たかが「ねんざ」 されど「ねんざ」

たかが「ねんざ」 されど「ねんざ」
新型コロナの新規感染者数がことしに入って最も少ない水準で推移していることもあり、運動不足解消にウォーキングやジョギングを始めたという人もいるのではないでしょうか。なれない運動に思わず足が“グキッ”なんてこともあるでしょう。「軽い『ねんざ』、様子を見ておけばじきに治るだろう」と軽く考えていませんか?(災害気象センター記者 目見田健)

健康法を試していたら

「針で刺されるような痛みが続くんです。歩いていても足を引きずるような感じになって…」
去年6月、千葉県の75歳の女性を突然襲った痛み。きっかけは、テレビで紹介されていた健康法、かかとを上げ下げするという運動です。

コロナ禍で運動不足気味だったこともあり、試しにやってみたところ、右足に痛みがはしったといいます。
「軽いねんざでじきに治るだろうと我慢していました。でも数か月たっても全然よくなりませんでした」
ねんざは、関節に力が加わって関節を支えるじん帯が傷み、腫れや痛みといった症状がみられるものです。

女性が病院で診察を受けた結果「変形性足関節症」。足首のじん帯が傷んだ結果、軟骨も傷ついていたのです。

痛みがひかなくなり、生活に支障が出るようになって、手術を決断せざるをえませんでした。

たかが「ねんざ」されど「ねんざ」

女性の治療にあたった服部惣一医師は指摘します。
服部医師
「ねんざで病院なんて大げさだと思っている人が多いと思います。でも、たかが『ねんざ』されど『ねんざ』なんです」
日本整形外科学会によりますとねんざの多くは、足首を内側に捻って起こります。

多くの場合、ケガのあと1~2か月もすれば強い痛みもとれて日常生活に支障がなくなるため、ついつい無理をしてしまうこともよくあるそうです。

その結果、関節内部に2次的な損傷が進み、それが積み重なると、特に高齢者の場合は、関節の軟骨がすり減って関節が変形するなど、さらに強い痛みを引き起こす要因にもなると言います。
このため学会では、痛みの具合などから症状を自分で判断するのではなく、できるだけ医師の診断を受けることを推奨しています。

全国でも珍しい「ねんざ外来」

症状が深刻になる前に食い止めたい。

ケガの治療だけでなくリハビリにも力を入れ、スポーツ選手なども多く利用する千葉県鴨川市の亀田メディカルセンタースポーツ医学科に勤めている服部医師は、みずからが中心となって去年12月、全国でも珍しい「ねんざ外来」を設けました。
連日、20~30人の患者が訪れています。最近は、コロナ禍の運動不足を取り戻そうとしてか、散歩など軽い運動を始めてケガしたという患者も増えています。

以前きちんと治療せず、最近になって痛みが再発したと訴える人が多いと言います。
服部医師
「何年も違和感を持ったまま生活していた人や若いときにねんざを経験した人が年をとってから足首の痛みに悩まされるなど、多くの患者さんは、相当、悪化した状態にならないと病院に来ません」
服部医師は、中でもスポーツ選手など若い世代に、症状を悪化させてしまうケースが多くみられると指摘します。

自分だけ取り残される…

千葉県の中学3年の女子生徒は、ミュージカル女優になるのが夢で、バレエやダンスなどに取り組んできました。

つま先で立つ練習をするたびに足首の痛みに悩まされていたといいます。
女子生徒
「今思うと、小学4年生のときに階段から足を踏み外して足をひねったのが原因だと思います。それからねんざを繰り返すようになったので」
激しい運動をすると痛みを感じるようになったのは中学生になってから。

治療の必要性は感じていたものの、長期間練習から遠ざかることに不安があり、なかなか踏み切れなかったといいます。
女子生徒
「どんどん上達していくバレエ仲間から自分だけ取り残される気がした」

負担の小さい最新治療

抜本的な治療をためらっている人たちでも受けやすい、負担の小さい手術が最近、行われるようになってきています。

エコーを使って、傷んだじん帯の場所を外部から特定し、ピンポイントで行う手術です。

内部に器具を挿入するための5ミリほどの穴を開け、エコーを見ながら器具を操作して緩んだじん帯を縫合します。
従来の方法だと、手術は足首を7センチほど開く必要があり、日常生活に支障がなくなるまで半年かかるようなケースも多かったと言います。

この方法だと患者への負担も小さく、通常の生活に戻れるまでの時間も大幅に短縮されます。
この手術のことを聞いた女子生徒は、不安はあったものの、現状のままでは夢をかなえることが難しいと手術することを決断しました。

手術を受けたあとは、およそ3か月で練習に復帰できたということです。
女子生徒
「痛みを感じることなく、普通に練習ができることが喜びです!」

くれぐれも油断は禁物!

広範囲を切開するのではなく、エコーや内視鏡を使って患部を特定し、必要な部分だけを切除したり治療したりする方法は、最近ではがんの治療など、さまざまな医療現場で活用されています。

足首周辺の治療についても、服部医師が一緒に研究を重ねてきたアメリカの一部の大学などで活用され始めています。
服部医師によりますと、去年12月から日本でも導入し、今回紹介した2人も含めてこれまでおよそ20人に手術を行ってきましたが、いずれも術後は良好だということです。

復帰までの期間がその後の競技人生を左右しかねないスポーツ選手などにとっては、特に効果的な方法だとして、日本の学会でも発表するなど、今後広げていきたいと意気込んでいます。
服部医師
「最初の段階でしっかり治療するのが最も大切です。もし手術が必要になったとしても今は、体に負担の少ない方法もあるので、焦らず臨んでください」
これまで自粛していたスポーツを再開しようと考えている人も多いと思います。

ただ、ねんざをした場合は、くれぐれも侮ること無く慎重な対応をお願いします。
災害気象センター記者
目見田健