「ワクチン・検査パッケージ」誰が?どんな場面で?どう活用?

新型コロナウイルスの感染が再拡大しても経済社会活動との両立を図る目的の「ワクチン・検査パッケージ」。政府の分科会で了承された制度の要綱案について、詳しくお伝えします。

16日午前に開かれた、新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会。

政府側から今後感染が再拡大した場合でも経済社会活動との両立を図るため、ワクチン接種や検査で陰性の証明を示すことで行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」制度の要綱案が示され、了承されました。

この「ワクチン・検査パッケージ」制度。どのように運用されるのか、要綱案をもとにまとめました。

どのように活用される?

まず、誰がどのように活用することを想定しているのでしょうか。

要綱案では、感染が再拡大して緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出された地域でも、飲食店やイベントの主催者などの事業者が、あらかじめこの制度の適用を都道府県に登録した上で、利用者のワクチン接種証明か、検査での陰性証明のいずれかを確認することで、行動制限を緩和するとしています。

事業者が接種証明か陰性証明のどちらか一方しか選択できないとした場合には、緩和の適用対象にはなりません。

適用で何ができるように?

「ワクチン・検査パッケージ」制度はどのような場面で適用されるのか。要綱案では、行動制限を緩和するのは「飲食」と「イベント」、それに「移動」とされています。

このうち「飲食」については、対象となるのは感染対策について第三者の認証を受けている店で、「ワクチン・検査パッケージ」制度を適用すると「利用者の人数制限なし」となります。

また「イベント」については、感染防止安全計画を策定して都道府県の確認を受けたイベントで「人数の上限が収容定員まで」となります。

さらに「移動」については、不要不急で都道府県をまたぐ場合でも「自粛要請の対象に含めない」としています。

一方で、幼稚園や認定こども園から大学に至るまでの「学校」については「ワクチン・検査パッケージ」制度は適用されません。

このほか、大学などの部活動や、課外活動で感染リスクの高い活動についての適用は文部科学省で、ツアーや宿泊施設での適用は観光庁で別に定めるとしています。

一方で、地域の感染状況によっては、都道府県は国と協議の上、異なる取り扱いができるとしているほか、感染が急拡大して医療のひっ迫が見込まれる場合には、政府や都道府県の判断で「ワクチン・検査パッケージ」制度が適用されず、強い行動制限が要請されることがあります。

民間での接種証明活用も自由に

一方、要綱案では、政府や都道府県とは別に民間の事業者などが提供するサービスの中で、ワクチンの接種証明や検査での陰性証明を活用することは原則として自由で、特段の制限を設けないとしています。

例えば、入店や会場への入場の際に提示を求めることも考えられるとしています。

接種や検査 どのように確認?

では、ワクチン接種証明などの確認はどのように行われるのでしょうか。

ワクチン接種証明の場合

接種証明書や接種記録書などを使って、2回の接種を完了し、14日以上たっていることを確認します。

確認は接種証明書などを撮影した画像や写しでも可能で、同時に本人確認も行われます。

海外で発行された接種証明でも、氏名や生年月日、ワクチン名かメーカー、それに接種日と接種回数が日本語か英語で書かれているものは使うことが可能です。

ワクチンの接種証明の有効期限は当面定めないとしています。

検査での陰性証明の場合

要綱案では検査での陰性証明は、精度が高い「PCR検査」や「抗原定量検査」などを推奨していて、有効期限は検体の採取日から3日以内となっています。

こうした検査の場合は、医療機関や検査所などが発行した結果通知書などで陰性を確認するとともに、本人の確認を行います。

検査所のうち、厚生労働省が公表している「自費検査を提供する検査機関一覧」に掲載している検査機関が推奨されるとしています。

結果通知書には、検査を受けた人の氏名や結果、方法、検査所名、受けた日、検査の管理者の氏名、それに有効期限を記載するとしています。

簡易な抗原検査も利用可能に

一方、PCRなどの検査を事前に受けられない場合にも対応するため、簡易な「抗原定性検査」も利用可能としていて、有効期限は検査した日から1日以内となっています。

検査キットは薬事承認されたものを使い、結果通知書には受けた人の氏名や結果、使った検査キットの製品名、受けた日、事業者の名前、検査の管理者の氏名、それに有効期限を記載するとしています。

これらの検査での陰性証明は6歳以上が対象で、未就学児については同居する親などが同伴する場合には検査は不要です。

6歳から11歳までの児童については、検査での陰性証明が必要です。

専門家「ワクチンと検査には限界も」

一方、分科会では、制度を活用する際の注意点について専門家から意見が出されました。

専門家はワクチンと検査の限界を指摘し、ワクチンを2回接種すると感染予防効果は一定の期間は持続するものの、時間がたつと効果が低減するため、接種が完了していても新型コロナに感染し、ほかの人に感染させることがあるほか、ワクチンを接種していない人が検査で陰性を確認した場合でも感染や重症化のリスクがあるとして、一定の感染対策は引き続き必要だとしています。

また、ワクチンを接種していない人を公平に扱うよう求めています。

感染拡大したら制度の運用は

分科会では、医療のひっ迫の度合いをより重視して5段階のレベルに分けて対策を行うとする新たな考え方に基づき、「ワクチン・検査パッケージ」の運用についての注意点をレベルごとにまとめました。
このうち、安定的に医療の対応が可能な「レベル0」から「レベル1」の段階では、民間事業者で割り引きなどのサービスの一環として活用されることが考えられるとしています。

感染者数の増加傾向が見られる「レベル2」では、都道府県による一定程度の行動制限が行われる場合があり、制限の緩和のために「ワクチン・検査パッケージ」を活用することが考えられるとしています。

一方で、感染が拡大し、一般医療を相当程度制限しないとコロナ対応ができない「レベル3」の段階では、引き続き運用するか、停止するかの検討が必要になるとしています。

その際には、感染や医療ひっ迫の状況や「ワクチン・検査パッケージ」が活用されている場面の感染リスクの大きさ、感染が起きた場合の影響の大きさを考慮する必要があるとしています。

さらに専門家は「ワクチン・検査パッケージ」制度の効果や限界を評価して見直しを適宜行うことや、ワクチン接種証明の有効期限について今後得られる知見をもとに検討を行うことが必要だと指摘しました。

尾身会長「制度を走らせながら見直していく」

政府の分科会の尾身茂会長は記者会見で、感染が拡大した状態での制度の運用について「感染が拡大して一般医療を相当程度制限しなければ、コロナ対応ができない『レベル3』になった場合、これまでよりも強い行動制限が課されることが考えられ、状況に応じて『ワクチン・検査パッケージ』の運用の継続も停止もあり得る。感染や医療の状況、適用される場面のリスクなどを判断する。何があっても継続する、停止するという考え方ではない」と述べました。

これに加えて「『レベル3』といっても、実態としてはレベルが上がったばかりの初期のタイミングと、放っておけば一般医療を大きく制限しても新型コロナの医療に対応できない『レベル4』という最悪の事態が近づいている状況と大きく2つに分けることができる。最悪の事態に近づいているときには、強い対策が打たれ、『ワクチン・検査パッケージ』制度の対象になるイベントなどが制限され、制度を適用する、しないという判断にもならない可能性もある」と指摘しました。

さらに尾身会長は「制度を走らせながら、効果と限界を継続的に評価して適宜見直していくという態度が非常に重要だ。政府はいまのところ、ワクチン接種証明の有効期限について決めていないが、接種から数か月で感染を防ぐ効果が落ちることは間違いない。いますぐ結論を急ぐ必要はないが、なるべく早く議論した方がよいというのが専門家の一致した見解だ」と述べました。