あす米中首脳会談 偶発的な衝突回避へ 信頼の土台築けるか

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席による、オンラインによる初めての首脳会談が日本時間の16日、行われます。対立が深まる中で米中両国が対話を維持し競争が偶発的な衝突につながらないよう、信頼関係の土台を築けるかが焦点となります。

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席によるオンラインでの首脳会談は日本時間の16日午前、行われます。

両首脳はこれまで電話で2度会談していますが、オンラインで顔を合わせる会談は初めてです。

会談についてバイデン政権の高官は記者団に対し、習近平国家主席に権力が集中している状況の中、首脳レベルでのコミュニケーションは不可欠だとしたうえで「両国の競争を責任ある形で管理していくために重要な会談になる」と述べました。

そして会談には3つの大きなねらいがあるとし、まず
▽誤解や見込み違いが衝突に発展するのを防ぐため、いわば「ガードレール」の役割を果たす共通認識の形成
次に
▽中国の人権問題や国有企業の優遇といった不公正な経済慣行、それに台湾に対する挑発的な態度などをめぐるアメリカ側の懸念を直接伝えること
さらに
▽気候変動対策など互いの利害が一致する分野での協力を模索することだとしています。

この高官は会談は両国間での何らかの合意や成果の発表を目指すものではないと強調していて、対立が深まる中で米中両国が対話を維持し競争が偶発的な衝突につながらないよう、信頼関係の土台を築けるかが焦点となります。

中国 「両国と世界に有利な結果が得られることを望む」

中国外務省の趙立堅報道官は15日の記者会見で「現在、中国とアメリカの関係は重要な岐路にあり、両国の国民と国際社会は会談で両国と世界にとって有利な結果が得られることを望んでいる」と述べました。

また「習主席はバイデン大統領と両国関係の未来に関する戦略的な問題や双方がともに関心を持つ重要な問題について、率直かつ深く、十分に意見を交わすことになる」という認識を示しました。

そのうえで「アメリカには、中国に歩み寄り、対話と協力を強化し、意見の違いを効果的にコントロールして敏感な問題を適切に処理し、世界の大国として互いに尊重して平和共存するつきあい方を検討するよう望む」と述べました。

米専門家「バイデン大統領の目的はリスク低減」

アメリカのオバマ政権で東アジア政策を担当したダニエル・ラッセル元国務次官補はNHKのインタビューに答え「米中の首脳は今の両国関係に不満を抱いている。何かをきっかけに状況が制御できなくなるリスクを強く懸念している」と述べました。

そのうえで「両国の今の緊張関係を考えれば、バイデン大統領の会談の最大の目的はリスクの低減だ。関係を安定化させ、意思疎通のチャンネルや衝突を回避するメカニズムの再構築を始めることだ」と指摘しました。

またバイデン大統領が中国を最大の競合国と位置づけながらも衝突を避ける「責任ある競争」を目指していることについては、「競争によって生じる摩擦を制御する唯一の方法は外交だ」としたうえで、「中国政府には習近平国家主席からの明確なシグナルがないかぎり、アメリカ側と交渉しようと思う人はいない」と分析しました。

そのうえで「今回の会談は、中国のシステム全体に、アメリカ側と協力する許可はあり、対話のための政治的な空間があるというシグナルを送ることができる」と述べ、首脳会談をきっかけにさまざまなレベルで接触が始まることに期待を示しました。

一方、ラッセル元次官補は今回の首脳会談では台湾や東シナ海、南シナ海、人権問題などバイデン政権が中国側に対応を改めるよう求めているさまざまなテーマをめぐり意見が交わされることになるという見通しを示しました。

そしてバイデン大統領が気候変動対策や新型コロナ対策などで中国からの協力を求める代わりにこれらの問題で譲歩するのではないかという指摘が出ていることについては「バイデン大統領はアメリカの価値観に基づいた確固たる立場で交渉する。譲歩することはない」と述べました。

米中対立 「安全保障」「経済と貿易」「人権」で

アメリカと中国の対立はさまざまな分野で起きていて、中でも顕著なのは「安全保障」「経済と貿易」それに「人権」についてです。

このうち安全保障をめぐってアメリカは、中国による南シナ海や東シナ海への海洋進出に加え台湾をめぐる行動も新たな緊張を生んでいると批判しています。

ことし3月、アメリカ軍の幹部が中国が6年以内に台湾を侵攻する可能性があるという見方を示したほか、先月には台湾が設定する防空識別圏に中国軍機が多数、進入しブリンケン国務長官が懸念を表明するなどアメリカは警戒を強めています。

一方、中国は「台湾は中国の一部だ」としてアメリカがこの地域の問題に関わることは内政干渉だとしています。

そしてアメリカの一連の行動は「挑発的なものだ」として、両国関係だけでなく台湾海峡の平和と安定を損なうものだと強く反発しています。

またアメリカがインド太平洋地域で同盟国とともに新たな安全保障の枠組みAUKUSを立ち上げるなど、中国包囲網作りとも言える動きを進めていることに中国は強く反発し、両国の対立は深まっています。

経済と貿易をめぐっては、バイデン政権は中国による国有企業などへの過剰な補助金や知的財産権の侵害がアメリカにとって不利な競争環境につながっているとして、トランプ前政権による関税の引き上げ措置を維持しています。

さらにAI=人工知能や高速・大容量の通信規格5Gなどの先端技術で中国が存在感を増す中、安全保障上の脅威を理由に中国の通信機器大手の製品をアメリカ国内から締め出すなど、対抗措置を強化しています。

これに対して中国は、アメリカは科学技術の覇権的地位を守ろうと国家の安全保障の概念を拡大して中国のハイテク企業を抑圧していると強く反発しています。

さらに各国にはそれぞれの発展モデルがあり、それを尊重すべきだと反論しています。

人権についてはバイデン政権が新疆ウイグル自治区や香港などの状況を批判しているのに対し、中国側は「内政干渉だ」と強く反発しています。

こうした分野をはじめとする中国との対立についてバイデン大統領は「民主主義と専制主義との闘い」だとして、根本的な価値観が異なる国どうしの闘いだとも位置づけています。

その一方で米中両国とも全面的な対立は避けたい立場で、バイデン大統領は「新たな冷戦は望まない」としたうえで「衝突ではなく競争を望む。利益が一致する分野では協力する」という姿勢を見せています。

また習近平国家主席も「両国は、協力が唯一の正しい選択だ」と述べ、協力を呼びかけるなど、関係改善の意思を示しています。

国連の気候変動対策の会議「COP26」では温室効果ガスの世界第1・第2の排出国である中国とアメリカが先週、異例の共同宣言を出し、対策強化で協調していくことで合意しました。

松野官房長官「米中関係の安定極めて重要」

松野官房長官は午後の記者会見で「アメリカと中国の関係の安定は国際社会にとって極めて重要であり、政府としても状況を注視してきている。日本としては引き続き同盟国たるアメリカとの強固な信頼関係のもとさまざまな協力を進めつつ、中国に対しても大国としての責任を果たしていくよう働きかけていきたい」と述べました。