インフルエンザワクチン接種 ことしはどうなる?

インフルエンザワクチン接種 ことしはどうなる?
「インフルエンザの予防接種、50人以上行列でびっくり」
「1か月先まで予約で埋まってる」

SNSにインフルエンザのワクチン接種がなかなか受けられないという投稿が相次いでいます。

ワクチンの供給の見通しは?
新型コロナの3回目のワクチン接種と時期はずらしたほうがいいの?

インフルエンザが流行する時期を前に、気になることを調べました。
(ネットワーク報道部 馬渕安代 金澤志江 鈴木彩里)

12月中旬まで予約埋まる病院も

東京・立川市の「さいわいこどもクリニック」は、10月1日からインフルエンザワクチンの接種予約を受け付け始めました。
12月中旬までに用意した予約枠は2400人分。

2週間ほどでいっぱになり、その後200人分を追加しましたが、それもあっという間に埋まってしまったということです。
平野静香院長
「ことしは例年に比べワクチンの供給についての情報がなかなか得られず、通常9月中旬から予約を開始しているのが半月遅れのスタートになりました。去年よりも出だしが遅いうえに供給量も少ないため、予約枠を2割から3割減らしています。接種を希望する人は去年に引き続き多いですが、ことしは少ない枠に希望者が集まっているような状況です」
今もインターネットや電話で申し込みの問い合わせが後を絶ちませんが、キャンセルにならないかぎり、断らざるをえないといいます。
平野静香院長
「ワクチンが入手できれば予約枠を増やしたいですが現時点で、うちにはそれほど入ってくる見通しは立っていません。インフルエンザの流行のピークは12月下旬から2月にかけてと言われているので、できれば12月中に受けてもらうのがベストですが、別の医療機関をあたってもらうしかなさそうです」

インフル 供給量は昨シーズンより少ない

ことしのワクチンの供給はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省によると今シーズンの供給量は成人の量に換算しておよそ5636万人分。
昨シーズンと比べて16%ほど少なくなるそうです。

今シーズンの供給が減った理由について、厚生労働省はワクチンの製造に時間がかかったことを挙げています。

インフルエンザのワクチンは、ウイルスを鶏の卵の中で培養して作りますが、ウイルスが増殖する量には幅があります。

昨シーズンは4種類のウイルスに対応するようになった平成27年以降でもっとも多い量となりましたが、ことしは少なかったということです。

インフル ワクチンは足りるの?

新型コロナの感染が拡大した昨シーズン、インフルエンザワクチンは、記録がある平成8年以降で過去最多となる6548万人分が接種に使われました。

今シーズンの供給量は、この昨シーズンの使用量を下回る計算です。

それでも足りるのでしょうか。
厚生労働省の担当者
「昨シーズンは新型コロナの影響で、『せめてインフルエンザにはかかりたくない』というニーズが高かった。今は感染が落ち着いているので、どこまでニーズがあるかはわからないが、供給量は平年並みなのである程度まかなえると考えています」

供給にも遅れ…徐々に増加の見通し

3回目の接種が来月、医療従事者から始まることになった新型コロナのワクチンも影響を及ぼしています。

新型コロナのワクチンを製造する過程で細菌などを除去するために使用するフィルターは、インフルエンザワクチンの製造にも使います。

このフィルターの確保が遅れたため、ワクチンの供給時期にも遅れが出ているのです。

例年はワクチンが供給される期間の前半に多くが配分されますが、ことしは12月中旬にかけて断続的に行われ、徐々に増えていく見通しだということです。

気になる流行の見通しは

昨シーズン、インフルエンザで医療機関を受診した人は推計で1万4000人。
前のシーズンのおよそ520分の1にまで減少しました。

新型コロナの感染対策がインフルエンザの感染にも効果があったとみられていますが、今は緊急事態宣言が解除され、海外からの入国など行動制限が徐々に緩和されつつある中で例年のような感染の流行は起こるのでしょうか。

公衆衛生学が専門の国際医療福祉大学の和田耕治教授に聞きました。
和田耕治教授
「去年は新型コロナとインフルエンザの同時の流行が懸念されましたが、海外でも国内でもインフルエンザはほとんど流行しませんでした。多くの人が免疫を得る機会がなかった状態で、ことしは多くの人が感染する可能性が十分に考えられます。

インフルエンザのウイルスは人の移動によって運ばれてくることで流行が起こります。移動制限が緩和されて冬休みに人々が移動したり交流したりする中で、ことしは流行があるかもしれないと考えておくことが重要です。これから寒くなってくる12月から2月がまずは警戒の時期になります」

流行続く可能性も

さらに海外の状況を踏まえると来年以降も流行が長く続く可能性もあるといいます。
和田耕治教授
「世界中が新型コロナとの闘いの中で感染対策をしてきましたが、WHOのデータを見るとインドや中国ではインフルエンザの感染者が出てきています。現在、海外で流行しているのは2つのA型とB型の合わせて3種類があり、このうちB型が主流になっています。日本ではA型のピークが2月にかけて起こった後にB型が3月、4月、5月までだらだらと流行が続くことが過去にありました。来年2月以降も流行が続くかもしれないということは考慮しておく必要があります」

新型コロナ3回目接種で注意すること

厚生労働省は新型コロナのワクチンについて使用実績の十分なデータが得られていないことなどからリスクを避けるためにも接種した前後2週間は、ほかのワクチン接種を控えてほしいと呼びかけています。

3回目の接種が医療従事者は来月(12月)から、高齢者は来年1月から始まる予定ですが、インフルエンザのワクチンは接種してもいいのでしょうか。
和田耕治教授
「特に高齢者はインフルエンザによる重症化を避けるためにも今のうちにワクチンを接種してほしいです。そのうえで2週間の間隔をあけて新型コロナのワクチン接種をするのがいいと思います。

また去年は新型コロナのワクチンがまだない中でインフルエンザの同時流行を避けるために特にワクチン接種を呼びかけましたが、成人の接種はそれほど増えなかったという反省があります。去年の動向を踏まえるとことしはワクチンが少ないと言われていますが足りないという状況にはならないと思います。SNSなどで予約が取れないといった声があがっていますが、複数の医療機関に連絡をして接種できないか聞いてみてください」