新型コロナ 外国人の入国再開 条件は?観光目的再開はどうなる

新型コロナウイルスの水際対策として原則停止していた外国人の新規入国が、8日からビジネス目的など一部に限って、条件付きで再開されました。

具体的な条件は?

また、観光目的の入国再開はどうなるのでしょうか。

ビジネス・留学・技能実習で入国再開

新規入国再開の対象です。
▽ビジネスなどを目的とする3か月以下の短期滞在
▽留学生や技能実習生などの長期滞在者
受け入れる企業や団体が事前に所管する省庁に申請し、審査を受ける必要があります。

また入国してからも待機できる宿泊施設などを最長で14日間確保するなど、責任を持って行動を管理することが義務づけられます。

政府は1日に入国を認める人数を引き続き日本人も含めて3500人までに制限する一方、日本での在留資格を持ちながら入国できていない外国人はおよそ37万人に上っているということです。このため早く在留資格を得た人から段階的に入国を認めることにしていますが、すぐには入国できない場合があるということです。

海外事業展開の企業から歓迎の声

海外で事業展開する企業からは取り引きや事業が進めやすくなると歓迎する声が聞かれました。

東京・台東区のソフトウエア開発会社では、今年度中にタイにある工場で新たな事業の実証を始めることを計画しています。

しかし、これまで出入国に伴う待機期間が長いため、従業員を現地に出張させることが難しかったといいます。

現地の企業などとはオンラインでの打ち合わせを進めていましたが、システムの設計の確認などが難しく、今月からはやむをえず現地に従業員を出張させざるをえない状態になっていました。

今後、往来がしやすくなるため、タイで働く従業員も日本に来てもらうなどし、取り引きや事業をより進めやすくなると期待しています。
新規事業の責任者で現在、タイに出張している田窪三紀夫さんはオンラインのインタビューで「システムのデモンストレーションも設計も実物を画面でみながらそれぞれ意見交換するのはオンラインより直接のほうがいいことが結構ある。規制緩和していただかないと、仕事自体が止まってしまう。来年もタイに来る必要があり対外的な活動をしなければいけない部分もあるので、規制緩和されるというのは非常にありがたい」と話しています。

飯田昌宏社長は「実際にシステムを作って指示を出しているリーダーたちも、コロナの前はタイに行っていたので、これからはもっと往来を増やしていきたい。行き来できることで意思疎通がより図れることがいちばん大きい」と話しています。

留学生受け入れ再開で準備急ぐ

新型コロナウイルスの水際対策の緩和に伴い、8日から留学生の受け入れも一定の条件のもとで再開されたことから、都内の大学では歓迎の声とともに職員らが受け入れ準備を急いでいます。

毎年2000人規模で新規の留学生を受け入れてきた東京・千代田区の上智大学では、感染拡大によりことし1月に政府が受け入れを停止してから、キャンパス内の留学生は大幅に減少しています。

8日は職員たちが早速、受け入れの申請に関わる資料の確認や、留学生への連絡などの準備を進めていました。

感染拡大の影響で訪日できずにいる留学生にはオンラインで授業を行ってきましたが、大学に寄せられたメールには「時差があり午前2時から5時に授業を受けていて精神的につらい」とか「留学プログラムを諦める決断をした」といった声もあったということです。
オンラインで授業を受けてきた留学生のひとり、シンガポールの女子学生は、「去年の春に日本を訪れる予定でしたが、コロナの影響で行けなくなりました。オンラインでしか友達に会ったことがないので早く会ってみたいです」と話していました。

都内のキャンパスに通う日本人の4年生の女子学生は「日常会話で生かせるよう語学力を高めてきたので留学生と話せる機会が増えてほしいですし、日本のキャンパスで学んでもらえることで、お互いにとっていい学びの機会になることを期待しています」と話していました。

上智大学の曄道佳明学長は「コロナ禍の前は90か国以上から留学生が集まっていたので、受け入れ再開となるこの日を待ちわびていました。多様性の中で議論できることは大学の本質なので、引き続きキャンパス全体の感染対策の強化に努めながら、安心して学べる環境を作っていきたい」と話していました。

文部科学省によりますと日本で学ぶ外国人留学生は、コロナ禍の前は30万人を超えていましたが、感染拡大で来日できず、待機している留学生は15万人に上るということで、申請を受け、順次審査が進められるということです。

実習生受け入れ企業も期待

技能実習生を受け入れている千葉県の建設会社は新型コロナの感染拡大以降、人手不足に直面してきたということで新たな実習生の入国に期待しています。

千葉県野田市の建設会社では、9年前の2012年からフィリピンから技能実習生を受け入れています。
去年4月以降も男性4人を受け入れる予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大でビザが取得できないなど入国が許可されない状況が続いていました。

この間、会社では人材派遣会社を通じて臨時で従業員を雇うなどしてやりくりをしてきましたが人手が足りず、作業が思うように進められない状態が続いてきました。

現在、働いている技能実習生5人のうち2人は来月に帰国する予定で、今後、入国許可を待つ4人が早期に入国できるのを待ち望んでいるということです。

興和工業の室星恵子取締役は「とにかく人手不足に陥っていました。入国待機をしている実習生も彼らの生活と人生があって、いつまでも待機してもらっているわけにはいかないと思っていたので、ここで入国可能となってありがたいです。ただ、またいつ変わるかもしれないという心配や怖さはいまもあります」と話しています。

自宅待機は原則3日間に 団体観光再開は年内めどに対応検討

政府は新型コロナウイルスの水際対策の一環として、日本への入国者に対し、自宅などでの14日間の待機を求めてきましたが、先月からは日本国内で承認されているワクチンを接種していることなどを条件に待機期間を10日間に短縮しています。

これについて政府は感染者数が減少傾向にあることなどを踏まえビジネス目的の日本人の入国者を対象に、検査で陰性が確認され、企業が行動を管理することなどを条件に、8日から、自宅などでの待機期間を原則3日間に短縮します。

一方、政府は団体観光の入国再開について年内をめどに行動管理の実効性などに関する検証を行ったうえで、対応を検討していくことにしています。

ホテルでは待機者向けの宿泊プラン

東京のホテルでは期間が短くなったことで入国後の待機期間をホテルで過ごしてもらう宿泊プランを始めました。

このプランでは外出をしなくてすむよう4泊分・1日3食の部屋での食事が含まれています。

国に報告が必要となるPCR検査のキットも配布されます。

ホテルの地下には検査を行うクリニックが併設されていて、宿泊客が検体を持ち込むと結果がスマホのアプリで分かるようになっています。

プランの価格は食事とPCR検査を含めて5万7000円から7万円余りだということで、このホテルでは感染拡大によって減少した宿泊客を呼び込みたい考えです。

新宿プリンスホテルの波形大介宿泊支配人は「ホテルの中で完結できるのがメリットだ。利用が増えるきっかけになれば」と話していました。

専門家「国益考えても重要」「感染再拡大で入国再制限も」

水際対策に詳しい国際医療福祉大学の和田耕治教授はNHKの取材に対して「世界各国ではワクチン接種などを契機に人々が移動できるようにかじを切っている。国内の感染状況が落ち着いている時期に入国制限の緩和を行うことは国益を考えても重要だ」と話しています。

また入国の際の待機期間を短縮する手続きやその管理態勢について「入国者の行動を出す側の企業や学校、それを確認する側の国の省庁がどうやれば効果的に対応できるかが課題になる」と指摘したうえで「入国した外国人が体調不良を訴えたり発症したりした場合に医療機関で受診できるよう地域と連携して準備しておくことが必要だ」しています。

さらにヨーロッパやロシアなど一部の国で感染が再拡大していることを踏まえ「世界で感染者が増えた場合には国内で感染が広まるリスクを高めないように再び入国を制限することも必要だ」と指摘しています。

観光目的の入国「再開にはある程度管理した旅行も」

一方、今回は認められなかった観光目的での入国については「海外から入国後に発症したり重症化して入院しなければいけない場合に医療費をどうするかなど受け入れにはさまざまな課題がありさらなる体制づくりが求められる。再開のためには自由な旅行ではなくある程度管理した旅行も方策として必要だ。そうした対策を整えればそう遠くない時期に観光目的の入国の検討も進めていけるのではないか」としています。