ドイツ海軍艦艇 “約20年ぶり”の寄港 中国念頭に防衛協力

インド太平洋地域に派遣されているドイツ海軍のフリゲート艦が5日、東京に寄港しました。海洋進出の動きを強める中国を念頭に、安全保障面での日本との協力関係を推進していくねらいがあります。

ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」は、ことし8月にドイツを出航し太平洋などで海上自衛隊との共同訓練を重ね、5日午後、東京 江東区の「東京国際クルーズターミナル」に寄港しました。
ドイツ海軍によりますと「バイエルン」は今月12日まで東京にとどまり、その後、日本やアメリカなど5か国から20隻の艦船が参加する共同訓練に加わる計画だということです。
ドイツ連邦軍のツォルン総監は「インド太平洋地域はいまや戦略的に最も重要な地域の一つだ。この地域において海上輸送ルートが自由で開かれた状態に維持することに貢献できる」と述べて、日本との連携強化の意義を強調しました。

ドイツは去年、インド太平洋地域での外交や安全保障などの指針をまとめ、中国の海洋進出の動きに懸念が強まるなか、日本などとの関係を強化する方針を打ち出しています。
ドイツ海軍の艦艇が日本に寄港するのはおよそ20年ぶりで、安全保障面での日本との協力関係を推進していくとともに、この地域での存在感を示すねらいがあります。

自衛隊・護衛艦と共同訓練実施

「バイエルン」は東京に寄港するのに先立ち、4日から5日にかけて海上自衛隊の護衛艦「さみだれ」と関東の南の海上で共同訓練を行いました。
海上自衛隊は、「自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて連携を強化した」としています。
「バイエルン」と海上自衛隊の護衛艦との訓練は、ことし8月にアフリカ、ソマリア沖のアデン湾で、翌9月にインド洋東方で行ったのに続いて3回目です。

岸防衛相「大いに歓迎 防衛協力さらに進めていく」

岸防衛大臣はターミナルを訪れて、ドイツ軍の制服組トップの連邦軍総監らと視察しました。
このあと、岸大臣は記者団に対し「今回の寄港はインド太平洋地域の平和と安定に積極的に貢献するというドイツの強い決意を国際社会に広く示すもので、大いに歓迎する」と述べました。
そして「ドイツは基本的価値を共有するパートナーだ。両国の防衛協力は自由で開かれたインド太平洋の維持・強化の礎で、寄港を足がかりとして、さらなる発展に力を尽くしていきたい」と述べ両国の防衛協力をさらに進めていく考えを示しました。

ドイツ 中国偏重のアジア政策から転換図る

ドイツは、メルケル首相が就任以来、12回にわたって中国を訪問するなど、中国を中心に据えたアジア外交を展開してきました。
しかし、中国の海洋進出の動きや、新疆ウイグル自治区や香港などでの人権状況、それに経済的に過度に中国に依存していることに対して国内外から懸念が強まっていました。
このためドイツ政府は、中国に偏重していたアジア政策からの転換を図り、その外交姿勢を多角化させる方針です。
去年9月には、インド太平洋地域での外交や経済、それに安全保障の指針をまとめ、この地域について政治的、経済的な重要性が増していると位置づけ「ルールに基づく秩序」や「多国間主義」を掲げて、日本やオーストラリアなどとの関係強化を目指しています。
今回の「バイエルン」の派遣はその一環です。
海外領土をもたず、軍事面では慎重な姿勢を示してきたドイツがこの海域に艦艇を派遣するのは異例です。
「バイエルン」は東京に寄港したあと、韓国を経て、12月には中国が軍事拠点化を進める南シナ海も通過する予定です。

一方で、ドイツにとって中国は最大の貿易相手国で決定的な対立は避けたい考えで、「バイエルン」は台湾海峡を通過しない予定であるほか、当初は、上海に寄港することを中国側に打診するなど、中国に対する強硬姿勢を示すアメリカとは一線を画していました。
しかし、上海に寄港する計画については、ことし9月、ドイツ外務省の報道官が「中国側が寄港を望まないと決定し、われわれも承知した」と述べ、中国側に寄港を拒否されたと明らかにしました。
「バイエルン」が南シナ海を通過する計画などに中国側が反発した可能性もあるとみられています。

中国 日本への寄港をけん制

ドイツのフリゲート艦の日本への寄港について、中国外務省の汪文斌報道官は5日の記者会見で「われわれは関連する報道を注視している。関係国の防衛分野を含む協力は地域の国々の間の相互信頼の増進や地域の平和と安定、発展の促進に資するべきであり、その逆であってはならない」と述べ、けん制しました。

“象徴的な寄港” 専門家「中道左派政権発足で連携 積極的に」

「バイエルン」の日本への寄港について、政策研究大学院大学の岩間陽子教授は「日本とドイツの間の防衛協力は日本とイギリス、日本とフランスの間と比べて2、3歩遅れていたが、ここのところ少しずつ追いかけてきている状況で、この時期に『バイエルン』が東京に来るのは象徴的だ」と指摘しています。

また、岩間教授は「メルケル外交は中国やロシアとの関係を重視していた。完全に中国と対立してもかまわないというような側にくみするというのはメルケル政権の間はないだろうと思ってきた」と述べ、ドイツ側が当初「バイエルン」の中国への寄港を打診していたことについて、中国との経済的な結びつきを重視してきたメルケル首相の意向があったとの見方を示しました。

そのうえで「日本など、価値を共有するパートナーとの連携を掲げつつ対立は嫌って、むしろ対話を促進するために存在したいという思いを抱えている」とドイツの立場を分析しています。

さらに岩間教授は、ドイツでは12月にも中道左派の社会民主党のショルツ氏がメルケル首相に代わる新たな首相となって次の政権が発足するとの見方がでていることから「ルールに基づく秩序や民主主義的な価値観をもつ国の連携などに関して、今までよりも積極的になってくるだろう」と指摘しています。