あなたの年収、教えてください~大阪編

“株価は上がっているのになぜ「年収」は上がらないのだろうか”
そんな長年の疑問をきっかけに始めた街ゆく人たちに「年収」について伺う取材。
地方の実情も取材しようと、今回は関西の中心、大阪の街で聞きました。

(おはよう日本 記者 岡本潤/大阪放送局 記者 清水大夢)

岸田政権が力を入れる経済の立て直し。
「令和版所得倍増計画」などという発言もありました。

民間企業で働く人の去年1年間の平均給与は433万円余り。
この30年間で各国の所得は大幅に上昇したのに対し、日本はほぼ横ばいで推移しています。

そこで、私たちは先月から「年収」をテーマに取材を続けています。

まずは東京 新橋で30人に「あなたの年収を教えてください」とインタビューさせていただき、その声を「おはよう日本」で放送したところ、多くの方々から意見をいただきました。

地方からの声「転職先少ない」「一人暮らしできない」

「自分も年収は全く上がらない」とか「日本だけどうして成長しない」といった声のなかに、私たちは地方に住む人たちからの声が多いことに気づきました。

その一部を紹介します。

(40代・岐阜県)
「地方では転職先も少なく、よほどの特技や知識、資格がないかぎり正規雇用がない」

(30代・宮崎県)
「地元の若い人たちは『給与が安くて困る』『給料が安すぎて一人暮らしができない』と言っている」

(20代・長野県)
「車がないと生きていけない地域なのにガソリン等の維持費があがっている。しかし、収入は増えない」

(40代・大阪府)
「地方の実態経済はもっと悪いように見える」
確かに日本経済の実態は、地方の実情もしっかり取材しなかったから分かるはずがありません。

そこで、私たちはまず西日本最大の都市、大阪で30人に「年収」を聞いてみることにしました。
【向かって左が私(岡本) 右が清水記者】

大阪「キタ」と「ミナミ」で聞いてみました

ロケをしたのは衆議院選挙の直後。
大阪放送局の清水記者とともに取材をしました。

入局3年目と若手の彼となら、大阪の人たちの本音が聞けるのではないかと期待しました。

相談した結果、大阪の「キタ(梅田)」と「ミナミ(なんば)」で取材することに。

同じ大阪の中でもいろんな職種や年代の方に話を伺うためでした。

年収300万円台と400万円台の人たちは

さすがは大阪。

多くの方がぶしつけな質問にも愛想よく答えてくださいました。
本当にありがとうございました!

お答えいただいた30人のなかで、多かったのは300万円台と400万円台の人たちです。
(20代・接客業/300万円台)
「全然昇給しません。貯金ができないので、老後が心配」

(40代・教育関係/300万円台)
「そんなにお金を使う機会がないので、困ってはいないですね。仕事で達成感も味わえているので特に不満はないです」

(20代・看護師/400万円台)
「夜勤もあり、業務量が多くて毎日時間に追われています。労働時間と収入が見合っていないので、賃金を上げてほしいです」

同じような年収でも、人により捉え方が違うのは東京と同じでした。

「東京の方が年収は高い」けど…

さらに、話を聞いていくと、東京と大阪の違いを指摘する声もありました。

(40代・製造業/700万円台)
「役職についているので他の社員よりは年収は高いですが、同じ製造業でも、東京の方が年収は高いですね」

(20代・エンジニア/800万円台)
「われわれの業界では、大阪は東京に比べて『2~3年遅れている』とも言われます。単価も大阪の方が上がりづらいですね。ただ家賃とか、物価は安いと思います」

あくまで私たちが話が聞けたなかですが、自営業で高い年収の方がいる一方、年収が平均とされる433万円を下回る人たちが東京と比べて少なくないと感じました。

ただし、東京にはないものが大阪にはあると主張する人たちもいました。

それが「人情」や「多様な価値観」です。

「お金がすべてだとは思わない」

(40代・船舶関係/700万円台)
「経済は東京の方が勢いがありますが、大阪の方が人情味があると思います」

(60代・自営業/600万円台)
「倉庫業を営んでいますが、物の売れ行きが悪くて大変です。ただ、企業同士でも苦しい時は助け合おうという雰囲気があって励ましあったり、情報共有したりしています」

(40代・無職/100万円未満)
「20代とかなら仕事が選べるかもしれませんが、40代なので選べない。できる仕事ならなんでもします。入院したので、ゼロからのスタートですが、お金がすべてだと思っていません。そう思っていると『この仕事はお給料が安いからだめな仕事だ』となる。そうなると、大切なもの見失ってしまうと思います」

“コロナで厳しい” 大阪でもさまざまな分野で影響

一方、東京と同様に多く聞かれたのが、コロナによる影響についてです。
大阪でもさまざまな分野に影響が及んでいました。

(30代・臨床心理士/500万円台)
「学校などでカウンセリングをしていますが、コロナで休校になった期間は収入がなくなりました。家賃や携帯代を抑えるようにしています」

(20代・アルバイト/100万円台)
「ホテルのバーで働いています。以前も同じような仕事でしたがコロナの影響で失業しました。今は食費を切り詰めてなんとか生活しています」

(50代・飲食業/400万円台)
「休業を余儀なくされて、年収は半分くらいになり、生活も変わって、自由に使えるお金がなくなりました。緊急事態宣言は解除されましたが、以前のような状態にはまだ戻っていません。今は辛抱の時です。少しずつお客さんが戻って来てくれているのは楽しいです」

中小企業が地域を支える大阪

古くから商業の街として栄えた大阪。

企業の数は全国2位ですが(平成28年経済センサス―活動調査による)
その特徴は中小企業が多いところです。

アベノミクス以降、株価は上がり、大企業の中には業績が上がっているところもありますが、その恩恵が少ない中小企業が地域を支えている大阪は、東京と比べて経済的に厳しい状況が続いています。

また、賃金について調べると大阪の平均給与は34万1000円、これは東京の39万6300円と比べると5万円以上低くなっています。

専門家「打撃はインバウンドがなくなったこと」

関西経済が専門の日本総合研究所の若林厚仁さんにも話を聞いてみました。

「年収が500万円以下の割合が高いのは、給料の高い業種が比較的少ないという産業構造の問題が大きいのではないかと思います。大阪というとものづくりのイメージが大きいですが、ここ何年も大阪は8500億円規模のインバウンドが地域経済をけん引していましたが、コロナ禍でほぼゼロになりました。宿泊業や飲食業、旅客運送業などがいずれも厳しい状況となっていて、年収にも影響を与えていると考えられます」

環境を変えようとチャレンジする姿勢も

今回、大阪の地で取材しながら、ふとあるケースが多いことに気付きました。

今の環境を変えようと、自営業やフリーランスに転向したという人たちが少なくないということです。
(20代・自営業/400万円台)
「一般企業で2年ほど働いていましたが、そのときは全然昇給しなかったので、個人で働くようになりました。今は年収が営業件数で変わってくるので安心感はなくなりましたが、楽しいし、気持ちよく働けています」

(50代・フリーランス/300万円台)
「通勤時間もかかるし、年収もあがらない。余裕もなく自殺まで考えたこともありました。年収は下がりましたが、今は気持ちが楽になりました」

(20代・自営業(理学療法士から転職)/1000万円以上)
「最初は勇気が必要でしたが、踏み出すと意外に、『こんなものか』という感じです。今はやりがいもあるし、生活も安定しているし心がすごく落ち着いた感じがします」

もちろん、置かれている立場や状況は人それぞれです。
新たな道に進める人たちばかりではないと思います。

ただ、こうして一歩を踏み出す人たちの姿に大阪の「たくましさ」を見たような気がしました。

30人に聞いた結果は

30人に聞いた結果はこうなりました。
そして、東京での結果と並べたものがこちら。
東京の時と同様、もちろん統計学的に正確なものではありませんが、東京よりも大阪の方が、幅広い年収の層に分布する結果となりました。

東京では500万円台が最も多かったですが、大阪では400万円台、300万円台の人数が多くなりました。

切り札は「大阪万博」専門家

では、今後、どのようなことがポイントになるのでしょうか。

若林さんは、賃上げの見通しが厳しいなか、地域産業を育てる切り札と指摘したのが4年後に開催される『大阪万博』です。

ただし、若林さんは万博を一過性の集客イベントとして終わらせては意味がないとくぎをさしました。

「大阪万博を一過性にするのではなく、万博をてこに産業振興を進めないといけません。もともと大阪の強みだった製造業の高い技術力をいかし次世代技術などの強い産業に育てていくべきです」

今回大阪で30人に話を聞いて、やはり同じ働く人たちであっても、その地域の実情によって「年収」そのものの違いはもとより、その捉え方なども違うことを実感しました。

皆さんの意見を以下の投稿フォームまでお寄せください。
https://forms.nhk.or.jp/q/OLPBS8UH

私たちは引き続き取材したいと思います。