述べ、評価する考えを示しました。

そのうえで、事業者がワクチンの接種証明を確認する際、接種証明書などを撮影した画像や写しでも可能としていることに関連して、「それでいいというのは、いかんともしがたい。デジタル庁など、デジタルで世の中を変えていこうとしている中、いちばん急がれるのがワクチンの接種証明だと思う」と述べ、ワクチン接種証明のデジタル化が急務だという認識を示しました。

専門家“一定の感染対策は引き続き必要”

16日の分科会では、政府側から「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示され、専門家からは活用する際の注意点について意見が出されました。

この中で専門家は、ワクチンと検査の限界を指摘し、▽ワクチンを2回接種すると、感染予防効果は一定の期間は持続するものの、時間がたつと効果が低減するため、接種が完了していても新型コロナに感染し、ほかの人に感染させることがあるほか、▽ワクチンを接種していない人が検査で陰性を確認した場合でも感染や重症化のリスクがあるとして、一定の感染対策は引き続き必要だとしています。

また、ワクチンを接種していない人を公平に扱うよう求めています。

さらに医療のひっ迫の度合いをより重視して5段階のレベルに分けて対策を行うとする新たな考え方に基づき、「ワクチン・検査パッケージ」の運用についての注意点をレベルごとにまとめました。

このうち、▽安定的に医療の対応が可能な「レベル0」から「レベル1」の段階では、民間事業者で割り引きなどのサービスの一環として活用されることが考えられるとしています。

▽感染者数の増加傾向が見られる「レベル2」では、都道府県による一定程度の行動制限が行われる場合があり、制限の緩和のために「ワクチン・検査パッケージ」を活用することが考えられるとしています。

▽一方で、感染が拡大し、一般医療を相当程度制限しないとコロナ対応ができない「レベル3」の段階では、引き続き運用するか、停止するかの検討が必要になるとしています。

その際には、▽感染や医療ひっ迫の状況や、▽「ワクチン・検査パッケージ」が活用されている場面の感染リスクの大きさ、▽感染が起きた場合の影響の大きさを考慮する必要があるとしています。

さらに専門家は▽「ワクチン・検査パッケージ」制度の効果や限界を評価して見直しを適宜行うことや、▽ワクチン接種証明の有効期限について今後得られる知見をもとに、検討を行うことが必要だと指摘しました。