東芝 3つの会社に再編・分割する方針決定を発表

大手電機メーカーの東芝は、社会インフラや半導体など多岐にわたる事業を再編し、3つの会社に分割する方針を決めたと発表しました。国内の大企業が会社を分割するのは異例で、東芝では分割によって競争力の強化や株主価値の向上につながるとしています。

発表によりますと、東芝は、▽発電などのインフラサービス事業と▽ハードディスクなどのデバイス事業を行う2つの会社を新たに設立し、2023年度下期の上場を目指します。

▽東芝本体は、半導体大手の「キオクシアホールディングス」の株式などを保有する会社として存続させることにしています。

東芝の株主に対しては、新しくできる2つの会社の株式を分配することにしています。

社会インフラや半導体など幅広い事業を展開しおよそ300の子会社を抱える東芝のような国内の大企業が会社を分割するのは異例です。

東芝では3つの会社に分割することで、それぞれの戦略が明確になり、意思決定もスムーズになることから、競争力の強化や株主価値の向上につながると説明しています。

経営独立でより機動的に意思決定 各企業の価値高めるねらい

幅広い事業を手がける東芝は、事業を3つに再編することで、会社の価値が、事業ごとの価値の合計より小さく評価されるいわゆる「コングロマリット・ディスカウント」も解消できるとみています。

東芝が抱える事業のうち、半導体などは短期間で市況が変わり、速やかに増産や投資を行います。

一方、水素電池や発電設備などのインフラ事業は、数十年単位で今後の動向を見越して投資や研究開発を行う必要があり、事業ごとにビジネスのサイクルが異なっていました。

こうした中で、それぞれの事業が相乗効果を生むのではなく、かえって非効率な経営になっているのではないかといった見方も市場にあったのです。

東芝は事業を3つに再編して各社の経営を独立させることで、より機動的に意思決定を行い、それぞれの企業の価値を高めるねらいで、株主がそれぞれの事業について企業価値を判断しやすくなるという効果もあるとみています。

東芝の綱川社長は会見で「事業を再編するのは、コングロマリット・ディスカウントの解消が目的ではないが、結果として解消される可能性があると感じている」と述べました。

一方、東芝は原子力や火力発電、防衛関連の事業を抱えているほか、量子暗号通信や人工知能など世界から注目される高い技術力もあります。

会社の規模が小さくなることで海外の企業からも買収されやすくなるおそれもあるとして、経済安全保障の面から今回の分割を懸念する声もあります。

企業の分割をめぐっては、アメリカの大手メーカー、GE=ゼネラル・エレクトリックも今月、経営の効率化を図るため、事業を航空機エンジンと医療機器、それに電力に再編し、会社を3つに分割する計画を発表しています。

東芝 綱川社長 分割は成長のチャンス

東芝の綱川智社長はオンラインで記者会見し、多岐にわたる事業を3つの会社に再編し、会社を分割することは成長のチャンスだと述べ、意義を強調しました。

綱川社長は、会社を分割する方針を決めたことについて「極めて大きな変化であるが、逆にそれぞれが分離、独立していく中で、東芝の経営理念を引き継ぎながら、それぞれの事業を成長させるチャンスになる。専門的な執行部が早く決断し、グローバルで競争に勝ち抜く体制にする」と述べました。

また、分割で会社の規模が小さくなることについては「会社を分けてもかなり規模は大きい。スピード経営するメリットのほうが大きい」と述べました。

さらに総合電機メーカーの事実上の解体ではないかと問われると「そもそもテレビも家電もパソコンもなくなり、総合電機メーカーという感覚はない。私にとっては解体ではなく未来に向けた進化だと考えている」と強調しました。

韓国 中国メーカー追い上げ家電事業不振に 原子力事業で巨額赤字

1875年創業の東芝は日本を代表する総合電機メーカーとして、カラーテレビや冷蔵庫、それにパソコンなど、数々の製品を世に送り出してきました。

また家電製品だけでなく、原子力発電や半導体など、事業は多岐にわたり、最盛期にはグループ全体の従業員が20万人を超えました。

しかし、2000年代に入り、韓国や中国のメーカーから追い上げを受け、家電などの事業は不振に陥ります。

業績回復のため歴代の社長が「チャレンジ」と称して売り上げや利益の目標を必ず達成するよう指示した結果、2015年には不正な会計処理が明らかになりました。

この問題で3人の社長経験者が辞任しました。

さらに東芝は、アメリカの原子力発電プラントのメーカー「ウェスチングハウス」を2006年に買収しましたが、福島第一原発の事故のあと原子力事業の採算も悪化します。

結局、ウェスチングハウスは2017年に巨額の損失を出して経営破綻し、東芝本体もこの年度の決算で日本の製造業で最大となる9600億円余りの最終赤字を計上しました。

東芝は経営立て直しのため、主力事業を売却せざるを得なくなり、冷蔵庫などの白物家電事業、テレビ事業、医療事業を他社に売却したほか、稼ぎ頭だった半導体メモリ事業も手放し、「総合電機メーカー」としての形を維持できなくなりました。

さらに東芝は2017年に、海外の投資ファンドなどから総額6000億円の出資を受けました。

その結果、財務状況は改善しましたが、「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」など、いわゆる「モノ言う株主」が大株主となったことで、現在の会社と株主が対立する状況が生まれました。

「モノ言う株主」との対立で混乱した状態に

東芝の経営は、いわゆる「モノ言う株主」として知られる投資ファンドとの対立で、混乱した状態が続いています。

それが表面化したのが、去年7月の株主総会でした。

筆頭株主の投資ファンド、「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」などが自ら選んだ社外取締役を増やすよう求める株主提案を行いました。

この提案は否決され、会社側が提案した通りの取締役が選任されましたが、当時の車谷暢昭社長の再任への賛成は57%余りにとどまるなど、株主が経営陣に対して厳しい目を向けていることが示されました。

そして、ことし4月には、東芝が投資ファンドの「CVCキャピタル・パートナーズ」などから買収の提案を受けていることが明らかになりました。

提案のねらいは、買収によって東芝の株式を非公開化し、外部からの影響を受けない体制にすることにあったとみられます。

しかし車谷社長がかつて、このファンドの日本法人のトップを務めていたことなどから、経営陣の間で提案の背景が不透明だと批判が高まり、その後、車谷氏は辞任を表明しました。

後任には車谷氏の前に社長だった綱川智会長が就任しましたが、株主との対立は続きます。

ことし6月の株主総会では、会社側が提案した永山治取締役会議長ら社外取締役2人の人事案が否決されました。

東芝としては、3つの会社に分割することで経営を効率化させ、株主価値の最大化を主張する投資ファンドの理解を得たい思惑があるものとみられます。

専門家「成長基盤 経営体制問われる きちんと説明責任を」

東芝が会社を3つに分割する方針を決めたことについて、明星大学の細川昌彦教授は、「東芝には半導体や原子力など、国の安全保障に関わる事業がある。分割されたあと、こうした事業の成長基盤や財務基盤がしっかりしてくるならポジティブに評価するべきだしマイナスになるなら逆の評価になる」と述べました

その上で細川教授は会社が分割され、規模が小さくなることで外国企業に買収されやすくなるリスクもあると指摘し、「安全保障上、重要な事業を抱える会社として成長基盤や経営体制をしっかりしていけるかが問われる。経営者自身もそういう視点できちんと説明責任を果たせなければだめだ。会社が大きくても小さくても重要性は変わらないので、同じように厳しい目で見られることを前提に考えなければいけない」と話していました。

松野官房長官「今後の動向を注視していきたい」

松野官房長官は午後の記者会見で「東芝は原子力や半導体など重要な技術を保有する企業であると認識しており、関係する事業を維持・発展していくことが重要だ。今後の動向を注視していきたい」と述べました。

小林経済安保相「さまざまな動きについては注視」

半導体や社会インフラなど多くの事業を抱える東芝が事業を3つに再編したうえで、会社を分割する方向で検討していることについて、小林経済安全保障大臣は12日の閣議後の記者会見で、経済安全保障上の懸念がないかという問いに対し「個別の企業の話なのでコメントは控える」としたうえで「経済安全保障を担当する大臣として、ご指摘いただいた動きを含め、世の中で起こっているさまざまな動きについては注視していく」と述べました。