COP26閉幕 気温上昇1.5℃に抑制「努力追求」成果文書採択

イギリスで開かれていた国連の気候変動対策の会議「COP26」は世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求するとした成果文書を採択して閉幕しました。

専門家からは1.5度に抑えることが事実上、世界の新たな目標になったとして評価する声があがる一方で、石炭火力発電の扱いなどをめぐって意見の対立もあり、今後、国際社会が協調してより踏み込んだ対策を取れるかが問われることになります。

「COP26」は会期を1日延長して14日間にわたる交渉を終え、13日に成果文書を採択して閉幕しました。

成果文書では「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求することを決意する」と明記され、そのためにこの10年間での行動を加速する必要があるとしました。

6年前に採択されたパリ協定では気温上昇を2度未満に保ち、1.5度は努力目標とされていましたが、専門家からは今回1.5度に抑えることが事実上、世界の新たな共通目標となったとして評価する声もあがっています。

また、目標を達成するため、2030年に向けた各国の削減目標を来年の年末までに必要に応じて検証し強化を要請することで合意し、さらなる削減目標の見直しを求める内容も盛り込まれました。

さらに発展途上国が行う対策への支援として先進国が約束している年間1000億ドルの拠出を2025年まで着実に維持し、気候変動による被害を軽減するための資金の拠出を2019年の水準から少なくとも2倍にするよう求めました。

一方、二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電については当初、段階的な「廃止」を加速するとした案が示されましたが、会議の最終盤で電力需要が高まるインドなどから反対意見があがり、段階的な「削減」に表現が弱められるなど各国の根強い意見の隔たりが浮き彫りになりました。

気候変動による災害が各地で相次ぎ、かつてなく危機感が高まる中、気温上昇を1.5度に抑えていくために今後、国際社会が協調してより踏み込んだ対策を取れるかが問われることになります。

石炭火力発電の表現をめぐり各国が激しい応酬

13日の採択の直前には石炭火力発電の表現をめぐって、各国の激しい応酬がありました。

13日に示された3度目の議長案は、石炭火力発電について「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な廃止のための努力を加速する」としていました。

しかし採択直前の土壇場になってインドの代表が「廃止」という文言を「削減」に変更することを提案すると、一部の国からは拍手が起こりました。

これに対してスイスの代表が「変更には反対しないが、最終版での変更には大変失望した。これで1.5度の目標の達成をさらに難しくする」と述べると、この発言にも拍手が起きました。

続いてEU=ヨーロッパ連合の代表も「私たちは歴史から石炭に未来がないことを知っている。だからこそ段階的に廃止すべきだ」と落胆を示しながらも文言の変更には反対しませんでした。

また気候変動の影響で海面が上昇し、水没の危機にあると訴えるマーシャル諸島の代表はインドの提案に反発しましたが「落胆とともにこの変更を受け入れる。今回の成果文書には私たちの島に住む人たちの命に関わる要素を含んでいるからだ」と述べ、成果文書の採択を優先する姿勢を示しました。

こうした発言を受けて、シャルマ議長は声を詰まらせながら「申し訳ない。だが最も大切なのは文書全体が守られることだ」と述べ、インドからの提案を受け入れました。

この結果、成果文書の最終的な表現は「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な削減の努力を加速する」となりました。

シャルマ議長「各国が団結できることを世界に示した」

COP26のシャルマ議長はすべての採択が終わったあとのあいさつで「各国が互いの違いを乗り越えて共通の課題に立ち向かうために団結できることをともに世界に示した2週間だった。平均気温の上昇を1.5度に抑えられるようにするため努力を追求することは私たち全員の責任だ。ここグラスゴーに集まった人々は大きな挑戦に立ち向かう勇気を持っている」と述べ、目標達成のために行動に移そうと呼びかけました。

合意のポイントは

【1.5度】

「COP26」の大きな焦点となったのは、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることで各国が一致できるかでした。

成果文書では世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求することを決意するとしました。

6年前に採択された「パリ協定」では「気温上昇を2度未満に保つとともに、1.5度に抑えるよう努力する」とされていますが、最新の科学的知見や近年の気候変動への危機感の高まりもあり、今回の合意の表現は一歩踏み込んだものになっています。

そして、気温上昇を抑えるためにこの10年間での行動を加速する必要があると明記し、各国の2030年に向けた排出削減の目標について2022年の末までに必要に応じて検証し、さらに強化することを要請することで合意しました。

【資金】

発展途上国の気候変動対策を促すため、先進国が資金支援を強化することも盛り込まれました。

途上国の気候変動対策への支援として先進国が約束している年間1000億ドルの拠出を2025年まで着実に維持するとともに、あらゆる資金源から資金を集める必要があるとしています。

【石炭】

異例ともいえる個別の分野にも踏み込みました。

二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電について段階的な削減が明記されました。

ただ、文書の内容をめぐっては議論が紛糾しました。

当初の議長案では「排出削減対策が取られていない石炭火力発電と化石燃料への補助金の段階的な廃止を加速する」とされていました。

最終的な議長案で「努力を加速する」と表現が弱められた上、採択の直前のインドなどの主張を受けて「段階的な廃止」が「段階的な削減」へとさらに弱められました。

【パリ協定ルール】

気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」の着実な実施に向けたルールについても、各国が合意に至りました。

「パリ協定」の6条で定められた温室効果ガスの排出削減量を政府間や民間で取り引きできるルール作りは、これまでのCOPで繰り返し議論されてきたものの合意に至っておらず「最後のピース」とも呼ばれていました。

協議が難航していた理由の1つは、一部の途上国がかつての京都議定書のもとで認証されていた削減量を新たな枠組みであるパリ協定のもとでも活用できるよう主張したのに対し、先進国などが新たな削減につながらないとして難色を示していたことです。

また、削減量を支援した国と支援された国で二重に計上しないルールなどもさらなる検討が必要とされてきました。

今回の合意したルールでは、京都議定書に基づいて2013年以降に認証された削減量はパリ協定のもとでも2030年の各国の削減目標に算入できると認めたほか、取り引きに参加する国は削減量の透明性を確保し二重計上などを防いで排出量の増加につながらないようにすることなどが盛り込まれました。

このルールが合意されたことで、企業などが海外での排出削減につながる事業を行うメリットが大きくなって「脱炭素ビジネス」が活性化し、各国の経済成長と気候変動の抑制につながると期待されています。

環境省によりますと、この仕組みにより2030年までに世界全体の二酸化炭素の排出量をおよそ3割削減できるという試算もあるということです。

専門家「『1.5度に抑えること目指す』各国合意は歴史的なこと」

今回の成果文書について、気候変動の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「気温の上昇を2度未満に抑えるとしたパリ協定では、1.5度は“努力義務”であったが、今回2度ではなく、1.5度に抑えることを目指すことに各国が合意したといえ、歴史的なことだと思う」として、成果文書の内容を評価しました。

そのうえで今後の排出削減については「発展途上国の削減を実現するためは、技術的にも資金的にも先進国が支援することが大事で、国際的に削減の取り組みを加速させる必要がある」と指摘し、気温の上昇を1.5度に抑えるためには、先進国と途上国が脱炭素分野での協力を進めることが欠かせないと話していました。

環境NGO関係者「2030年に向け各国の目標の上積みが必要」

気候変動対策の国際交渉に詳しい環境NGO「WWFジャパン」の小西雅子さんは「パリ協定では努力目標に過ぎなかった『1.5度』に気温上昇を抑えることが、世界の共通目標になったことが大きな成果だと受け止めている。パリ協定のころと比べると、気候変動への危機感が共有されてきていることや、企業などに対策を求める経済の動きの変化によって、『1.5度』を受け入れる余地ができたのではないか」と分析しています。

そのうえで「現在の各国の温室効果ガスの削減目標を達成したとしても『1.5度』は実現できないと分析されているので、2030年に向けた目標の上積みが必要となる。さらに今回焦点の1つとなった石炭の対策のように、各国には目標を実現するための具体的な対策の導入も求められていくことになる」と指摘しました。

国連事務総長 一定成果あったとするも「成果文書は妥協の産物」

国連のグテーレス事務総長は13日、ビデオメッセージを発表しました。

この中でグテーレス事務総長は「今回の文書は1.5度に抑える目標を再確認し、気候変動の被害に苦しむ国々への支援を強化する必要性を示した」などと述べ、一定の成果があったという考えを示しました。

一方で「これは歓迎すべき一歩だが十分とは言えない。成果文書は今の世界の利権や矛盾、それに政治的な意思を反映した妥協の産物だ」と指摘し「私は化石燃料への補助金を終わらせなければならないと確信している」などと述べて、今回の会議で目指した目標の一部は達成できなかったと指摘しました。

そしてグテーレス事務総長は「いまこそ緊急事態のモードに移るべき時だ。私たちはみずからの命のために闘っている。決して諦めたり、後戻りしたりせず前進しなければならない」と強調し、各国に対してより踏み込んだ対策を呼びかけました。

グレタ・トゥーンベリさん “会議は形だけのもの”

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんは13日、自身のツイッターに「COP26が終わりました。簡潔に言えば『ブラ・ブラ・ブラ』です」と投稿しました。

「ブラ・ブラ・ブラ」は、重要でない部分を省略するときなどに使う英語の表現で、会議が形だけのものだったと批判した格好です。

そのうえで「本当の活動は議場の外で続いています。私たちは決して諦めません」とつづり、今後も活動を続けていく考えを示しました。

グレタさんは、今月1日にも「COP26」について「政治家や権力者たちが、気候変動の影響を受けている人がいるという現実を、深刻に受け止めているふりをしているだけだ」と指摘するなど、会議に参加した各国の首脳を批判していました。

JERA「石炭火力が必要な国々も存在 技術開発急ぎたい」

国内最大の火力発電事業者のJERAは「脱炭素というゴールに向かう道筋はそれぞれの国や地域に合ったかたちで実現されるべきだ。電力の安定供給を果たしつつ、低コストかつスピーディーに脱炭素を進めていくには、石炭火力にアンモニアを混ぜるなど、既存の発電所を少しずつ脱炭素化していくことが重要だ」というコメントを出しました。

そのうえで「アジア諸国では、経済成長を支えるために石炭火力発電が必要な国々も多く存在することから、まずはアンモニアの利用技術を確立することで、諸外国でも活用可能な技術開発を急ぎたい」としています。

経団連 十倉会長「合意して一歩進めたのは大きな成果」

経団連の十倉会長は「温室効果ガスの削減は1国ではできないので、地球上のあらゆる国が合意して文書を残せたことは非常に大きな成果だと思う。石炭火力発電の扱いをめぐって、各国のせめぎ合いがあり、議長の涙も印象的だったが、とにかく合意して一歩進めたというのは大きな成果だ」と述べ、成果文書の採択を評価する考えを示しました。