7~9月実質GDP年率-3.0% 2期ぶりマイナス 個人消費落ち込み

ことし7月から9月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス3.0%と、2期ぶりのマイナスになりました。この間に出されていた緊急事態宣言の影響でGDPの半分以上を占める「個人消費」が落ち込んだことが主な要因です。

内閣府が15日に発表したことし7月から9月までのGDPの速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス0.8%でした。

これが1年間続いた場合の年率換算ではマイナス3.0%で、2期ぶりのマイナスになりました。

主な要因はGDPの半分以上を占める「個人消費」の落ちこみです。

この間、新型コロナウイルスの感染拡大によって東京や大阪などに緊急事態宣言が出されたことで旅行や外食の需要が低迷していることに加えて、家電などの販売も減少し、個人消費は前の3か月と比べてマイナス1.1%となりました。

また、経済のけん引役とされる「輸出」も、世界的な半導体不足に加え、東南アジアからの部品の調達が滞っている影響で自動車産業が減産を余儀なくされたことを受けて、マイナス2.1%でした。

また、「企業の設備投資」も、業務用の車や建設用機械の購入が減少したことなどでマイナス3.8%となりました。

政府は、GDPがコロナ前の水準に戻る時期を「年内」と見込んでいますが、感染の再拡大によって日本経済の回復は足踏みを余儀なくされた形となりました。

一方、物価の変動を反映した名目のGDPの伸び率は、前の3か月と比べてマイナス0.6%、年率換算でマイナス2.5%となりました。原油価格の高騰などで物価が上昇したことで、名目の減少幅は実質の減少幅より小さくなりました。

松野官房長官「資源価格上昇や感染再拡大のリスクに十分注意」

松野官房長官は、午前の記者会見で「マイナス成長の要因は、9月までの緊急事態宣言などの影響に加え、半導体不足や原材料価格の上昇を背景に、個人消費、設備投資、輸出がマイナスとなったことがあげられる」と述べました。

そして「今後は経済社会活動が再開される中、世界経済の改善もあって景気は持ち直していくことが期待されるものの、世界的な供給の制約や資源価格の上昇による所得の流出が顕在化してきている中で、それらの影響による下振れリスクや感染再拡大のリスクに十分注意する必要がある」と述べました。

そのうえで「政府としては、今回取りまとめる経済対策を速やかに実行し、経済の回復に向けた動きを確かなものにすることで、コロナ前のGDP水準を早期に回復し、通常に近い経済社会活動を1日も早く取り戻すべく、全力を尽くしていく考えだ」と述べました。

山際経済再生相「下振れリスクには十分注意」

山際経済再生担当大臣は、GDPの発表を受けた記者会見で2期ぶりのマイナスとなった要因について、「9月までの緊急事態宣言などに加え、半導体不足や東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給の不足、資源価格の上昇が影響した。一方で、企業収益は持ち直しており、雇用、所得環境も改善傾向にある。これらを勘案すると景気は持ち直しの動きが続いているもののそのテンポは弱まっている」と述べました。

一方、政府は、GDPがコロナ前の水準に戻る時期を「年内」と見込んでいますが、感染の再拡大によって日本経済の回復は足踏みを余儀なくされた形となりました。

これについて山際大臣は、「予断を持ってこうなるとは言えないが、新型コロナの感染者数が少なく宣言などが解除され実感としても経済活動が復活してきている。ことし10月から12月までのGDPは期待を持っているが下振れリスクには十分注意する必要がある」との認識を示し、今週19日に政府が取りまとめる経済対策によって景気を下支えする考えを改めて強調しました。

経団連 十倉会長「今後プラスに転じると思う」

GDP=国内総生産が、2期ぶりのマイナスとなる中、今後の日本経済の見通しについて経団連の十倉会長は「対面を中心としたサービス業、旅行や観光業などは政府による行動規制も緩和されているので、これから伸びてくると思う。ただ、半導体などの供給不足でこれまで輸出で稼いできた企業の業績が頭打ちになっていて、この点が経済成長を打ち消す形になるかどうかだ。今後、GDPはプラスに転じると思うし、そういう形になってほしい」と述べました。