ベラルーシからの移民 EU加盟国の国境付近に数千人 対立深まる

旧ソビエトのベラルーシからEU=ヨーロッパ連合の加盟国のポーランドに渡ろうと、大勢の移民が国境付近に集まっていますが、越境が認められず数千人が行き場を失ったままとなっています。

EU側はベラルーシが移民を意図的に送り込もうとしているとして新たな制裁を検討するなど、ベラルーシとその後ろ盾となっているロシア、EU側との対立が深まっています。

ベラルーシ西部のポーランドと接する国境付近には、中東などから来たとみられる大勢の移民が集まっています。

ただ、ポーランド側は国境管理を厳格化していて数千人が越境できずに行き場を失い、現地からの映像では、厳しい寒さのなか数多くのテントが張られている様子や幼い子どもの姿もみられます。

地元メディアはこれまでに低体温症が原因で亡くなった人もいると伝えています。

この問題でEUはベラルーシがこれまでに科された制裁に対抗するため、大勢の移民を意図的にEU加盟国内に越境させようとしていると非難し、新たな制裁を検討しています。

これに対し、ベラルーシのルカシェンコ大統領は今月11日、ロシアからベラルーシを通過してEU側に運ばれる天然ガスを止める可能性を示唆し、EUを強くけん制しました。

また、ベラルーシの後ろ盾となっているロシアもベラルーシの空域に戦略爆撃機を派遣してパトロールを実施したほか、合同の軍事演習も始めるなど、ベラルーシと連携する姿勢を示しています。

移民をめぐる今回の問題を受けてベラルーシ、ロシアとEU側との対立が深まっています。

ポーランドは兵士を配備し警備強化

ポーランドとベラルーシの国境付近には多くの移民が集まり、ポーランド側は入国を阻止しようと1万5000人の兵士を配備して国境警備を強化するなど緊張が高まっています。

ポーランドの国防省が今週、相次いでツイッターに投稿した映像では、移民たちが国境沿いのワイヤフェンスを壊そうとして兵士に追い返される様子や、森林の中に数多くのテントが張られている様子などが確認でき、幼い子どもの姿もみられます。

ポーランド当局によりますと、去年1年間にベラルーシ側からポーランド側に不法に越境して拘束された人の数は122人でした。

しかし、ポーランド側に不法に越境しようとする試みはことし8月から先月末までで2万8500件を超えているということです。

ポーランドはことし8月、高さ2.5メートルのワイヤフェンスの設置を始め、さらに来年夏ごろまでに高さ5.5メートルの壁を建設する方針です。

ポーランドのモラウィエツキ首相は10日、移民を意図的に送り込んでいるベラルーシの行為はEUを不安定化させるための「国家によるテロだ」と強く非難しています。

EU「政治的な目的で人間を道具に」

今回の移民をめぐる問題について、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表が今月10日、ヨーロッパ議会で説明しました。

このなかでボレル上級代表は「ベラルーシ当局が政治的な目的のために人間を道具として使っていることは明らかだ」と述べ、ルカシェンコ政権が移民を意図的にベラルーシに集め、EU側に越境させようとしているとの見方を示しました。

ボレル上級代表によりますと、具体的にはことしの夏、中東・イラクの人たちがベラルーシとの国境からヨーロッパに自由に入ることができるという情報を伝えられ、国境付近に連れてこられたということです。

そして、先月からはイラクに加え、シリアやアフガニスタンなどの人たちが主に中東にある空港からチャーター便も利用してベラルーシに続々と入ってきているということです。

ボレル上級代表の説明では、こうした人たちは旅行会社から6000ドルから7000ドル、日本円にしておよそ68万円から80万円の費用で、ベラルーシでの休暇とともにヨーロッパに行く方法を提示されることになっていたとしています。

ボレル上級代表は「これはわれわれがベラルーシに対して科した制裁に対する彼らの答えだ。『制裁を科すなら問題を引き起こす』ということだ」と述べて、ルカシェンコ政権の対応を非難しました。

EUは週明けに開く外相会議でベラルーシに対する新たな制裁について協議することにしています。

アメリカ「さまざまな手段を検討」

また、この問題についてアメリカのブリンケン国務長官は12日、記者会見で「ベラルーシが移民を政治的な武器として利用していることを強く懸念している」と述べました。

そのうえで今後については「さまざまな手段を検討している」と述べ、具体的には明らかにしなかったもののヨーロッパの同盟国と連携して対応にあたる考えを示しました。

トルコ ベラルーシ便を制限

ベラルーシに移民が流入する経由地の1つとみられているトルコでは12日、航空当局がイラク、シリア、イエメンの国籍を持つ人を対象に、ベラルーシへ向かう旅客機のチケット購入や搭乗を当面、認めないことを決めたと発表しました。

EUはこれまでにベラルーシに向けて移民を乗せる航空会社に対しては、制裁措置も辞さない姿勢を示していました。

強気のベラルーシ 背景にロシアか

EU側からの非難に対して、ルカシェンコ大統領はことし7月「私たちは誰も引き止めるつもりはない。彼らはベラルーシに来るのではなく、暖かく快適なヨーロッパに行くのだ」と述べ、EU側の指摘を否定せず、移民の越境を黙認していることを明らかにしました。

ルカシェンコ政権が強気の姿勢を貫く背景には後ろ盾となっているロシアの存在があるとみられ、ポーランドのモラウィエツキ首相は今月9日、今回の移民をめぐる問題について「黒幕はプーチン大統領だ」と批判しています。

ただ、ロシアは関わりを否定していてプーチン大統領はドイツのメルケル首相との電話会談で、EUとベラルーシの問題だとして双方が直接会談して解決すべきだとしています。